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12.ごめんなさい。不可抗力です。

 ブックマークいただきました!本当にありがとうございます!

 業務連絡です。申し訳ありませんが、最近一話当たりが長文化してきており、更に、書き貯め分が完全に枯渇してきたため、一話あたりの分量を約5千文字から約3千文字に減らします。


※2018/9/13 対処法をみんなで考えたい!から改題しました。

※2018/12/27 微調整しました。次回予告を追加しました。

※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。

 試験の時にお昼をいただいたベンチを使って、報告会開始だ。まずシャイラさんが口火を切った。


「あー、まずは私からだが……」


 シャイラさん、いきなり頭を下げた。


「すまん。この国には知己(ちき)もいなくてな……私一人で考えてみたが、特に思いつかなかった」


 私は(あわ)ててシャイラさんを制止する。


「ええええ、謝らなくてもいいですよ!考えてくれただけで十分です!それに、シャイラさんには、後で手伝って欲しい事があるので、それをお願いできますか?」

「そうか……私にできる事であれば、なんでも手伝おう。気軽に言ってくれ」


 次は、マリアさんが話し始めた。


「わたしが使える神聖魔法に平静(サニティ)という魔法(もの)があって、心の平静を失ったときにこれを使うと、落ち着かせる事ができます。でも、効果が一瞬なので、心の平静を乱す存在が目の前に居続ける場合は、あまり効果はないと思います!」


 へえ、神聖魔法にはそんなのがあるんだ。でもまぁ、確かに、今現在のパニックを落ち着かせる事ができても、パニックを起こす原因がそのままある場合は、またパニックを起こすだけだよね。

 更にマリアさんの話は続く。


「あと、教会の神官さんに聞いてみたんですが、アニーさんのようなパニックを起こす人の相談を受けたことはあるそうです。その、外部からかけられた呪い(カース)であれば、教会でも治せるんですが、トラウマのような心の中の場合、教会でもどうしようもないみたいです。基本的には心をしっかり保つのが一番、という事らしいです!」


 なるほど、呪い(カース)なら、ある意味簡単なのか。祝福とかは教会の専売特許だもんね。

 そしてマリアさんは、苦笑しながら続けた。


「――で、心を健全に保つには至高神に入信するのがが一番、と続けるそうです。わたしとしては、そんな布教の仕方はちょっと気に入りません!やっぱり心から信じて欲しいです!」


 まあ、心をしっかり保つ、と言うのは間違ってはいないよね。理論がなくて、単なる根性論になっているだけだけど……


「と言うわけで、あまり役に立つ話は聞けませんでした。ごめんなさい!」

「いや、平静(サニティ)と言う魔法があるのを知っただけでも助かりました。ありがとう!それに、心をしっかり保つと言う対処法は間違ってはいないと思うし」


 最後はクリスさん。


「あー、うっとこ(うちのところ)はなぁ……正直、ひどかった」

「え……?」


 ひどかった、って、どういう意味だろう。


「答えその一。

『気持ちが悪くなるんだったら、気持ちよくなる薬を飲めばいいじゃなーい?』

 ――いや、それ、あかんやろ。ラリってどうするねん。

 答えその二。

『ええやん、気持ち悪くなる対象吹っ飛ばしたら』

 ――それできたら苦労せんて。

 答えその三。

『その娘、筋肉が足らんのだ、筋肉が。健全な心は筋肉に宿る。わっはっはー』

 ――脳みそ筋肉(のーきん)に聞いたうちがアホやった……

 まあ、こんな感じや」


 うん、確かに、これはひどい。


「クリスさんの周りの人、なんて言うか、ユニークな発想の人が多いんですね」

「無理矢理褒めてくれて、おおきに。まあ、比較的まっとうな意見では、恐怖を感じる対象を大丈夫やって思えるように少しずつ練習すれば、最終的に克服できる、と言うんもあったかなあ」


 お、リチャードさんの意見に近い気がする。


「あ、それ結構、私たちの考えに近いかも。私たちで考えたのは、こんな感じで――」


 一昨日(おととい)からやっていた事をかいつまんで説明する。


「ほうほう、まずはイメージトレーニングで最初の恐怖心を軽減して、最終的には実際に武術で克服して解決する、と」

「イメージトレーニングはお見せできませんけど、武術なら実際にお見せできますから。そこで、シャイラさんの力を借りたいと思いまして」


「む、私か。どうすればいいのだ?」


 シャイラさん、俄然(がぜん)やる気が出てきたようだ。


「すみません、まだ抜き身の剣を見ると、トラウマが出てしまうと思いますので――剣を鞘に入れた状態で構えてくれますか?」

「なるほど、こうか」


 シャイラさん、自分の腰に佩いている曲刀(タルワール)を、鞘のまま右手で構えてみる。

 私は、魔術師の帽子(ウィザードハット)を机の上に置いて、シャイラさんから少し離れた位置に移動する。


「鞘の分、扱いづらいとは思いますが、私に斬りかかってくれますか?」

「む、いいのか?鞘のままでも、当たると最悪、骨折するぞ?」

「リチャードさんもいますし、マリアさんも居ますから、大丈夫ですよ」

「そうか、分かった。では遠慮無くかからせて貰う」


 シャイラさんはそう言うと、剣術試験の時に見せた、あの右手で刀をくるくる回す方式で、こちらに向かってきた。

 そして私は、バックジャンプからの――箭疾歩(せんしっぽ)


「やッ!」


 と、跳ぼうとしたんだけど、マナの力が制限されていて、アシストが全く効いていない――!

 へろへろジャンプで目標となる2mどころか、1mも跳べず、その結果……


「あ(いた)ッ!」


 がーんと側頭部に、シャイラさんの一撃を食らうのだった。

 シャイラさんが即座に剣を立ててくれたお陰で、骨折はしなかったけど、頭への一撃でくらくらして倒れ伏す。


「お、おい、大丈夫か!?」


 慌ててシャイラさんが介抱に来てくれる。


「うーーー」


 私はうずくまって(うな)るのみ。自分のふがいなさに腹が立ってきた。


「うー……納得……いかない。せっかく……せっかく、皆に成果を見せようと思ったのに!」


 がばっと起きて、リチャードさんの方に顔を向ける。そして、左手のバングルに手をやりながら質問した。


「リチャードさん! ()()()()()!?」


 リチャードさんは周りを見て他に誰も居ない事を確認した後、軽く肩をすくめてこう言った。


「――いいんじゃないかな?」


 それを聞いた私は、バングルを取り外して懐にしまう。そして立ち上がって、再びシャイラさんの方へ顔を向けた。


「シャイラさん!申し訳ないけど、もう一度、お願いします!」

「あ、ああ、私は構わないが……大丈夫か?」

「ええ、大丈夫です!」


 自分でも頭に血が上っていて、先ほどの痛みが吹っ飛んでいるのを感じる。でも、頭に血が上っていると、剣を見極める事はできない。一度、大きく深呼吸してから、シャイラさんに声を掛けた。


「お願いします!」

「おう!」


 シャイラさんもそれに答えて、右手の剣を振り始める。


「はッ!」


 そして右から左に斬りかかってくるのを、私はバックジャンプで(かわ)し、今度こそ――箭疾歩!

 時間の猶予は、外側に通り抜けたシャイラさんの曲刀が、再び内側に戻ってくるまでの間!


「やーッ!」


 右腕を下に下げ、体を左に捻り下げる。そして、左足で大きく大地を蹴りながら、一気にねじりを解放し、右腕を槍のように突き出していく。

 同時にマナの動きを制御し、地面から左脚、胴、胸、右腕への力の流れを助けるように流していく。


 先ほどとは全く違う速度、跳躍力で、一気に距離を零にしていく。

 延ばした右手は握り拳にする訳にはいかないので、手を広げたまま。


 むにゅ。


 そして、当然の結果?私の右手はシャイラさんの左胸に着地した。


「な……ッ」


 しばし硬直した私が、ぎぎぎと私がゆっくり上を向くと、シャイラさんも硬直していた。真っ赤になって。


「あー……ごめんなさい。不可抗力です」


 私は手を離してぷらぷらする。


「き……」

「き?」


 私が、シャイラさんに問い返すと、


「きゃーーっ!」


 シャイラさんは曲刀を落とし、悲鳴を上げ両手で胸を抱えてしゃがみ込んでしまった。意外にうぶと言うか何というか、ごほん。


 周りを見ると、アレックスは眉間に手を当てている。リチャードさんは後ろを向いて、肩が震えているから、笑いをこらえているようだ。

 マリアさんは……両手で顔を覆っているが、指が開いて目が見えている。クリスさんは……こっちを向いて、満面の笑顔で握り拳に親指を立てて(サムアップして)きた。

 えーと、ラッキースケベ、って言うんでしたっけ?


 次回予告。


 中庭で大騒ぎしてしまった私たち。お祝いのため、リチャードさんのおごりで近所の喫茶店に向かう事となった。

 でも、リチャードさんはぶつぶつ言って、結局ついて来ないみたいだけど。ま、いいか。私たちだけで楽しむことにしよう!


 次回「みんなで喫茶店に向かいたい!」お楽しみに!

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