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16.屋根裏部屋がいいんですが、いいですか?

 この小説を書くに至った経緯や、七転八倒ぶりを記録するために、「へっぽこ小説書き斯く戦えり」と言うエッセイ小説を立ち上げました。

 ブログでやれ、みたいな内容ではありますが……


※2018/9/13 街への引っ越しを準備したい!から改題しました。

※2018/12/30 次回予告を追加しました。

※2018/12/31 微調整しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

 下宿屋さんは、この辺りではよくある木造漆喰(しっくい)三階建てプラス屋根裏部屋の建物だった。一階は元々お店みたいだったけど、今は使ってないみたい。奥に台所はあるけどね。

 メモには、二階に大家さんが住んでいるように書いてあったので、リチャードさんが二階へつながる扉をノックした。


「はい、どちら様でしょう~?」


 顔を見せたのは、三十代くらいの綺麗な女性だった。


「突然の訪問失礼します。こちらのお宅を冒険者学校生徒の下宿先としてご提供頂けると紹介されて参りました。リチャードと申します」

「まあ、そうでしたか~。ええと~、いらっしゃるのはこちらの三人の女の子ですか~?」


 大家さんはシャイラさん、私、アレックスを見てそう言った。


「あ、住まわせて頂きたいのは、こちらのシャイラさんと私で、別々に、です。こちらは私の妹ですが、村に帰りますので」

「あらあ、そうでしたか、勘違いしちゃいました~」


 と、私の修正を聞いて、恥ずかしそうに笑う。


「あ~、申し遅れました。わたし、マリー・ワトソンって言います~。マリーでいいですよ~。この家はもともと、主人の店だったんですが、亡くなっちゃったから、学生さんに貸すようにしてるんですよ~」


 大家(マリー)さんの自己紹介に応じて、シャイラさんもマリーさんに挨拶した。


「私はシャイラと申します。こちらがアニーさん」

「お部屋は二つあります~。一階が台所と食卓で、二階がわたしの部屋なので~、三階とその屋根裏部屋ですね~。屋根裏部屋は狭いですが、十分住めますよ~?」

「とりあえず、両方見せて頂こうかな」

「はい~ 皆さん、着いてきてください~」


 ぞろぞろとみんなで階段を上っていく。まずは三階だ。


「こちらが三階です~ 家具は前に住んでいた学生さんが置いていったので、そのままありますよ~?」


 少し古びてはいるけど、こざっぱりして綺麗だ。モノもないしね。

 次は屋根裏部屋。


「こちらが屋根裏部屋です~ こちらもついこないだまで学生さんが住んでいたので、住むには十分ですよ~」


 確かに三階よりは狭いけど、ベッドもあるし、寝るだけなら十分十分。

 切妻屋根に面した窓もきちんとあるしね。私にはこちらに住みたい理由もある。


「あの……シャイラさん。わたし、こちらの屋根裏部屋の方がいいんですが、いいですか?」


 と言うわけで善は急げと、早速切り出した。


「私としてはありがたいが……いいのか?」

「私の方が小柄ですし、屋根裏部屋って昔から憧れてたんですよ」

「そうか、すまないな。ありがとう」


 シャイラさんは素直に礼を言って受け入れてくれた。


「リチャードさん、私、ここの屋根裏部屋で下宿させていただけますか?」

「私は別に異論はないよ。ワトソン夫人、費用と支払い方法について教えて頂けますか?」

「お家賃は、三階が一ヶ月銀貨8枚、屋根裏部屋が銀貨6枚になってます~。あとは食費が朝晩とお昼のお弁当がついて一ヶ月銀貨6枚ですね~。必要無い時は事前に言って頂ければ割り引きますよ~。一ヶ月分を先に頂けると助かります~。今月分の家賃だけでも頂けると、すぐに荷物を入れて頂いて構いませんよ~」


 そうか、ご飯もついてくるんだ。お弁当があるのはいいな。それにしても街中の下宿にしては格安な気がする。


「こちらの条件でお二人とも入居していただけます~?」

「無論だ。これからよろしく頼む」

「はい、よろしくお願いします!」


 当然、二人とも二つ返事で承諾した。

 特にシャイラさんの場合は、現在宿屋住まいだから、すぐにでも引っ越してくるみたい。私たちはまだ準備が必要だから、今週中に済ませればいいかな。

 もっとも、ベッドや机、タンスと言った基本的な家具は全部揃ってるから、持ってくるのは着替えくらいのような気がするけど。


 私たちは下宿の外に出て、お別れする事となった。


「それでは、来週の入学式に。いや、アニーさんが越してくる時には顔を合わせるかな?ともあれ、これからよろしく頼む」

「はい、シャイラさん。また今度!」

「シャイラさん、アニーくんをよろしくお願いしますね」


 シャイラさんは宿泊している宿屋の方へ。

 私たちも……おっと、リチャードさんの馬を預けている宿屋に行かないと。

 結局、宿屋までの道中はシャイラさんも一緒に歩いて、そこで本当にお別れしたのだった。



              ◇   ◇   ◇



 行きと同じく、リチャードさんの愛馬に三人乗りでの帰宅中。

 あんな事があった、こんな事をやったなどと、皆でとりとめも無い思い出話をしながらの帰宅となった。

 そりゃ、外で住むようになるのはリチャードさんに引き取られてから初めての事だけど、そんな話しちゃったら感傷的になってしまう。


 領主館についてからは、アレックスが作ってくれた晩ご飯を食べた後、引っ越しの準備は何もせずに寝てしまった。

 いや、ほら、疲れてたし!まだ入学式まで日数あるし!


 そして、翌日は一週間に一度の休息日。


 アレックスは家事の時間を除いて一日中、作業室に籠もってギコギコ、細工(ティンカー)の師匠に見せる作品を作っていた。


 私は、引っ越しの準備。

 普通だったら、荷馬車を借りたりするんだろうけど、リチャードさんが便利な道具を持っている。

 その名も、暴食の鞄(グラトニーバッグ)という魔法の品物だ。名前の通り、見た目より遙かに沢山の物が入って、しかも持っても鞄は重くならないと言う便利な道具。ただし、鞄の入り口が伸びるわけではないから、椅子やベッドが入るわけではないけどね。

 リチャードさんの場合は、普段は品物の納品や受け取りで街に行く時に使っている。それを引っ越し用に借りたので、とりあえず、着替えや小物類を突っ込んでいく。


 この日も特に何事もなく過ぎていった。



              ◇   ◇   ◇



 さて、翌日の休息日明け。


 今日は週に一回の習い事のために街に赴く日だ。あと、アレックスの細工の師匠になるかもしれない人に会う日でもある。

 私は来週からフライブルクに下宿する事になるので、この村からリチャードさんと一緒に習い事に行くのは、今日が最後の日になると思う。


 朝の日課とお風呂をいつも通りに終わらせる。

 私が出るまでの間に、アレックスが朝食を準備してくれているのはいつものこと。


「さ、それでは朝食をいただこうか」

「「いただきまーす」」


 朝食を始め、今日の予定を確認する。


「今日は、二人とも午後からフライブルクで習い事だね」

「はい。リチャードさんと姉様(ねえさま)のお弁当は準備してありますので、食べてくださいね」

「いつもありがとう、アレックス」

「アレックスくんの細工の先生には、武術の練習が終わった後に伺うように話をしてある。遅くなるから、今日は街で夕ご飯を食べる事にしよう。領主館(ここ)に戻ってくるのは日が暮れた後になってしまうが、まあ、仕方ないな」

「リチャードさん、手配ありがとうございます。作品の準備はもうできています」


 アレックスは昼過ぎまで初等学校で勉強しなければならない。

 リチャードさんと私は特に家を出る用事はないから、アレックスが帰るのを待って、出かける感じになるかな。

 普段は習い事がそれぞれ1時間くらいで、冬場だと特に黄昏時のぎりぎりに領主館に戻ってくる感じ。

 確かに、いつもの時間に細工の先生の所に行って、更に晩ご飯を食べる時間をプラスすると、間違いなく途中で日が暮れる。

 周りに何も無いから、月が出てない時に日が暮れてしまうと、真っ暗になってしまって本当に夜道は怖い……まあ、今日は月が出ているから、それほどひどい事にはならないだろうけど。


「それでは、姉様、行ってきますね」

「はーい、いってらっしゃい、アレックス」


 初等学校へ行くアレックスを見送った私は、引っ越し作業を再開……と、思ったけど、正直、もうだいたい詰められるものは詰めた気がする。

 仕方が無いから、アレックスが帰ってくるまで、図書室で本を読んだり、イメトレしたり、套路をやったりしてだらだら過ごしていた。

 だらだら?いや、なんか、トラウマ克服できそうな気配がして来たら、一気に真剣味が失せちゃって……ほら、気軽に考えられるようになると言うのも、トラウマ克服に大事な要素だし!


 ごほん、さて、お昼ご飯の時間。

 私は、リチャードさんに2日後くらいに引っ越そうと考える事を伝えた。


「ふむ、2日後という事は入学式5日前、か。初めての一人暮らしだし、少し早めに入って様子を見ると言うのは良い事じゃないかな」

「問題なければ、今日、街に行った際に下宿に寄って貰えますか? 大家(マリー)さんに入居日をお伝えしたいので」

「ああ、問題ないよ」


 そして、リチャードさんは思いついたように提案してきた。


「そうそう、実際に暮らしてみて足りない物に気がつくかも知れないし、私もアニーくんの一人暮らしの感想を聞きたいから、休息日はこちらで過ごさないか? 休息日前の夕方に迎えに行って、翌日の夕方に送って行く事ができる」

「ええ、私もしばらくはその方が安心です」

「それは良かった。でないとアレックスくんが寂しがるからね」


 思ってもみなかったリチャードさんの言葉に、私は小首をかしげて問い返した。


「あの()、寂しがりますかね?」

「世話を焼く相手が居なくなるのは、やっぱり寂しいものだよ」

「娘が嫁ぐ時のような事は言わないでくださいよー」


 私の軽口に対して、リチャードさんはテーブルの上に肘をついて組んだ両手に顎をのせてから、質問を返してきた。


「その時には、私を父親代わりとして立たせて貰えるのかな?」

「さあ、どうでしょうね?」


 とか軽口をたたけるのも、あと何回か。

 いやいやいやいや、新しいステージに旅立とうとしているのに、感傷的なことばかり考えてどうするんだ、私。

 お昼ご飯の後に食器を片付けして、また図書室で本をぱらぱらめくっていると、アレックスが戻ってきた音がした。


「リチャードさん、姉様、ただいま帰りました」


 さあ、お出かけの時間だ!

 次回予告。


 今日は習い事の日。礼儀作法に武術と、二つの習い事をこなす私たち。でも今日はそれに加えて、アレックス念願の細工の弟子入りのため、細工工房にも訪れる事となっていた。

 はたしてアレックスは、気むずかしいと言われるドワーフの細工師を攻略する事はできるのだろうか?


 次回「先生、ごきげんよう!」お楽しみに!

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