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26.先生、再試験をお願いします!

※2019/1/16 微調整しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

 授業が始まってから一週間が過ぎようとしていた。

 女の子は私たちだけの4人しかいないし、否応なしにどんどん仲良くなってきている。あ、クラス全体でも20人しかいないから、男の子達とも別にそんなに仲が悪いわけではないんだけけど。

 どうしても4人でつるむ事が多いから、なかなか男子と話する事はないかなぁ。


 いや、別に男の子と話すのが嫌いって訳じゃないよ?村では普通に同年代の子と遊んだりしてたし。逆に、同年代の女の子がアレックス以外居なかったんだけどさ。


 ちなみに私は、クラスの女子で二番目に話しやすいらしい。自分で言うのも何だけど、垢抜けてないからね……


 なお、一番は、マリア。外見もちょっと幼めに見えるし、神官のせいか、基本、愛想良く対応しているから、つい話しかけに言ってしまうらしい。


 クリスは、やっぱり綺麗すぎる外見で少し引かれているようだ。まあ本来、性格はマリア以上に話しやすい筈だから、時間の問題ですぐにランキング上位になるとは思う。あ、でも、つまらない話にはものすごく厳しかったかな。

 この間も、頑張って話しかけている男子に向かって、最初はそれなりに対応していたんだけど、次第に機嫌が悪くなって……


「――で、この話、オチはあるんか?」

「え……オチって?」

「このアホたれ、オチがない話を延々聞かせるんとちゃうわ!」


 こんな感じで叱り飛ばしていた。


 あと、シャイラさんは、綺麗だし高貴っぽいし凜としてるし、剣術は強いし、数少ない勇気を持った男子達は挑みかかっては惨敗しているみたい。剣でも雑談でも。



              ◇   ◇   ◇



 さて、私たちの男の子事情はともかく。剣術の教習も何回か経て、私自身、剣を持った相手に対する自信が少しついてきたような気がする。

 抜き身の剣を使った練習も、シャイラさんの協力を得て、ここ数日安定して行えている。少し早いかも知れないけど、一度、剣術教官のクレメンス先生に挑戦してみたいと言う気持ちが強くなってきた。

 と言うわけで私は、授業終了後にクレメンス先生を呼び止めたのだった。


「クレメンス先生!」

「なにかな、アニーくん?」

「放課後に、剣術試験の再試験をお願いしたいのですが、いかがでしょうか?」


 いきなりの申し出に、先生は驚いた顔をした。


「こいつぁ驚いた。もうそんなに自信がついてきたのか」

「はい、いい線行けそうな気がしてきています」


 私は親指を立てて(サムズアップで)答える。


「そうか、それは楽しみだな。再試験という事は、形式は試験の時と一緒でいいんだな?」

「はい、それでお願いします!」


 先生と私たち4人で訓練場に集合する。魔力吸収(マナドレイン)のバングルは、既にこっそり外してある。


「先生、今回はわたしも全力でやります。授業とは少し動きが違うかも知れませんが、気にしないでください」

「ほう、なんだか思わせぶりだな」


 先生はこの間と同じ、刃を潰した長剣を抜いた。しゃらんと言う音と共に、剣がきらりときらめく。


(大丈夫、大丈夫……)


 少し心臓がどきんとしたけど、私は両手で頬をぱちんと叩いて気合いを入れる。

 小声で魔法を唱えて準備をする。


「"マナよ、姿を変えてこの身を護る盾となれ"――防御(シールド)


 いつもと同じ、右半身に構えて右手を下に、左手を肩にまで上げる構え。


「おいおい、何も持たなくて大丈夫か?」

「素手でもきちんと守れますから、遠慮無く来ていただいて結構ですよ」

「ほう?では……これでどうだ」


 軽く長剣を振ってきた。左手で軽く(さば)いておく。


「む……堅い。魔法、か?それで授業の時にはバックラーを使ってたんだな」

「はい、その通りです」

「普通の試験なら、なるべく生徒に攻撃させるんだが……狙うは一発のカウンターのみ、だろ?」

「お察しの通りです」


 喋りながらも、先生は左右に軽く攻撃を散らしてくる。

 このくらいなら、私でもなんとか捌ける。逆に言えば、この攻撃はあくまで牽制でしかないため、飛び込める程の隙が見当たらない。

 それができるとすれば、皆の試験の時に見せた、突き。


「さあ、来い!」


 その突きが来た!

 私は左手で突きのコースを最小限ずらして当たらないようにし、右手は拳を握って一気に箭疾歩(せんしっぽ)で飛び込んでいく。


「やッ!」

「これは――ッ」


 先生、防御が間に合わず、膝のカウンターも届かないと見るや、右拳に対して頭突きを繰り出してきた。タイミングをずらす事と、頭の固さで拳に対するカウンターを狙っているんだろうけど……これはマズイ!

 私はとっさに手を開き、体のバランスも崩してわざと力の流れを散らす。額に当たった手のひらが、ぱしーんといい音を立てるが、それ以外には何も起こらない。

 ――いや、正確には、起こさないで済んだ。私は勢い余って床に転がり込む。


「なんだ今のは……速ぇなぁ! しかし、これではダメージが入らんだろう。試験としては合格だが」


 私は床からゆっくりと起き上がり、下を向いて体についた土埃を両手ではたく。まだ息が乱れているので、少し話しづらい――ようやく息を整えた私は、顔を上げて先生の方を見た。


「先生……死ぬ気ですか?」

「どういうことだ?」


 先生はぎょっとした顔をしてこちらを見た。まあ、そうだよね。急にこんな事言われたら。


「先生、この武術、詳しかったですよね?」

「まあ、この辺で使われている、一通りの武術の知識はあるな」


 やっぱりこの先生、武術オタクなのね。


「と言う事は、発勁(はっけい)に関してもご存じですよね?」

「おう、鎧を着ている相手に対して、鎧を通して中身にダメージを与える技、だったよな」

「その通りです。堅い壁の内側にダメージを与える衝撃波を発する技です。つまり、うっかり先生の脳みそ、ぐちゃぐちゃにしちゃう寸前だったんですから、こう言う防御法は止めてください!」

「げ……」

「隙間があるヘルメットとか被っていれば、まだ衝撃波が逃げるから、脳震盪(しんとう)くらいで済んだかも知れませんけど、ダイレクトだとぐっちゃぐちゃですよ、ぐっちゃぐちゃ」

「お、おう、すまんかった……それはさておき、トラウマとやらはもう大丈夫のようだな」


 そう言われて、それどころではなかった事に気がつく。


「そう……ですね、大丈夫だったようです」

「ま、これで、オレもお前さんの実力の一端を知る事ができて良かったよ。武術でこれだけできるんだから、本当に剣をやる気はないのか?」

「私は魔術師ですから。それに、腕力が無いので、武器や盾はちょっと難しいです」


 これは謙遜(けんそん)ではなくて、本当にそう。レイピア持った魔法剣士とか、すっごく憧れるんだけどね。昔、領主館に飾ってあったレイピアを持ってみた事があったけど、やっぱりすぐに腕が動かなくなってしまった。


「いつでも気が変わったら言ってくれ。そうだ、最後の突進技は、普段の授業では使わないんだな?」

「はい、そのつもりです」


 トラウマ克服のため必要だったから魔力吸収(マナドレイン)のバングルを外してたけど、それが無い限りは学校で外すつもりはないかな。


「まあ、あれは他の生徒では受け切れんな。ともあれ、おめでとう。入学試験の時にこれができていたら首席で合格だったな」

「入学試験の成績はともかく、これできちんと終えられなかった試験を終えることができたような気がします。お時間いただき、ありがとうございました!」


 私は再試験のつきあってくれた先生に向かって、勢いよくお辞儀をした。先生は笑いながらそれに応えてくれる。


「いや、ま、オレも気になっていたからな。せっかくの才能がこんな事で挫折してしまうと勿体(もったい)なくてな。これからは遠慮無くしごいていくぞ」

「はい、これからもよろしくお願いします! ――あ、でも、魔術師志望って事をお忘れ無く」

「ははは、そうだな。肝に銘じておくよ。でもお前さん相手だと、少々無茶やっても付いてきそうでなぁ……」

「だから、ダメですって! あんまし無茶言われたら、魔法飛ばしますよ、魔法」


 私は次に、これまでつきあってくれた皆の方を振り向いてお辞儀をする。


「シャイラさんも、みんなもありがとうございました!」

「ああ、ようやく問題がクリアできたな」

「おめでとうございます!アニーさんの努力の成果ですね!」

「うちら全員、先生にはしてやられたけど、リベンジ第一号やな。うちらも頑張らないかんわ」


 私たちは互いにハイタッチして、成功を喜び合った。気分は任務完了(ミッションコンプリート)!かな?

 さあ、これで心置きなく魔法少女としての活動に乗り出すことができそうだ!

 皆が居るのであればともかく、独りで剣を相手にすると身動き取れなくなったり暴発してたりしてたら、とても正義の味方は出来ないからね。

 乗り越えるには早すぎるかも知れませんが、足かせとしてきつすぎたため、早々に克服させてしまいました……なにせ、学校活動は兎も角、剣を持った人間と戦えないと、魔法少女活動に支障が出すぎるので。


 次回予告。


 学校が始まって一週間が過ぎた。週末に領主館に帰った私は、つかの間の休日をアレックスと過ごす。そんな中、ふとしたきっかけで彼女の思いを知るのだった。


 次回「ただいま、アレックス!」お楽しみに!

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