22.みんなはバイト、やってるの?
※2018/9/13 お昼ご飯をみんなで食べたい!から改題しました。
※2018/12/30 次回予告を追加しました。
※2019/1/16 微調整しました。
※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。
昼休みとなり、みんなざわざわし始める。とりあえず、チームごとで改めて自己紹介している人が多いかな?
私たち4人組も机をくっつけて、お弁当を並べ始める。
話の口火を切ったのはクリスさんだ。
「そういえば自分ら、下宿やったやんな、どこになったんや?」
「はい、この近所のマリーさんと言う所でお世話になっています。シャイラさんと一緒の下宿なんですよ」
「うむ、その通り。朝晩と弁当がつく、非常にいい下宿を紹介してくれた」
「ほー、一つ屋根の下で、言う奴やな。ところでアニさん、もう同級生なんやし敬語はおかしいやろ。タメ口でええで?」
「そうです! わたしもマリアで構いません!」
そうだよね。どうしても、田舎者としては、都会の人に敬語を使いがちで……
「うん、わかった。クリスにマリア」
「私も呼び捨てで構わないのだが……」
「ごめんなさい、なんか、シャイラさんは、シャイラさんって感じなんですよね……まあ、追々頑張ります」
あ、シャイラさん、ちょっと寂しそう。
「と、ところで、アルバイトしようかどうしようかな、って考えているんだけど、みんなは何かやってるの?」
とりあえず話題を変えてみた。正直、今のお小遣い体制だと無理にバイトしなくても良さそうではあるけど……
「うちはここに入る前から運び屋やな。商店やら工房やらの間で、書類や手紙のような物を運ぶ仕事や。土地勘があって脚が早けりゃ子供でもできるんやけど、まあ、最低限の信用は要るわな」
「なるほど……土地勘はまだ駄目かも……」
屋根の上、走っちゃダメだよね?
「わたしは教会なので、そこのお手伝いと……あ、孤児院のみんなで内職する事もあるかな。ごめんなさい、余りお金になる仕事はないかも」
信者さん専用……というよりは、お金を目当てにした労働ではない気がする。
「シャイラさんは何かバイトしてるんですか?」
ふと聞くとシャイラさん、何故かちょっと困った顔をした。
「む、私か……確かに、国を出てからは収入がなかったから、最近アルバイトと言う物を始めたのは間違いない」
「えー、どんなのを始めたんですか?」
「飲食店の給仕、だ」
「えー、どこでです?」
「見られると恥ずかしいからな。まだ秘密だ」
顔を赤くしながら断られた。ちぇっ。
「ウェイトレスって、わたしにもできそうです?」
「私が勤めている店だと専門知識が必要だから、済まないがちょっと難しいかもしれないな」
「せ、専門知識って……?」
「秘密だ。もう少し落ち着いたら、皆を招待したいと思うから、少しの間待っていてくれ」
唇に人差し指を当てながら、ウィンクしてこんな事を言うんだから、この人は……
「アニさんはまあ、鈍くさくはないやろから、他の店ならできるんと違う?あー、でもそそっかしいのはちょっとあかんかもしれんけど」
「お盆をすっ飛ばしてお客さんに飲み物をぶっ掛けている姿が目に浮かびます!」
……一日二日くらいしか付き合いがないのに、見極められている気がする。
そんなこんなで昼休みの時間は楽しく過ぎていった。ああ、同じ年頃の女の子たちで雑談できる贅沢感……村には同年代の女の子、居なかったからなぁ。
◇ ◇ ◇
予鈴と本鈴が鳴り響き、先生が戻ってきた。
「さて諸君、これで昼休みは終わりだ。午後は、まず教科書と運動着の配布を行う。運動着はさすがに支給品だが、教科書は貸与品だ。代々使う物だから、なるべく汚さないように」
いろいろ配られた後、カリキュラムの説明が行われた。
午前は基本的に学科授業が行われる。数学理科社会音楽図画と言った教科教育の他、共通語、紅茶の国語 エルフ語、ドワーフ語などの各種語学、あとは勿論、軍事学も学科に含まれている。
午後は教練。体育、剣術、魔法等々が行われるそうだ。
「とまあ、こんな感じだ。明日から本格的な授業が始まる。教室に時間割を張ってあるから、それに従った教科書を持ってくる事。運動着を着たまま来ても構わんが……まあ、その辺は個人の価値観でな。なにか質問はあるか?」
シャイラさんが手を挙げた。
「普段、ジャマダハルを使っているのですが、この学校にはジャマダハルの木剣か練習用剣はありますか?先日の試験の時には見つからなかったもので」
「ふむ……ジャマダハルか。分かった。手配しておこう」
「ありがとうございます」
あれ、シャイラさん、確か普段は曲刀使ってたよね?ジャマダハルってどんなのだっけ。
「他にないか?……よし。それでは本日は解散とする。明日、昼二つの鐘までに、この教室に来るように!」
おや、もう今日は終わりなのか。帰り支度をしようとしたら――
「――アニー・フェイ!」
「は、はい!?」
いきなり先生に名前を呼ばれた。
「すまんが、少し残ってくれるか。試験の時の事で、ちょっと話を聞いておきたい」
ああ、そういえば先生とは、あの時以来だもんね。
「先生、私たちも同席してよろしいでしょうか?」
「ああ、合格発表の時にお前らも何かやってたそうだな。構わんぞ」
シャイラさんを筆頭に、みんなつきあってくれるようだ。ホント、友達ってありがたいものだよね。
次回予告。
先生にトラウマについて説明した後、私はシャイラさんにトラウマ克服のための練習をお願いする。新しい工夫も交えながら、私はラスボスである先生に挑むための準備を進めていったのだった。
次回「おかげさまで、自信がついてきました!」お楽しみに!