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14.見たこともないようなお菓子で一杯だ……

 次回より、投下時間を不定にするかもしれません。ストックが切れるまでは、1日1投稿は極力維持します。


※2018/9/13 みんなと紅茶とお菓子をいただきたい!から改題しました。

※2018/12/28 次回予告を追加しました。微調整しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

 みんな席について落ち着いた所で、シャイラさんにこの店の事を聞いてみる。


「ところで、シャイラさん、このお店来たことがあるの?しかも名前覚えられてるなんて」

「いや、入ったのは一度だけだ。この店は紅茶専門店だから、店主(オーナー)が我が国に来たことがあってな。その際に、父が彼の世話をしたらしい。その時、この国に来たときには是非おいでください、と言われていたので、数日前に訪れてみた。無料でも構わないとは言われたが、それは父の恩であって、私の恩ではないからな。それに乗るわけにはいかん。さすがに、今の私の懐具合では、そうそう使える値段では無いな」


 シャイラさんはそう言いながら肩をすくめた。


「えー……実はいいとこの人?」

「大したものではないよ。いずれにせよ、今の私は一介の剣士――いや、学生に過ぎないさ」


 私の発言を聞いて、クリスが私に質問してきた。


「いいとこと言う意味では、アニさんちも大概(たいがい)なんと違うか?」

「そんな事はないよ? 私たちはお世話になっているだけで、リチャードさんの地位とか財産とかは関係無いし」


 と、そこにノックの音が響き、先ほどの執事さんがメニューを持ってきた。


 メニューの中身を見ると、紅茶のいろいろなブランドが並んでいるようだった。ちなみに、値段が書いてない。そして、ブランド名を並べられても、さっぱり分からない。

 紅茶に関しては、紅茶の国(バーラト)の人だよね、とシャイラさんをじっと見る。

 シャイラさんは、リストをちらっと見てから、執事さんに尋ねた。


「今日のお菓子はどのようなものがあるのかな?それを見てから決めたいが」

「かしこまりました。まずは本日ご用意できるお菓子をお持ちいたします」


 しばらくすると、メイドさんが沢山のお菓子を載せたカートを押してきた。続いて、スコーンにクロテッドクリーム、サンドウィッチなどが載ったカートまで後ろに着いてきている。


「ふわぁ……」


 今まで見たこともないようなお菓子で一杯だ……ホイップクリームや、カスタードクリームで彩られたケーキや、ゼリー、プディングに、粉砂糖が降りかかった様々な焼き菓子たち……宝石箱みたい……


「こちらのクリームが載ったケーキですが、お嬢様方の場合、最大でも一つまでにしておいた方がよろしいかと存じます。油が大変多く含まれておりますので、このようなお菓子に慣れていらっしゃらないと、後に響く場合がございます」


 魅入られたようにお菓子の山を愛でる私たちに、執事さんが教えてくれた。まあ、そうだよね。普段食べ慣れてないものを急にたくさん食べると、お腹がびっくりしちゃう。


 ともあれ、みんなわいわい言いながらお菓子を選んでいく。ま、個室だから少々騒いでも問題ないか。シャイラさんとアレックスは、あくまでマイペースに、さっと決めていたみたいだけど。

 そして、それぞれお菓子を選んだ後、シャイラさんにおすすめの紅茶を聞いてみた。


「ふむ……アニーさんのように、クリームが多いものだと、アッサムがいいだろう。マリアさんとアレックスさんはダージリンオータムナル、クリスティンさんならダージリンセカンドフラッシュかな。私はディンブラを頼む。皆、私のおすすめで注文しても構わないかな?」

「「それでお願いします」」


 それはもう。魚のことは漁師に聞け。紅茶の事は紅茶の国(セリカ)の人に聞けってね。



              ◇   ◇   ◇



 紅茶を注文した後、またしばらく待つと、ティーポットを入れたカートがやってきた。執事さんが、それぞれのカップに華麗に紅茶を注いでいく。皆のカップから、華やかな香りが流れてきた。


「それでは、失礼いたします。ごゆっくりどうぞ。御用の際は、こちらのベルをお鳴らしください」


 執事の人が一礼してから退出し、ようやく落ち着いた時間がやってきた。いや、とても落ち着けないけど。


「それでは、全員の合格を祝して……」


 宴の始まりの音頭は、シャイラさんが取ってくれた。


「「いただきまーす!」」


 紅茶を一口いただいてから、ホイップクリームが載ったケーキに手を出す。

 あー、幸せ、まるで桃源郷(とうげんきょう)に来たみたい……


「うむ、やはりここのお菓子は素晴らしいな。紅茶も申し分ない。我が国(バーラト)の最高級品と言って差し支えないな」

「神様、今日の贅沢をお許しください……おいひい……」

「あかーん、これは悪魔の食べ物や……こんなん食べてもうたら、普通のお菓子食べても嬉しゅうなくなる……なんちゅうもンを食べさせてくれたんや……」

「これは素晴らしいですね。家でも作れればいいのですが」


 みんなも口々に感動を表しているようだ。一人(アレックス)だけ、微妙に違う感想になっている子が居るけど……もし、アレックスにも作れたらありがたいんだけどなぁ。



              ◇   ◇   ◇



 何口か食べたところで、私は本題を思い出した。


「えーと、なんだか話がもの凄ーく巻き戻るような気がするけど、シャイラさん、さっきはごめんなさい」


 と、シャイラさんに頭を下げる。


「ん、さっきとは?」

「ええと……その、立ち会いの時の事」

「あ、ああ、あの事か……」


 シャイラさん、さっきの事を思い出したのか、少し赤くなりながら答えた。


「そもそも、私の未熟のせいだからな、謝る必要はない。私も醜態を見せてしまい失礼した。それにしても、二回目の速さは一回目とはまるで違っていたが……」


 あー、やっぱり、それは不思議に思うよね。

 どうしようかな?どこまでホントの事を言うべきなのかな。

 うん、同じパーティを組むんだったら、絶対いつかは分かる事だから……ええい、マナが多い事までは言ってしまおう。


「その……私の武術は、なんて言うか、マナで動作を強化できるようになっているんです。で、私の場合、街では装備をつけてマナを抑えているので、その状態だと、全然強化できてない感じなんですよね」


 私はケーキにフォークをサクサク入れながら、話を続けた。


「でも本来は、強化無しでも十分戦えるはずなんだけど、あの技自体、教わったのが一昨日(おとつい)で、まだまだ全然形が固まって無くて……普段から安定してあのくらいの速度が出せれば、完成かなって思っているんだけど」

「なるほど、不躾(ぶしつけ)な質問だから、答えたくなければ構わないが、その抑えている鍵が、左手につけているそのバングルかな?」


 シャイラさんは、私の左手首で鈍く光るバングルに目をやりながら聞いてきた。


「ええ……そうですね」

「確かに、外したときには尋常ではない気配を感じた気がする。しかし、抑えていると言う事は、この事は内密にしていると言う事でいいのかな?」

「ええ、これからみんなと一緒に長く過ごすことになるし、嘘はつきたくないから明かしたけど――とりあえず、他の人には内緒でお願いします」


「ああ、我が父祖の名に誓おう」


 それを聞いたシャイラさん、握った右手を胸の前に持ってきて、誓うように言ってくれた。


「ええ、至高神に誓いますよ」

「うちはまあ、誓う相手はおらんけど、喋ってええ事とあかん事はわきまえとるよ」


 他のみんなも同意してくれた。やっぱりいい人たちだよね。


「ところで、先ほどの突進の時は、なぜ(こぶし)ではなくて、手を開いていたんだ?」

「もちろん、相手が鎧を着ていない人だったら握り拳になるよ。さすがにシャイラさんを殴るわけには行かないから」


 それはまあ、シャイラさんは鞘つき曲刀で殴りに来てるんだけど、今回の目的は殴る事じゃなくて、刀をかいくぐって至近距離に接近できる事の証明だからね。


「では、相手が鎧を着ていたら?」


 まあ、そう聞きたくなるよね。


「うーん、素手で殴ってもこっちが痛いだけだから、やっぱり手のひらになるかな。発勁(はっけい)と言って、堅い鎧の中に衝撃を伝える技があるから」

「それは興味深いな……見た感じ、絹の国(セリカ)風の武術に見えたが」

「はい、この街に住んでいる絹の国(セリカ)出身のリー先生という方に習ってますよ」

「あー、そら強い(はず)や。シャイさん、あんたは知らんと思うけど、鬼みたいに強い先生やで。なんせすべての相手を一撃で倒すから、二の打ち要らず(ワンヒッター)と呼ばれとるくらいで。でも、あの武術、マナも活用できるとは知らなんだわ」


 クリスさんもリー先生の事知ってるんだ。まあ、フライブルク在住だもんね。


「4年間通ってるわたしも聞いたの一昨日だし。相当慣れてないと、どっちつかずになるから普段は教えてないみたいだけどね」

「なるほど……目標としては、先ほどのあれを、あの剣術教官相手で成功する事かな?」


 シャイラさんの言葉に、私は腕を組んで少し考えた。


「確かに、うーん……やっぱり、最初に負けた相手にやり返すのが、一番いい気がする」

「確かにあれなら効果的だと思う。私もまだ修行が足りない事を痛感したよ。今度ぜひ、練習につきあわせてくれ。何しろあの剣術教官相手では、我々全員勝てていないからな。一緒に頑張ろう」

「うん、ありがとう。一緒に頑張ろう!」


 打倒、剣術先生! ――あ、そういえば、名前知らないな。まあ、学校が始まったら、イヤでも覚えるよね。

 女三人寄れば(かしま)しいとは申しますが、パーティ内定の四人が揃ってしまうと喫茶店の中だけで2話使ってしまうハメに……


 さて、時代背景的に、紅茶もお菓子も超高級品です。

 ロンドンのホテル内部にあるティーラウンジを検索したのですが、The SavoyのThames Foyerのアフタヌーンティーで68ポンド、1万円近くするらしいですね!



 次回予告。


 ティーラウンジでの紅茶とお菓子祭りは続いている。シャイラさんの秘密を皮切りに、皆で改めて自己紹介を行う事となった。


 次回「自己紹介、やっちゃいましょう!」お楽しみに!

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