11.みんな、おめでとう!
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※2018/9/13 合格発表を見に行きたい!から改題しました。
※2018/12/27 微調整しました。次回予告を追加しました。
※2019/8/4 スマホフレンドリーに修正しました。
朝が来た。
いつもの時間に目を覚まし、軽くストレッチしながら体の調子を点検する。
うん、湿布がいい仕事をしてくれたのか、筋肉痛は全然感じられない。
明日以降?いやいや、そんな歳じゃないし。
今日も日課の套路を終え、手早く身繕いをし、朝食の席へ向かう。
「「おはようございます、リチャードさん」」
「おはよう、アニーくん、アレックスくん」
まずはリチャードさんに朝のご挨拶。
「今日は冒険者学校の合格発表の日だね」
「はい!」
「朝一番で掲示されている筈だから、今日は朝食を終えたらなるべく早めに出てしまおうか」
「はい、分かりました」
食べようとしたところで、アレックスが声を掛けてきた。
「あの、リチャードさん、姉様、お願いがあるのですが」
「おや、二人にかね?」
「今日の合格発表、わたしもついて行ってよろしいでしょうか?」
あら、珍しい事を言ってきた気がする。
「わたしは構わないけど、どうしたの?」
「姉様がどのような所で勉強する事になるのか、見てみたいと思ったので。あとは、姉様と一緒に学習される人々にも、ご挨拶させていただきたいですし」
へえ、アレックスがそういう事に興味を持つなんて、珍しい。
「細工の方は大丈夫?」
「先日で目処はついていますし、明日は休息日なので、丸一日作業したいと思っています」
今度はリチャードさんがアレックスに質問。
「初等学校はどうするんだい?」
「実は昨日、休むように伝えてあります」
「おやおや、アレックスくんにしては本当に珍しいね」
アレックスの珍しいずる休み宣言に、リチャードさんは驚いた顔をする。
確かに、皆勤賞でも狙っているのかってくらいに、アレックスが学校を休む事は本当に少ない。それもずる休みで!
「勝手に休みを取って申し訳ありません」
「まあ、そこまで用意周到なら問題ないよ。一緒に見に行こうか」
「ありがとうございます、リチャードさん」
頭を下げるアレックス。
「全員で出る事だし、お昼は街でいただくとしよう。と言うわけでアレックスくん、今日は弁当を作らなくていいよ」
「はい、分かりました」
朝食を終え、手早く片付ける。そして、出かける準備をして、全員厩に集合した。天龍号を引き出して、三人乗りに。
ちなみに、アレックス、私、リチャードさんの順番。手綱はリチャードさんが握っている。さすがに、アレックスも私も小柄とは言え、大きくなってきたので、割とギリギリっぽい。
私が仮に冒険者学校に行かなかったとしても、馬車の手配とか、近い将来何か考える必要はあったと思う。
「さ、出発しようか」
「はーい」
◇ ◇ ◇
今日もいい天気だ。そろそろ秋のような涼しい風も吹いてきている。
カッポカッポとのんびり街に向かう……と言いたいところだけど、三人乗りではさすがに窮屈で、若干つらいものはあったりする。
それでもなんとか無事にフライブルクに到着。私たちを冒険者学校前で降ろし、リチャードさんは馬を預けに行く。
「先に行って結果を見てくるように。私は馬を預けたら戻ってくるよ」
「はい、分かりました!」
玄関から入ってすぐの脇に、人だかりができていた。そこに合格者一覧があるようだ。
あ、少し離れた所に、女の子三人が立っている。
クリスさんが私に気がつき、手を振ってから、ニコリと笑ってこちらに向けて握り拳に親指だけ立て、そして人差し指で掲示板を指さした。見てくるようにと言うジェスチャーのようだ。
先に駆け寄って合格者リストを見る。
20人ほどの名前が並んでいる。どうもこれは成績順のようだ。
一番上にはマリアさんの名前。その次に……私の名前があった!その下にシャイラさんとクリスさんの名前も見つけられた。
「ありましたね」
後ろからアレックスの声。
「あったよー!やったよー!」
振り向いて、アレックスの手をつかんでぴょんぴょんジャンプする。
アレックスは手は振りほどかないものの、ジャンプにはつきあってくれない。ちぇっ。
ともあれ、早速、みんなの所に駆け寄っていく。
「みんな、おめでとう!」
「無事、全員揃ったな」
「わたしが一番とはビックリです!みんな合格できたし、神様に感謝、です!」
「マリやんの場合、身も蓋もなく言えば、魔法も剣術も点が入っとるのが大きいんと違うかね?まあ、魔法と剣術両方使える言うんが神官戦士の特徴ではあるから、神様のお陰言うても間違いではないかもしらんけど。でまあ、魔法も使えん、学科も正直微妙な、うちが一番危なかったみたいやな。ともあれ、無事に全員受かったのは良かったわ。ところで、そちらさんは?」
おっと、振られたのを機会に、皆にアレックスを紹介する。
「この子はアレックス。私の妹です」
「初めまして、アレックスと申します。姉がお世話になっております」
アレックスが皆に礼をする。両手でスカートを軽くつまみ、左足を斜め後ろの内側に引き、右足を軽く曲げる、正式な礼だ。
「ほう、随分しっかりした妹さんだな」
「こちらこそ、これからよろしくお願いします!あなたにも神のご加護がありますように!」
「えらい姉さんと雰囲気ちゃうな。まあともあれ、これからよろしゅうに。あー、でも自分はまだ村住まいやんな」
クリスさんの質問に、アレックスは落ち着いた声で回答する。
「はい、まだ初等教育が残っておりますので」
「冒険者学校は受けるんか?」
「いえ、恐らく受けないと思います。余り乱暴なことは得意ではありませんので」
「そーかー。ま、ともあれ、よろしゅう」
クリスさんが私の方を向いて言葉を続けた。
「せや、入学手続きはまだやったやろ?」
「あ、はい」
「そこの事務室でできるさかい、早いとこやっとき」
と、脇のドアを指さして教えてくれた。
「うん、ありがとう!」
私はアレックスを連れて、事務室に足を向ける。
「こんにちは、アニー・フェイと申します。入学手続きに来ました!」
事務のお姉さんは、入学試験の時に受付をしてくれた人だ。
「アニー・フェイさんですね……はい、おめでとうございます。それでは、ここにサインをお願いします」
指定された場所にサインを入れる。……これで、よしっと。
「はい、ありがとうございます。手続きとしては、これで終了です。当校は、制服はありませんし、入学料、授業料もありませんので。あとは、再来週の休息日明けが入学式となっておりますので、昼二つの鐘までに学校にいらしてください。筆記用具等は配布しますので、特に要りませんよ」
「はい、分かりました!」
そして受付のお姉さんは、小さなメモを取り出してきた。
「あと……あ、そうそう、下宿されるんでしたよね。特に寮などはないのですが、学校よりいくつか下宿先の紹介をさせていただいています。こちらのメモをお渡ししておきますので、よかったらぜひ伺ってださい。もちろん、ご自分で探された所でも構いませんよ」
「はい、わざわざありがとうございます」
「それでは、これから3年間、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
事務室での用事を終えて、また合格発表の場所に戻る。
おっと、リチャードさんの姿も入り口に見えた。もう到着していたようだ。
リチャードさんに手を振って、こちらに呼び寄せる。
「リチャードさん、受かってましたよー!」
「それは良かった。アニーくん。まずは夢の第一歩だね」
「それから、彼女たちがこれから一緒になる人達です!」
三人にリチャードさんを紹介する。
「こちら、リチャードさんと言って、私の保護者です」
「初めまして。リチャード・ロンと言います。故あってアニーくんたちを預かっています。君たちの事はアニーくんから聞いていますよ。これからアニーくんをよろしくお願いしますね」
軽く礼をするリチャードさん。
「こちらこそ、アニーさんにはこれから世話になると思う」
シャイラさんは、手のひらを併せる紅茶の国式でリチャードさんに挨拶した。
「はい、よろしくお願いします。あなたにも至高神のお恵みがありますように!」
マリアさんは普通にご挨拶。
「こちらこそよろしゅうに」
クリスも挨拶してから、少し考えるそぶりをした。
「リチャード・ロンさん……あー、もしかして、錬金術師の?」
「一応、そういう生業もしている」
「えーっ!ほなアニさん、あの錬金術師リチャードの秘蔵っ子やったんか!?」
急にこちらに矛先が向いてきたので、思わず間抜けな声を出してしまう。
「へ?クリスさん、リチャードさんの事知ってるの?」
「知らんわけあるかいな。この街随一の錬金術師やで?錬金術や魔術関連で、この人に出来なくて他の人に出来る事は無い。ほやから困ったら最後に駆け込む男版魔女みたいなお人や。もっとも、都会嫌いだか人嫌いだかで田舎に住んどるから、基本、連絡は冒険者ギルド経由しか取れんけどな。でまあ、その人嫌いが、最近小さな子供を、しかも片方は魔女らしき格好で連れて街に来とると評判でな。大人達の噂になっとったんやで?」
「へー、リチャードさんってそんなに有名人とは知らなかった……アレックス、知ってた?」
「いえ、リチャードさんがいろいろされている事は知っていましたが、街の評判までは」
リチャードさんも苦笑しながら言う。
「まあ、この子達には敢えて伝えていなかったからね。とはいえ私も、この子達まで巻き添えで噂になっていたとは知らなかったが。――クリスティンくんと言ったね。アニーくんはまあ、いろいろ尖った所もあるが、普通に友だちづきあいしてくれると嬉しい」
「そらもう、頼まれんでもこれから同級生やさかいな。大船に乗った気でおってや」
「はは、心強いな。これからもよろしく」
一段落ついたところで、シャイラさんが切り出してきた。
「ところで――アニーさんの例の件に取りかからないか?」
そうそう、その話題もあったんだ。入学が決まったからには、なるべく早く解決したいしね。
「ありがとう。ここで立ち話も何だし、中庭借りられるかどうか聞いてみますね!」
事務室に走って行って、またまた受付のお姉さんに頼みに行く。
「ちょっと合格者のみんなと打ち合わせがしたいので、中庭を使わせて頂いて構いませんか?」
「ええ、構いませんよ?」
快諾を頂いたので、再び皆の所へ。
「借りられたよー」
「ありがとう。では、そちらに向かうとするか」
と、シャイラさんが答え、皆で移動開始。
あ、部外者?のリチャードさんとアレックスも居るけど……まあいいか。怒られたら出て貰ったらいいや。
フライブルクの時間は、江戸時代と同じ不定時法を採用しています。
日の出から日の入りを昼、もう片方を夜として、各6等分して鐘が鳴らされます。昼一つが午前6時(日の出が午前6時の場合)、昼二つが午前8時……と言った具合ですね。
江戸時代では更に3~4分割されていますが、そこまでは進んでいません。
次回予告。
トラウマ解決法の提案会を中庭で行う事となった。シャイラさん、クリスさん、マリアさん、三者三様の解決方法を提案してくれる中、私はシャイラさんと立ち会って箭疾歩を披露する事となった。
次回「対処法をみんなで考えたい!」お楽しみに!