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31.へえ、あの人が件の君なんだ

 本編も進めなければならないのですが、現在、地図の修正を並行して進めています。

 国名も変えるのですが、極力、固有名詞は使わないようにしていたため、検索してみると今まで一回しか出ていませんでした(笑)


※2019/1/17 微調整しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

「すまない、一ついいだろうか」


 リズさんが注文した、紅茶とお菓子の組み合わせが気になったと見えるシャイラさんが口火を切った。


「これも、悪くはないのだが、このケーキならば、アッサムのミルクティーが合うと思うのだが」

「あら、あなた。この、わたくしの選択に異論がございますの?」


 当たり前だけど、自分の選択にケチをつけられたリズさんは、口をとがらせて抗議する。


「異論と言うわけではないが、せっかくのお菓子を活かすアドバイスかな」

「シャイラさん、紅茶の国(バーラト)の人だけあって、紅茶の事に関しては間違いないよ」


 私もアシストしておこう。前回、本当に美味しい思いさせてもらったからね。


「いいですわ。あなたの挑戦、受けて差し上げてよ。もし、あなたの言うことが正しくなかったら、どうしていただこうかしら?」

「そうだな、紅茶分の代金を持たせて頂こうか」


 シャイラさんの申し出に、リズさんは少し考えてから提案した。


「お金の問題ではございませんわ。――そうですわね、一週間ほどわたくしに奉公をして頂こうかしら?」

「……これでも学生の身でね。放課後だけでも構わないか?」


 と、肩をすくめて答える。


「結構ですわ。それでは、これで賭けは成立ですわね」


 リズさん、呼び鈴で執事さんを呼び出してミルクティーを追加オーダーした。

 シャイラさんの紅茶の国(バーラト)の人としての誇りを賭けた戦いが今、いきなり始まってしまった。

 ――あれ、シャイラさんが負けたら一週間、リズさんに奉公することになっているけど、シャイラさんが勝ったらどうなるんだろう?



              ◇   ◇   ◇



 しばらくして、追加オーダーされた紅茶とミルクポットが運び込まれ、私たちの目の前のカップに注がれた。


 まず一口、ミルクティーを味わってから、お菓子を一切れいただき、さらにもう一度ミルクティーを口に含んでみる。


「うん」

「なるほど」

「あー、確かに。せやな」

「こっちの方がおいしいです!」


 無言でうなずくシャイラさんと、それぞれの表現で同意するみんな。さて、リズさんは……


「……」


 私たちと同様に、ミルクティーとお菓子を試した後、無言で自分のカップに入った紅茶を睨んでる。


「わ……」


 わ?


「わたくしの、負け、ですわ」


 おー、負けを認めた。


「あなたのおっしゃる通り、こちらの組み合わせの方が、お菓子と紅茶でお互いを高め合うような味わいが出てきますわ」

「確かに、ダージリンのファーストフラッシュはこの店でも最高級に近い茶葉ではあるが、お菓子との組み合わせはマリアージュが大切だからね」

「適材適所、あるいは組み合わせの妙、と言う事ですわね」


 リズさん、軽く頷きながら答える。


「理解が早いね」

「そういえば、わたくしが負けた場合の条件を決めておりませんでしたわ」

「ふむ……私が負けたら、君に奉公する話になっていたが、私が勝ったときの話はしていなかったね。まあ私は、何かの利益を得ようとして勝負を行ったわけではないからね。気にしなくて結構」

「そうは参りませんわ!それでは賭になりません。負けたからには、それなりの事をさせていただかないと!」


 言葉を荒げたリズさんに対して、シャイラさんは顎に手をやって少し考えてから、話し始めた。


「そうだね……それでは、一つ、説教をさせて貰おう」

「説教、ですって?」


 リズさんは意外な話に驚いた顔をした。


「どうやら君は将来、人を使う仕事に就くように見受けられる」

「その通りですわ。わたくしは将来、我がデイビス商会、ひいてはこのフライブルクを運営する事になっておりますの」

「しかし、残念ながら、今の君は人を使うほどの器量に欠けている」

「なッ……どういうことですの!?」


 いきなりの批判にリズさんは腰を浮かして声を荒げた。


「まあ、罰ゲームだと思って怒らず聞いて欲しい」

「――分かりましたわ」


 リズさんは仕方なく腰を下ろして聞く体勢に入る。私たちはとりあえず固唾をのんで見守るしかないなぁ。


「人を使うには器量、人望と言ってもいいかな。それが重要だ。人心を得る事ができなければ、いかに立場やお金などで縛っても、正しく人を使う事はできない」

「当然ですわ」

「君は頭ではわかっているのかもしれないが、行動がついてきていない事に気がついていないかな?」

「なんですって!?」

「衛兵を呼ぶのも銀貨を払って命令する。礼がしたいといいつつ、用事があると言っている私たちを無理矢理連れ込む。彼らや私たち自身にどう思われるかというのも問題であるが、それを見た大勢の人間はどう思うかな?」


 リズさんは怒りのためか顔を真っ赤に染めた。

 また少し腰を浮かしたけれども、思い直して椅子に深く座り直し、しばらくの間、爪を噛みながら考え込む。


「そう……ですわね。おっしゃるとおりですわ」


 そして、大きく息をついた後、先ほどとはまた違う口調で言い直した。


「わたくしの、負け、ですわ」

「わかってもらえたのであれば嬉しい。――すまないね、少し柄でもない事を言ってしまった」

「いえ、このままでは裸の王様になってしまっていたところですわ」


 リズさんはまたしばらくうつむいて考え込んでいたけど、意を決したように顔を上げてシャイラさんの方を見た。


「あ、あの……あなたの事、お姉様と呼ばせていただいてよろしいですか?」

「は……?」


 いきなりの展開に、シャイラさんは目を丸くして硬直してる。


「「へ……?」」


 もちろん、私たちも。

 リズさんは真っ赤になって組んだ手をくねくねしながら言葉を続ける。


「あ、あの、わたくしにそういった意見をしてくださる方って、これまで周りにはいなくて、それで、その……」


 しばらく硬直していたシャイラさん、慌てて腰を浮かしながらリズさんに話しかける。


「す、すまない、そろそろバイトの時間なんだ。急で悪いがこれで失礼させていただくよ!」


 あ、逃げた。


「ああっ、お姉さま!」


 ばたばたと立ち去るシャイラさん。閉じられた扉に向かって、ぽそりとリズさんがつぶやいた


「まだ、件の君もいらっしゃっていないのに……」


 しぶしぶ席に戻って座り直すリズさん。私たちは声のかけようがなくて、呆然としている。



              ◇   ◇   ◇



「さて……」


 リズさん、一息ついてから、私たちの方に向き直って話しかけてきた。さっきのくねくねした感じは全く無くて、もう完全に普通の感じに戻ってしまっている。


「確か皆様、同じ学校とおっしゃっておられましたわね?」

「う、うん、そうだけど?」

「お姉様の事、教えて頂けますか?」

「うーん、本人が教えていない事を、わたしが勝手に教えるわけにはいかないかなぁ。ねえ?」


 と皆に同意を求めると、クリスもマリアも、うんうんと頷く。


「勿論、無料(タダ)とは申しませんわよ」

「あのなぁ、自分、それがあかんとさっき言われたんと違う?うちらは金に惹かれて友達を売ったりはせえへんで?」

(カネ)でもコネでも使える物は使うのがわたくしのモットーですから。ま、あなたたちがお金になびかないと言うのであれば、それで結構です。お名前と学校が分かっているのですから、あとはどうとでもなりますわ」


 うーん、ホント、なんて言うか、怖い事を平気で言う人だなぁ。


「それでは、普通のお話でしたら結構ですわね?冒険者学校に興味があるのは本当ですし、せっかくお姉様がお勧めくださったミルクティーが冷めてしまいますわ」


 と言う訳で、改めて学校の話などを再開した。まあ、リズさん、要所要所でさりげなくシャイラさんの事を聞き出そうとしてたけど。



              ◇   ◇   ◇



 しばらく経った頃、広間の方が少し騒がしくなってきた。


「どうも(くだん)(きみ)が見えられたようですわね。お姉様を知った今では、特に気にはなりませんが……一応、今日は件の君が目当てでしたからね、少し見て参りますわ」


 そそくさと席を立つリズさん。私たちもついでにリズさんについて行ってみる。お行儀悪いけど、興味あるし。


 こっそり扉から広間をのぞき見ると、そこには背の高い紅茶の国(バーラト)美人の女の子が、なぜか執事服を着てお客さんのお相手をしていた。女の子達はみんなその娘の方を見ている。


「へえ、あの人が(くだん)(きみ)なんだ……って」

「「シャイラさんじゃん!」」「お姉様!?」

 次回予告。


 ひょんな事で出会った女の子。一回交わった道は、再び離れてもう出会う事は無いと考えていた。

 世の中、カネとコネで割となんとかなってしまう事を、私は知ってしまうのだった。


 次回「お待たせいたしました、お姉様!」お楽しみに!


 リズさんはマルハナさんの「魔法少女(略)エイプルと明日への架け橋」(https://ncode.syosetu.com/n9866ev/)と言う小説を読んで、こちらにはお嬢様キャラが居ない事に気づいて急遽ご出馬願った娘です。モブ予定からのえらい出世です。

 そもそものプロットにいなかったので、果たして今後どのように暴れてくれるのか、作者自身想像がついていません。

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