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48.劇の名は『魔法少女ハニーマスタード』

 再開します。帰省中は案の定、余り進められませんでした……

 順番的にはハニーマスタードサイドであるべきなんですけど、ま、中間的なネタと言うことで。


 短めなので次回は1月10日更新予定です。


※2019/8/5 スマホフレンドリーに修正しました。

「あ、あのっ、皆さんにお願いがあるんですが!」


 放課後。授業が終わって帰り支度をしていると、マリアが私たちに向かって声を掛けてきた。

 マリアがお願いするのは珍しい。私は小首をかしげて問い返す。


「お願い?」

「はい、今朝のリズさんとの話、覚えてます?」

「確か……チャリティショーがどうとか」

「はい、年末に教会主催でチャリティショーをやる予定なんです! 私の方では、劇をやる予定なんですが……」

「手伝いが欲しいのかな?」


 と、シャイラさんが質問すると、マリアは意外な答えを返してきた。


「――いえ、舞台に出て欲しいんです!」

「――え?」


 皆、驚きの余り目を見開いて固まってしまう。


「これが台本です!」


 マリアは鞄から一冊のノートを取り出した。そのタイトルを見た私は、思わず呻くような声を出してしまった。


「ま、魔法少女、ハニーマスタード……」

「はい! 勧善懲悪、正義の味方はまさしく至高神様の活動に一致しますから!」


 私はマリアからノートを受け取ると、それを開いて中身を追ってみた。

 劇、と言うよりは、観客参加のショーのようなつくりになっているようだ。

 悪の魔女が手下二人を連れて、観客をいじめていると、ハニーマスタードが現れて魔女と交戦、撃退すると言う話だった。


「こないだ、ハロウィンの衣装作るときに、アニーさんの家に行ったじゃ無いですか。その時に読ませて頂いた本も参考にしています!」


 私から受け取った台本に目を通しながら、シャイラさんがマリアに質問する。


「配役はどうなるのかな?」

「はい、主役のハニーマスタードは……」


 いやあ、本人が演るとバレそうで困るんだけど、どうしようかなぁ?

 とか、内心にやにやして考えていたんだけど。


 マリアは違う方に向かってお願いしていた。


「クリス、お願いします!」


 マリアに頭を下げられたクリスは、自身を指さして驚きの声を上げた。


「うち!?」

「だって、ほら、髪の雰囲気、色こそ違うけど、そっくりじゃないですか! 衣装だけ整えれば十分そっくりになりますよ!」


 あー……まあ、クリスの髪型の色違いっぽくしてるからね……うん、クリスが演ったら本物よりかわいくなるよ……

 内心、がっくりしながら同意する。


 その間もマリアとクリスのやりとりは続いていた。


「魔法少女役って、うち、魔法使われへんで?」

「大丈夫です! 特殊効果でなんとかしますから!」


 気を取り直して、マリアに質問する。


「そ、それで、わたしは?」

「アニーさんには、敵役の、悪の魔女をやって欲しいんです! 手下が二人もつくんですよ!」

「あ、悪の魔女……」

「駄目ですか……?」


 邪心も何にも無い、キラキラした目で見詰められると、流石に断りづらい。

 まあ、別にヒーロー役でも悪役でもどっちでもいいんだけどさ。


「いいよ、やるよ。悪役居ないと正義の味方も輝かないもんね。でも、手下はどうするの?」

「近所の方にお願いしています!あと、衣装とか特殊効果とかたくさん裏方が必要なので、それも近所の方にお願いしています」


 読み終えた台本をクリスに渡しながら、シャイラさんがマリアに尋ねた。


「そうなると、私はどうなるのかな?」

「シャイラさんは、劇の司会をお願いします! 進行を指揮する、大事な役目です!」

「ああ、分かった。演技は正直自信が無いが、そういう役目ならなんとかなるだろう」


 私たちはマリアが人数分用意していた台本を受け取り、練習の時までに読み込んでおくと言う事で話は落ち着いたのだった。


「ところで、マリアは何かするの?」

「わたしは脚本、演出、監督とかを行います! 困ったことや提案があったら、ぜひ相談してください!」


 表には出ない役回りだけど、責任はマリアが一番重そうな気がする。

 まあ、教会の人間としては、それも勤め、なのかな?



              ◇   ◇   ◇



 数日後。

 台本を読み終えた私たちは、最初の顔合わせのため、教会前の広場に集合した。

 学校を終えて4人で訪れると、そこには既に十数人の人達が集まっていた。力仕事も多いので、男の人の方が多そうだ。


「こんにちは! よろしくお願いします!」


 声を掛けながら近づいていくと、その中にいた神官さんがこちらを振り向いた。


「おかえり、マリア。君たちが今回協力してくれると言うお友達の皆さんだね?」

「「はい、よろしくお願いします!」」

「いえ、こちらこそ、ご協力いただき感謝します」


 私たちが挨拶すると、神官さんもそれに応えてくれ、そして他の人達に私たちを紹介してくれた。


「こちらが、今回の劇でハニーマスタード役と、悪の魔女ドローレス役、そして司会役を担ってくれる皆さんです」


 神官さんの紹介に応えて、私たちも自己紹介する。


「ドローレス役のアニーです! 劇は初めてですが、がんばります! よろしくお願いします!」

「ハニーマスタード役のクリスや。魔法使われへんけど、まあ、できるだけの事はやるで」

「司会役のシャイラだ。よろしくお願いする」


 神官さんは二人の男性を連れて私に話しかけてきた。


「アニーさん、は、君ですね。こちらがあなたの手下役をされる二人です」

「はい、よろしくお願いしま……」


 私は挨拶しかけて、彼らに見覚えがある事に気がつき、思わず絶句してしまった。


「あなたがドローレス役のアニーさんね。よろしく。あたしは魔女の手下、ボヤッジ役のスレイよ」

「オレも魔女の手下、タイタン役のフランシスだ。よろしくな!」


 そう、どう見ても盗賊ギルドの二人組だった。下っ端のチンピラではなくて、ナイフ使いの細身の男と、大柄な男の二人組。

 スラッシュ……スレイ?は、地下水道で逢ったときにはお腹に穴が開いていたけど、元通り治ったみたいね。


「ごめんなさいね、びっくりした? あたしたち、ちょっとガラ悪く見えるかも知れないけど、カタギさんにはちょっかいかけないから気にしないで、ね?」

「あ……はい」


 私が絶句したのが、自分たちを知っていたからではなく、ガラの悪さに驚いたのだと思ってくれたようだ。

 まあ、知ってたらおかしいもんね。こないだの街での騒動を見ていた、と言う言い訳はできるかもしれないけど。


「ともあれ、今後ともよろしくね」

「よろしくお願いします!」


 スレイとは普通に握手できたけど、フランシスとは……


「魔女様、よろしく頼むぞ! わっはっは」

「あ痛たたた」

「お、おう、これはすまん!」


 力任せに握手してブンブン振り回されてしまった。この人、見た目に違わず筋肉バカかも……?

 次回予告。


 劇の通し稽古が始まった。ハニーマスタードの再現としては、若干甘い所もあったんだけど、意外な人間によってビシビシ修正されていく。これならわたしが口出ししなくても大丈夫かな?


 次回「意外なところにファン?が居た」お楽しみに!

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