24.魔法の授業、始まりました!
すみません、なんだか説明回みたいになってしまいました。次回は二日後投稿を予定しています。
※2018/9/13 魔法の授業を始めたい!から改題しました。
※2018/12/30 次回予告を追加しました。
※2019/1/16 微調整しました。
※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。
次の日からいよいよ、冒険者学校での本格的な授業が始まった。
学科授業は……まあ、普通だよね。初等教育の延長って感じ。
ちょっと面白いのは、語学が充実している事。でも、広く浅くで、余り深くはやらなさそうかな?
昼休みの後の実技としては、まず魔術の授業から始まった。
「魔術教官のロジャーです。試験では皆さんの魔術試験を担当していました。まず最初に魔法の種類について説明しましょう」
――と言うわけで、最初の魔術の授業は魔法の種類についての説明から始まった。この機会を活かして、簡単にまとめてみようかな。
まず、術式魔法。これは術者が呪文を詠唱し、マナの力を魔法陣という術式に通して変換する事によって効果を発揮する魔法。
基本、エネルギーの変換なので、物を動かしたり、温度を上げたり下げたりする事はできるけど、何かモノを作り出すことはできない。怪我も切れた部分をくっつけたりとかは出来るけど、体力は回復しない。
図書館に、エネルギーと質量は等価であるみたいな事が書かれていた本があったけど、計算してみたら、コップ一杯の水を作り出すのに必要なエネルギーがあれば、街一個吹っ飛ばせるみたいな結果になってしまった。ほんとかな?
次に神聖魔法。これは神様の力を借りて発現する奇跡。レベルの上下はあるとしても、術者を媒介として神様を降臨させていると言う表現もできる。なので、術式魔法には逆立ちしてもできない、水の生成などもあっさり出来てしまう。当たり前だけど、神様の声を聞いた事がないと、使えない。
ちなみに、20年前の大戦では、邪神を降臨させた魔王だか魔神だかに対抗するため、勇者の一行の誰かがその身に神様を降臨させて、最終的に勝利を収めたらしい。たぶん、人智を越えた怪獣大決戦みたいな感じだったんだろうね。
精霊魔法は大きく分けると二つ。一つは精霊の力を借りて発現する魔法。こないだシャイラさんが使った明かりは、光っている所に存在する光の精霊の力を借りていた。あとは精霊と契約をした後に、彼らを呼び出す召喚魔法。いずれも、精霊さんとお話できないと無理な話かな。これは言葉を覚えればいい、と言う話ではなくて、精霊の存在を感じる事が大事だそうだ。
付与魔法は魔法と名前はついているけど、マナは使わない。錬金術に近いかな?物事の属性だか特性やらを再構築して、いろいろな効果を発揮させるようにできるらしい。私が今使っている暴食の鞄も、その産物。
最後に呪歌は、歌に乗せて効果を発揮する魔法。まず歌が上手でないと始まらない。正直マイナーで、先生もよく知らないらしい。勿論、私もよくは知らない。
こんな感じで、だいたい魔法と名前が付くもののうち、先天的な何かがなくてもできるのは術式魔法くらい、かな。
おっと、頭の中でまとめている間に、先生の説明も終わって次の段階に進んでいたみたい。
「今日ですが、術式魔法の経験者の人は自習をしていただいても結構です。最初は、未経験者に触って貰う事を中心として教えるので、経験者にはつまらないでしょう。もちろん、一緒にやってみてもいいですよ?」
そこで先生が取り出したのは教科書。「オークでもわかる、術式魔法の使い方」だって。どこかで見たような……って、家の図書室にあったな。これ。初心者用には悪くない本だと思う。
基本的に、マナさえあって――誰でも多かれ少なかれ絶対持っているけど――術式に間違いがなければ、初歩の魔法は成立する。もっとも、その術式のイメージが難しいんだと思う。
私の場合は、余りに小さい時から触れすぎてて、余計な知識が入る前に覚えちゃったから、特に苦労した記憶はないけど。
◇ ◇ ◇
未経験者のみんなは、いろいろ唸りながら照明を発動させようと四苦八苦していた。
うーん、少し手助けしてみようかな。
まず、マリアは……聖書、読んでるな。
「マリアはやらないの?」
「はい、せっかく神様の力を使わせて頂いているのに、更に魔法を覚えるのはよくないと思います!」
「あー、確かに、そういう考え方もあるか」
シャイラさんは、もともと精霊魔法が使えるから、マナを使った経験はあるはず。
「シャイラさんはどんな感じです?」
「本に書いたとおりにやってみてはいるが、なかなか難しいね」
「まず、この本に描いてある術式が、ここにあるぞーって感じで想像してそこにマナを通すイメージ、かな。詠唱は、この本に書いてある通りでいいけど、自分自身の内面に言い聞かせる感じで」
「なるほど、その通りにやってみよう」
と、目をつぶって集中して詠唱を始める。
「"マナよ、光となりて我が前を照らせ"……」
お、うすらぼんやりと魔法陣が見えてきた……けど、ダメだ。不発に終わってしまった。
「いきなり魔法陣が見えるなんて、いい感じだと思うよ。今のは失敗したけど、方向性は間違っていないから、あとは微調整して行けば発動すると思う」
「む、そうか。ありがとう。やってみるとしよう」
次は、クリスは……あらら、机に突っ伏してる。
「あかん~頭痛ぉなってきた……」
「もしかして、体の芯が重くて、めまいがする感じ?」
「せやせや、そんな感じ」
「魔法、何回か失敗した?」
私の質問に、クリスは頭を上げて、指折り数え始めた。
「うーん、まあ、何回かやってはみたけどな、特に何も起きんかったな」
「それは……逆に、マナをつぎ込む所までは上手くいって、マナを使い果たしたのかも。あとは少し休憩しておいた方がいいよ」
「うーい。分かったわあ」
◇ ◇ ◇
しばらくやっていると、成功する人も何人か出てきたみたい。初めて発動すると、やっぱり喜びの声を上げるよね。
「何人か、初めて発動できている人がいるようですね。最初は、照明一回でマナを使い果たしてしまうと思います。でも、繰り返し練習する事によって、次第に効率のよい唱え方が身について来ます。魔法を覚えたいという方は、マナが回復次第、自宅などでもどんどん試してみてください」
ま、練習方法としては正しい方法だと思う。数をこなしてナンボだし、最初はどのみち、すぐにマナを使い果たしてしまうから、マナが回復したらすぐに練習する方が、無駄がなくていい。
そういえば、この街には結局、どれくらい魔術師はいるんだろうか?先生なら知っているかな。
巡回している先生に聞いてみた。
「先生、質問いいでしょうか?」
「はい、なんでしょう、アニーくん?」
「冒険者ギルドの方には、どのくらい魔術師がいるんでしょうか?」
「うーん……正直、多くはないね。まともな魔法が使えて、探究心が強い人間は魔術師ギルドに行くし、お金を儲けたい人や有名になりたい人は冒険者ギルドで警備や傭兵稼業をするより、冒険者になった方が儲けられるし有名になれる。なので、残っているのはまともな魔法が使えないか、探究心がないか、お金儲けや名声に興味が無い人間たち、かな。私も含めて」
「な、なるほど、そうですか……」
自虐的に答えられても反応が難しいんだけど。と言うか、冒険者ギルドの魔術師を思いっきりディスってるし。
「あ、あと、この学校の生徒では、普通はどのくらいのレベルから始まって、どのくらいになるものなのでしょう?」
「ふーむ、そうだな。入学時に既に経験している生徒なら、照明や魔法の矢などが最初から使える子はいるかな。学校に入ってから習い始めた子の場合は、もちろん照明から始まって、卒業時に防御ができるくらいが普通かな。10年に1人くらいは、爆裂弾まで行く子もいる事はいるが。アニーくんは既に魔法は唱えられるようだが、卒業までの目標はあるのかな?」
質問に答えた後、今度は逆に先生に質問された。
「うーん、そうですね……やっぱり、二つ三つは新しい魔法を覚えたいですね!」
うん、嘘はついてない。
「きみは周りの人間に教えるのも上手いし、できると思うよ」
「ありがとうございます」
「きみ自身の努力も怠らないように。そうだ、あと、もう一つだけいいかな?」
先生は教壇の方に戻りながら、途中で思い出したかのように質問を重ねてきた。
「はい、なんでしょう?」
「先日の剣術試験の時、何か魔法を使おうとしていなかったかな?」
「うーん、その後すぐに倒れちゃったので、よく覚えてないですぅ」
「そうか。すまない、多分私の気のせいだろう」
と、先生はあっさり誤魔化されたのであった。ちょろい。
次回予告。
剣術の授業が始まった。先生に約束を果たすことを求められた私は、皆の前で套路を披露する。そして先生は私に、ロングソードを持った男子生徒と対戦する事を命じたのだった。
次回「魔術師志望だって分かってます?」お楽しみに!