21.わたしの名前はアニー・フェイです!
一週間お待たせしました。本日6時、10時、14時、19時に4話を集中投下予定です。
その後はストックが尽きるまで、当面隔日での投下を考えています。
※2018/9/13 クラスで自己紹介したい!から改題しました。
※2018/12/30 次回予告を追加しました。
※2019/1/16 微調整しました。
※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。
ついに入学式の朝を迎えた。
昼一つの鐘で起き、近所の公園で套路を済ませ、下宿で朝食をいただく。
「「おはようございます」」
「お二人とも、今日からいよいよ学校ですね」
「はい、今日が入学式と聞いています」
朝食を食べ終えて部屋に戻ろうとしたところで、大家のマリーさんが弁当の包みを持ってきてくれた。
「シャイラさん、アニーさん、お弁当を用意しましたから、持って行ってくださいね~」
「ありがとうございます!」
確か、昼二つの鐘までに学校に行くんだったよね……
持って行く物は特にないと聞いていたから、いつもの魔術師の帽子と外套、シャツにキルトスカートで、特に他には何も持って行かない。おっと、お弁当は持って行くよ。
それほど遠くない道のりを二人で歩いて行くと、冒険者学校の建物が見えてきた。学内で一番広い場所、中庭に集合するようだ。
新入生の人たちは……あ、いたいた。先に来ていたマリアさんが手を振ってくれてる。
「こんにちは~、久しぶりです!」
「マリアさん、これからよろしくお願いしますね!」
「やあ、マリアさん。お久しぶり」
だいたい集まってきているかな?おおよそ一学年20人くらいで、三学年あるから、生徒としては60人くらいが中庭に集合している事になるのかな。
「――クリスさん、来てないよね?」
「来てないな」「来てないです!」
そろそろ入学式が始まろうかと言う時、玄関から猛ダッシュで走ってくる人影が見えた。
「すんませーん! クリスティン、寝過ごしてまいましたー!」
ああ、プラチナブロンドの綺麗な髪を振り乱して、全力疾走で走ってきてる。ほんと、もったいないというか何というか……はあ。
やれやれ、なんとか間に合ったみたい。新入生も全員揃ったとの事で、校長先生の訓示が始まった。校長先生は元専業軍人さんだったようで、50代くらいのベテラン感を漂わせている男性だ。
「新入生の諸君、フライブルク冒険者学校へよく来てくれた。専業軍人となってこの街を護る任務に就きたい者、傭兵としてこの街の名前を背負いながら戦いたい者、冒険者として独立したい者、様々な目的があると思うが、この学校が諸君らの将来の活躍の礎となれる事を切に願う」
卒業後の進路としては、校長先生の話の通り、専業軍人になるか、傭兵になるか、冒険者になるか、の三択。もちろん、家業がある人は、それを継ぐという選択肢もあるけど、そもそもそんな選択肢がある人は、ここに来たりはしない訳で。
「また、校内では基礎訓練コースの生徒と遭遇する事もあるだろう。将来的に彼らを指揮する事になるかもしれんが、学内での立場は同等である事を忘れるな。在校生の諸君は、新入生の諸君の模範となるべく行動するように。以上だ」
そう、フライブルク市民は15歳~18歳の間に、半年間この学校で基礎訓練を受け、残り半年間は警備任務などの兵役に就かなければならない。
彼らは半年単位で入れ替わるし、カリキュラムも全く違うため、教室で顔を合わせる事は全くないのだけれど、廊下などですれ違う事はあるらしい。
その後は、学年別に担任の紹介があった。ちなみに、一年担任は剣術の試験官の人で、名前はクレメンスさんと言うらしい。
入学式の後、クラス別……と言っても1学年1クラスなので、要するに学年別に教室に誘導されて行った。今後一年間はこの部屋で勉強する事になるのかな。
◇ ◇ ◇
「これから一年間、お前たちの担任となったクレメンスだ。元冒険者で戦士をやっていたが、膝に矢を受けてしまってな、この仕事に落ち着いたと言うわけだ」
クレメンス先生は、腕を組んで少し考えてから、唐突に端の一人を指さした。
「さて……そうだな。お前たちは基本的に初対面だと思う。まずは順番に自己紹介をやっていこうか。端のお前からだ」
どうやら自己紹介タイムの始まりのようだ。
男の子達はだいたい、市内出身で戦士志望、みたいな感じ。他は魔術師が二人と……あと変わり種では、ハーフエルフっぽい男の子がいたかな。エルフの里ではなくて、人間界育ちで、魔法は使えないようだったけど。
おっと、私の番がきた。
「アニー・フェイといいます。シュタインベルグ村から来ました。術式魔法が使えます。剣とかはさっぱりですが、武術を習っています。試験ではお騒がせしてすみませんでした。ちょっと抜き身の剣を目の前で見るとダメっぽいですが、すぐ治すつもりです! よろしくお願いします」
無難な自己紹介により、盛り上がるわけでもなく、白けられるいうわけでもなく、程々の拍手で迎えられた。
他のみんなも穏当に自己紹介を済ませた。いきなりやらかす子は居なかったな。
「ようし、だいたいこれで一通りかな。では最初に、チーム編成を行う。本来は魔法使い系はバラして配置したいんだが……男子が戦士14、魔術師2,女子が戦士2、神官戦士1、魔術師1なんだよな。学生の間は基本、男女混合チームは避けたいから、申し訳ないが、戦士のみのチームが出来てしまう」
先生はメモを取り出して読み上げ始めた。
「では、今から読み上げるから、各自チームで集まってくれ。チームAは、シャイラ、クリスティン、マリア、アニー。チームBは……」
と言う訳で、以下の編成となった。男子達?ま、まだ名前覚えてない……
チームA:シャイラ、クリス、マリア、アニー
チームB:戦士3、魔術師1
チームC:戦士3、魔術師1
チームD:戦士4
チームE:戦士4
「ま、模擬戦のルールとお前らの今の練度では、正直魔法使いが居る方は非常に不利だ。しかし、将来的には基本、逆転するからな、魔術師がいるから負けた、とか間違っても思うなよ」
そうだよね。初心者魔術師だとろくな攻撃呪文も覚えていないし、マナ配分が悪いからすぐに枯渇してしまう。
「さて、午前中で学内の説明を行う。まず、この教室では学科教育を行う。また、原則として朝はこの教室に昼二つの鐘までに集合する事」
◇ ◇ ◇
そして教室を出て、教室を幾つか過ぎたところにある、小さな部屋の前で止まった。
「ここが女子更衣室だ。ロッカーがあるから、女子の諸君は運動着への着替えの時に使ってくれ。ここの管理は事務のアニャさんだから、詳しくは彼女に聞いてくれ。オレも中は分からん。あ、男子の着替えは教室だぞ」
皆でぞろぞろと廊下を移動する。次はこの間試験を行った練習場のようだ。
「ここが練習場だ。ま、実技試験で来たから知っているな? 放課後等に使いたければ、事務室の誰かに断ってからなら構わないぞ」
次はその隣の部屋へ。ここは初めて来たけど見た感じ、室内射撃場のようだ。更に、なんだか壁と扉がすごく頑丈に作られているように見える。
「ここが魔術練習場だ。魔法を練習する時はここを使って構わない。勿論、事務室に断ってからだぞ。少々攻撃力が高めの魔法を撃っても壊れないようには作っているが、壊さないようにな。ま、そこまで強力な魔法を使える奴はいないだろ?」
ま、ここに居るけど在学中は秘密のつもりです。さて、今度は中庭へ。
「ここが中庭だ。休憩や昼食に使っていいぞ。誰も居なければ剣術の練習とかに使っても構わないが、誰かいる時は止めてくれよ。当たり前だが飛び道具は禁止な。さて、次は外に出るぞ」
隊列を組んだまま学校を出て、更に外に出る城門を目指す。城門から外に出たところで、かなり広いグラウンドが姿を見せた。
「ここが屋外演習場だ。戦術訓練、射撃訓練などに使われる。基礎訓練コースの連中はここでやっている事が多いな。あとは運動会にも使われるぞ」
一通り回った後、また教室に戻ってきた。戻ってきたとたんに、昼休みを告げる鐘が校内に鳴り響いた。
「む、もうこんな時間か。それでは、昼休みに入ってくれ。一つ目の鐘が鳴ったら予鈴だから二つ目の鐘が鳴る前に戻ってくる事。いいな」
さあ、お昼休みの始まりだ。
次回予告。
学校での昼休み。机を並べてお弁当を食べ始める私たち4人。そこで私は、皆にどんなアルバイトをやっているのか聞いてみる事にした。十分なお小遣いは貰っているけど、私でもできる事があれば足しになるかも知れないし、ね。
次回「みんなはバイト、やってるの?」お楽しみに!