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17.先生、ごきげんよう!

 あと1話で第一章は終わる筈ですが、いよいよストックが尽きました……本来、第一章が終わってから掲載する予定だった、キャラ紹介や第一章あらすじを先に挿入するかもしれません。


※2018/9/13 習い事をハシゴしたい!から改題しました。

※2018/12/30 次回予告を追加しました。

※2019/1/1 微調整しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

 アレックスも学校から帰ってきたし、これから皆で街に出発だ。


「さて、出かける準備はいいかな?」

「はい、細工の作品も持っています」

「わたしはいつでも大丈夫!」


 (うまや)よりリチャードさんの愛馬である天龍(ティエンルン)号を引き出して、三人乗りに。

 例によって窮屈である以外は、特に問題なくフライブルクに到着する。


 礼儀作法を教えてくださるミッターマイヤー夫人のお宅の前で私たちを降ろし、リチャードさんは馬を預けに行く。リチャードさんはいつもどこかに出かけて、終わる頃に戻ってきてくれている。


「「ごきげんよう、ミッターマイヤー夫人」」

「ごきげんよう、アニーさん、アレックスさん」


 ミッターマイヤー夫人は、元々お貴族様のメイド長(ハウスキーパー)をしていたけれど、体調を崩して引退し、今は庶民相手に礼儀作法を教える仕事をしているご婦人だ。

 将来、冒険者になっても商売人や職人になったとしても、一流になると必ず上流階級とのつきあいを考えなければならないから、礼儀作法は修めておくべき、というリチャードさんの強い勧めで、私たち二人とも礼儀作法を習っている。


 これまで、歩き方やお辞儀の仕方、領主様との謁見や食事会、舞踏会での振る舞いなど、様々な作法を教わってきた。

 ちなみに今日は国王陛下と謁見する場合についての作法との事だ。


「今の国王陛下は気さくな方ですから、少々礼儀の間違いがあっても全く気にされる事はないでしょう。しかし、周りの方々が皆そうとは限りませんからね。正しいお作法を身につけておいて、損になる事はございませんよ」


 国王陛下は、もともと三男坊だったため王位継承権が低く、身分を隠して市井で冒険者として活動してきた方らしい。

 20年前の大戦でいわゆる「勇者」として大活躍した後、上の二人のお兄さん方も大戦中に亡くなってしまったため、国王の座についたそうだ。


 さて、謁見の流れとしては控え室で待機し、呼び出し係が名前を呼んだら静かに入り、お辞儀をする。男性なら片膝をつくのだろうけど、女性の場合は膝を曲げて上半身をまっすぐ下ろすにとどめる。このとき注意しなければならないのは、こちらから話しかけてはならない事、だそうだ。


 アレックスや他の子供たちと一緒に流れを繰り返すうちに、終わりの時間となった。


 最後にミッターマイヤー夫人に、今週からフライブルクに下宿することになったことと、これまで通り通う事について伝える。


「まあ、そうでしたか。冒険者学校合格おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「こちらで身につけた礼儀作法が、あなたを助けられると嬉しいですわ。それでは、また来週。ごきげんよう」

「「先生、ごきげんよう」」


 礼儀作法が終わったら次は武術だ。アレックスと二人で、ぽてぽてと歩いてリー先生のところに向かう。


「「先生、こんにちは!」」

「おお、今日も元気な顔を見せてくれて嬉しい限りじゃ」


 リー先生にも、冒険者学校に合格して下宿する事を伝えた。


「おお、それはめでたい事じゃ。――時にアニーちゃん、例の修行はどうなっておるかの?」


 マナを使う事は、余り公にはしていないだろうから、少しぼかした方がいいかな?


「えーと、()()()()()()は慣れてきたんですけど、逆にアシスト無しの時、手応えがなさ過ぎてバランスを崩してしまうんです。本来は、アシスト無しで十分な威力が出る筈ですよね?」


 私の回答を聞いたリー先生は、顎髭をしごきながら少し考える。


「ふーむ、難しい所じゃの。今は例の問題の解決が最優先じゃろうから、基本、アシストありで慣れておいた方がいいかも知れんの。ただ、アシスト無しでも最低限は動けるようにしておかんと、奇襲を食らったときに何もできなくなるぞい。それには気をつけるんじゃぞ」

「はい、基本的にアシストあり前提は箭疾歩(せんしっぽ)のみで、あとは今まで通りアシストなしでいいかな、と考えています」

「その辺りが妥当な線じゃろな。さて、練習の成果を見せて貰おうかの」


 私はまず、制限したままの状態での箭疾歩を見せてみた。やはりへろへろジャンプで、1mくらいが精一杯だ。


「ふむ……それでは、全力のを見せて貰えるかの?」


 私は一応周りの様子をうかがってから、バングルを外して一呼吸置く。


 それから、全力での箭疾歩を繰り出した。だんっと言う床を蹴った音が周りに鳴り響く。


「なるほど、これだけ違えば、それはもう感覚は狂うわな。当面は箭疾歩は全力限定が良いじゃろう」


 あとはいつも通りの套路の稽古。アレックスの場合、套路はキッチリ追えるんだけど、組み手になったら全然ダメなんだよなぁ。なので、最近つきあってくれない。姉さんは寂しい。


 習い事は毎週1時間ずつしか時間が取れていないので、あっと言う間に過ぎてしまう。いつの間にか、リチャードさんが道場にやってきていて、習い事の終わり時間が来たことを事を示していた。



              ◇   ◇   ◇



 次は細工の先生だ。

 工房が並ぶ界隈に、リチャードさんとアレックスと私の三人で歩いて行く。

 看板に「ヴィクトル細工工房」と書かれた店の前でリチャードさんが足を止めた。


「ここの師匠のヴィクトルさんが見てくれるそうだ」


 中に入ると、作業机にいろいろな工具や材料が積み上げられた中で、一人のドワーフが作業をしていた。


「こんにちは、ヴィクトルさん」


 リチャードさんが呼びかけても、作業に集中して完全無視状態。

 リチャードさんも、作業の区切りが付くまで反応はないと承知なのか、辛抱強く待っている。


 やがて、きりが付いたのか、ドワーフ(ヴィクトル)さんはぼそっと一言呟いた。


「――何の用だ」

「先日させて頂いた、細工の修行を見て頂く話です。こちらのアレックスくんの作品を見て頂けますか?」

「――ああ」


 リチャードはアレックスに、作品を見せるように促した。


「はじめまして、アレックスと申します。こちらが私の作品です」


 アレックスが懐から取り出したのは、銀の指輪のようだ。ヤスリで細かく削られていて、綺麗な紋様が出来ている。


「ふん」


 ヴィクトルさんは指輪をつまみ上げ、アイルーペをつけた目でじっくりと確認する。


「アレックスと言ったな。これはお前さんのいくつ目の作品だ?」


 お、まともに喋った。


「――他人に見せるのは、初めての作品です」

「ふん、なるほど。ま、本なんかで勉強した気配はあるが、素人に毛が生えた程度の作品だな。それで、お前さん、何のために細工をやりたいんだ?」

「はい、私は付与魔術(エンチャント)に興味を持っておりまして、その素材として細工物を自分で作りたいと考えています」


 ああ、アレックス、ぶっちゃけてるよ。適当に、綺麗なものを作りたいんです~とでも言っておけばいいのに。


「わざわざ素人が作らんでも、細工師(おれたち)が作ったのを買えばよかろう?その金が惜しいだけか?」

「付与魔術の効果をつけたいだけであれば、わざわざ細工師が作った物を買わなくても、素人の手作り品で十分です。でも、私は、私が作った物は魔法の効果だけで使われるのではなく、あくまで、装飾品としても使われるような物を作りたいのです。それも自分の手で」

「ふん、わざわざ細工師の物を買わなくても構わない、と?」

「シンプルに言えば、私は最初から最後まで自分の手で作りたいだけです」


 ヴィクトルさんは、指輪をアレックスにぽんと投げ返した。


「ま、これは大事に取っておけ。お前さんの細工師としての第一号作品だ。第二号以降にに品質が劣るのは当たり前だが、それらにはない、大切なものを持っているからな」


 アレックスは両手で指輪を受け取りながら、小首をかしげて問い返した。


「細工師としての第二号以降……では、弟子として認めて頂けると?」

「他人の手を入れたくない気持ちは分かるからな。ところでお前さんは、何故わざわざ付与魔術の素材用と言った?適当に綺麗な物が作りたいとでも言っておけば角が立つまいに」

「嘘をつくよりも率直に話した方が勝率が高いと判断しました。それから、もし嘘をつくとすると……こうなりますね」


 と言うとアレックスは、いきなり口調を変えてしゃべり出した。


「わたし、綺麗なものが好きなので、自分で作りたいんですぅ! きらきら♪」


 ヴィクトルさん、呆然とした後、一言だけ呟いた。


「――正直に喋って良かったの」


 アレックスはすぐに普段通りに戻り、一言だけ答える。


「恐れ入ります」


 相変わらず、我が妹は謎である。

 ともあれ、これでアレックスには来週から細工という習い事が増えたようだ。



              ◇   ◇   ◇



 そろそろ日も傾いてきた。

 今日は三人で外食する事になっていたので、三月の兎(マーチラビット)亭へ。今日もこないだと同じく、個室を用意してくれた。


「さて、何か食べたいものはあるかね?」


 と、リチャードさん。うーん、普段、家で食べられないものがいいな……そうだ。


「魚料理はどうでしょう?」


 それほど遠くないとはいえ、わざわざ村まで行商に来る魚屋はいないので、家で鮮魚を料理する事はほとんど無い。干し魚を街で買って帰る事はあるけどね。

 それに引き替え、フライブルクは港町なので、鮮魚には事欠かないのだ。


「そうだな、サーモンのパイ包みでも食べようか。あとはコンソメスープにサラダかな」

「いいですね!」


 パイは作るのが割と面倒なので、家で作る事はあんまりない。コンソメスープも、お店レベルの物を作ろうとすると、とんでもない時間と労力がかかってしまう。

 お店で食べると結構なお値段になってしまうけど、まあ、これは不可抗力と言う事で。

 と言う訳で久しぶりの外食を、皆で楽しく過ごす事ができた。


 さて、三月の兎(マーチラビット)亭で思ったより長居してしまった事もあり、街を出たのは黄昏時になってしまった。途中で日が暮れるのは確実。


「アニーくん、照明(ライト)を頼めるかな?」


 私はカンテラの灯心部分に照明(ライト)を掛ける。これで、オイルを燃やすより明るく、しかも指向性のある明かりが得られる。照明(ライト)を単純に松明のように使うと、目がくらんで意外に前が見えないからね。

 リチャードさんが手綱を持っているので、先頭のアレックスがカンテラを下げるような状態で、無事に帰宅する事ができた。

 次回予告。


 ついに魔法少女風の衣装が完成した。衣装合わせの途中、私は念のため、この衣装に関する口止めをお願いする。

 そして私は、領主館で暮らす後の夜を迎えたのだった。


 次回「うん、かわいい。こういう服もいいなぁ。」お楽しみに!

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