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119.初冒険の舞台は洋館で

「フライブルクの魔法少女」を元々読んでいらっしゃっていた読者の皆様、お久しぶりです。今回新たにこの小説を見つけられた皆様、初めまして。

 新しいシリーズを開始するため、旧来の読者様へのお知らせも兼ねて、この小説に少しですが新章を追加する事としました。

 この話の時系列としては、第11章、第86話の2週間ほど後となります。楽しんで頂ければ幸いです。


 さて、一番下のバナーにある通り、2022年11月6日より、3本の小説を同時に公開開始しています。

 30話まで用意していますが、評判を鑑みてもっとも有望な小説を中心に、続きの執筆及びイラスト掲載を進めて行く予定です。

 この小説の直接の続編である「フライブルクの魔女」では、4人組のキャライラストも含まれていますので、ぜひそちらもご覧下さいませ。

 新しい家族、ユーリを迎えてから二週間くらい後、つまり、冒険者学校の1年目が終わった夏休みの頃の話。

 私たち一行、つまり、私とシャイラさん、クリスにマリアは、フライブルク郊外の山中にぽつんと建つ洋館の前に立っていた。


「ほんまにあった……アニさん、よう見つけたなぁ」


 感嘆の声を上げているのはクリス。今日は"冒険"に参加という事で、冒険者らしい装備、つまり短剣とソフトレザーにフード付き外套を纏っている。


「あはははは……まあ、ひょんな事から、ね」


 もともとは私、アニーが飛行の練習中に上空から見つけたんだけど、飛行の術はナイショの正義の味方、ハニーマスタードの十八番(おはこ)と言う事になっているから、ここを見つけた理由は明かせなかったのよね。


 で、人里離れた隠し砦のような洋館に興味をそそられた私は、皆を誘って探険、いや、冒険に来たという訳。

 ちなみに私は魔術師だから、普段着の亜麻のシャツに毛糸のキルト、魔術師の帽子と外套と、街中での格好と大差は無い。違うのは、革靴じゃなくてショートブーツにしている事と、柔らかい革の手袋を身につけている事くらいかな。魔術師でもソフトレザーくらいまでなら着られるけど、そこはそれ、ポリシーという奴で。


「街道から近いにも関わらず、木立と藪で完全に見えず、近づくのも難しい状態になっていたからね。私たちもアニー君の魔法がなければ、ここまで来るのは困難だっただろう」


 と、シャイラさん。彼女の装備はシャムシールという曲刀と竜革盾、そしてハードレザーという軽戦士スタイルだ。


 この洋館、確かに街道からは見えなかったんだけど、実は街道からそれほど離れてはいなかった。でも、洋館を囲うように密生していた藪が問題で、漕いでいくのも難しいほどのトゲトゲだったから、私が"浮遊"の魔法で一人ずつ空輸するという方法で突破したんだよね。

 私たちはそこに洋館があるのが解っていたから強行突破したけど、普通はわざわざそんな所を通ろうとは思わないよねぇ。


「わたしの装備が一番重いから、大変だったでしょ?」


 ガションと金属質の音を立てているのは神官戦士のマリア。彼女の装備は私たちのパーティで一番重い、スケールメイルに両刃の巨大な両手斧だ。体格は私たちの中で一番小柄なんだけど、ドワーフ並と言われる膂力で軽々と着こなしている。


「マリア、"浮遊"に重さは余り関係無いから大丈夫だよ」


 という私の言葉に、ほっとした表情を浮かべるマリアだった。



              ◇   ◇   ◇



「入り口は勝手口と、この正面玄関やね。どっちから入る?」


 洋館の周囲を軽く探索した後、私たちは正面玄関の前に戻っていた。


 この洋館は、リチャードさんの領主館ほど大きくはないけど、館としては充分大きい部類に入ると思う。二階建てで、人里離れた山中にあるから、一階部分の窓という窓にはごつい鉄格子がついていて外敵の侵入を阻んでいた。

 ただ、外壁は古びていて長年使ってないように見える。鉄格子そのものは、まだしっかりした強度を保っているように見えるけど。


 ちなみにすぐ側に、小さな畑らしきものが見つかっていた。でもやっぱり長い間放置されていたようで、畝の跡が残っているだけで何か植えられているような形跡は見えなかった。


「誰か住んでる、と言う可能性もゼロじゃないから、まあ、まずは普通に訪問するスタイルでいいんじゃないかな?」


 と答え、私は頑丈そうな木製の扉に備え付けられている、金属製の輪っかでできたノッカーを使おうと扉に向かって歩き始めた。


「ちょい待ち!」


 しかし、クリスの鋭い声で急停止する。


「一応、正体不明やからね。正面玄関に罠を仕掛ける奴はおらんとは思うけど、念のためチェックするで」


 と告げたクリスは、私に代わって素早く扉の前に回ると、扉そのものや周辺の壁、敷石などをチェックし始めた。


「ま、大丈夫そうやね。ほな、ノックするで?」


 クリスがノッカーを使うと、ゴンゴンという音が周囲に響き渡った。少し待ってみたけど、洋館の中からは何も反応はない。


「誰もおらんかな? 開けるで」


 懐から解錠道具を取り出したクリスは、扉の前で腰を屈めて解錠作業に入ろうとしていた。その姿を見ながらシャイラさんが首を傾げている。


「これは不法侵入ではないのかな?」

「所有者が明らかであればともかく、廃墟だったら問題無いよ。遺産を回収して流通させるのも冒険者の仕事だからね」

「中に人がいたとしても、ごめんなさいすれば大丈夫なのです!」


 正義を司る至高神神官のお墨付きがついたところで、作業を再開するクリス。だけど、まずドアノブを軽く動かしたところで、驚きの表情を浮かべたのだった。


「あれ? 鍵、掛かっとらんわ」


 クリスの言葉の通り、彼女がドアを引くと、ぎぎぎと言う音はしているものの、見た目の古さと重厚さとは裏腹に、ほぼ現役のような軽さで扉が開いていった。

 扉の中には玄関ホールが見えている。シャイラさんは腰の曲刀の柄に手をやり、マリアは背中の両刃斧を降ろして目の前で構えたが、扉の中には動いているような存在は何も無く、中から何か飛び出してくるような事は起きなかった。


 そこで私たちは周囲を警戒しながら、ゆっくりと洋館の中に足を踏み入れていったのだった。



              ◇   ◇   ◇



「こんにちはー?」「お邪魔しますね!」「失礼する!」「邪魔するで-?」


 一応、口々に声を掛けながら玄関ホールに入り込む私達。


 そこは若干薄暗いものの、私達が入った扉と、幾つかの窓から夏の日差しが入り込んで、私達に静かな佇まいを見せていた。

 吹き抜けになっていて、正面には二階に上がるための階段が、そして左右と奥にはそれぞれ扉が見えている。

 建物の中は静寂に満ちていて、私達の他に生きている者の姿は見えず、まるで時が止まっているように見える。


 そして、床は黒光りする大理石で作られていて、私達の姿を綺麗に反射していたのだった。


「ん……なんか、おかしいで?」


 素早く周囲を見渡したクリスは、足下に目をやると柳眉をひそめながら呟いた。


「なんで、埃一つ無いんや?」


 クリスの声を聞いて、私達も床や周囲の壁などをチェックする。

 窓は鉄格子が入っているものの、窓ガラスの類は入っていない。つまり、素通しだ。だから少しでも放置していれば、土埃でまみれていて当然だろう。でもここは、毎日掃除しているかのように綺麗な姿を保っている!


「これは――!?」


 互いに顔を見合わせた次の瞬間。私達は室内にいるにも関わらず、轟っとばかりに吹き付けてきた猛烈な突風に襲われていた。


「うわっ!」「なッ!?」「なんやて!?」「きゃあっ!」


 突風が吹いていたのは、ほんの数秒の事だったと思う。

 でも、それが収まった時、私達は背後の扉が固く閉じられている事に気付いたのだった。

 私が見つけた洋館を探索する冒険に出かけた私達一行は、いきなり閉じ込められてしまう。私達はその意図を探るべく、まずは館内の探索に乗り出していったのだった。


 次回、「何が出るかな館内散策」お楽しみに!

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