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95.黒幕見ゆ!

 こないだ風邪?を引いて一日寝倒してしまいました。皆様お気をつけをば。

 最近、少々淡々と進んでいる感があります。いい表現って難しいですね。


 次回は10月17日更新予定です。

 荷馬車は尾行を避けるかのように、曲がり角で護衛の人がしばらく立ち止まって様子を見てみたり、ぐるぐる同じ道を回ってみたり、色々小細工をしながら移動している。もっとも、上空から見ると一目瞭然、こちらもバレる心配はないから、のんびりと追跡を続けていた。



              ◇   ◇   ◇



 まだ到着するまで時間がありそうだ。私は荷馬車を追跡しながら、荷馬車襲撃に対する公安の行動をの情報の整理を始めていた。


 まず、公安が現れたタイミング。


 正直、都合が良すぎる気がする。盗賊ギルドの面々が荷馬車を襲撃したタイミングからわずか数分。そりゃまあ、剣戟の音などが鳴り響いていたんだったら、付近を巡回中の部隊がそれに気付いてやってくる事は、充分あり得る事。でも、2~3人ならともかく、いきなり8人なんてのが一塊になって巡回している事はないだろう。

 そもそも、シルフィの”静寂”で戦闘の音は全く外には漏れていなかった筈。なので、少なくとも、荷馬車を監視していたのは間違いない。

 ただ、公安が要石を重要視していたのであれば、監視して押収に入るのは当たり前な事なんだけど……私からの提案をことごとくガン無視していたこれまでの言動からすると、なんだか妙なんだよね。

 いきなり悔い改めて、勤労意欲が湧いて来ちゃったのかなぁ?


 それから、先ほどのナイトシェードだかアマリエだか言う女性の事。


 彼女がもし、私が闘った暗殺者だったとしたら、公安イコール悪魔崇拝教団って事になってしまう。

 そうだとすれば、彼らが私の提案をガン無視していたのも納得できる。教団の目標である魔神召喚を目標として、要石設置に邁進したいって事だからね。監視していたのも、単純に護衛していたって事だから、これも理由がつけられる。


 ただ、そうなると、シャイロックさんが設立に協力した理由が分からない。騙されているのか、何か協力する理由があるのか……


 つまりは、大まかに考えると、問題は、公安がシロかクロか、と言う事なんだろうけど……この荷馬車の到着場所で、それがはっきり分かりそうだ。

 行き先が公安本部や押収物管理倉庫などなら、珍しく公安がきちんと仕事をしたと言う事だし……もし、本来設置される場所に届けられたのであれば、完全に悪魔崇拝教団悪魔召喚の手助けを行っている事になるよね。

 まあ、泳がせて首魁を確保する、と言うのは作戦としてあり得るけれど、街そのものを賭け物にするような事は、普通はやらないだろう。なので、その場合は、公安イコール悪魔崇拝教団と考えて良さそうだ。


 ――とか考えているうちに、荷馬車はとある家の前でその動きを止めた。


「クロ……か。参ったわね、これは。シャイロックさんは知っているのかな?」


 その場所は私が想定した、最後の要石が設置されるであろう場所の、まさしく中央点だった。



              ◇   ◇   ◇



 荷馬車を民家の前で停止させ、公安の面々は早速荷下ろしの準備を始めたようだ。でも、なにしろ重さ数トンもありそうな代物なだけに、その移動には相当手間がかかりそうに見える。

 私は更に情報を収集すべく、屋根の上に潜みながら再びシルフィを召喚し、荷馬車の前で立ち話をしている指揮官らしき女性(ナイトシェード)を中心に、”聞き耳”の発動をお願いした。


「――それで、設営にはどの程度時間がかかりそう?」

「そうですね……何しろこの重量ですから、夜明けまでには」


 顎に手をやって、首を傾げながら返答する男性に対して、女性は鋭い声で指示を出した。


「夜明けでは遅すぎるわ。――そうね、夜六つ(午前4時)の鐘までには終わらせなさい」

「は、承知しました」

「ただし、怪我のないように。慌てず急いで正確に、よ?」


 敬礼する男性の肩をぽんと叩いて、女性は荷馬車の荷台の方に振り返った。


「わたしはこれから、総大主教猊下に状況の報告をしてきます。それじゃ、ね」


 と、言い残すと、女性は独り、どこかに向かって歩み始めた。


 私も彼女を追って、シルフィを帰還させた後に、”浮遊”と”重力子”を唱えて空からの追跡を再開する。高度は先ほどと同様に50mほどで。大きくゆっくりした動きの荷馬車相手はともかく、走る人間相手だと見失いかねない距離だけど、流石にこれ以上近づくと気付かれそうだ。

 丁度、目標の高度まで上がったところで、その女性は小走りになったかと思うと、軽くぴょんぴょんと壁を蹴って屋上まで上がってきた。


 これは間違いなく、デーモンコアの時に見た奴だ!


 やっぱり、彼女が暗殺者(ナイトシェード)で間違いなかったのかな。ともあれ、屋上から追跡していたら鉢合わせする所だった。危ない危ない。

 屋上に上がったナイトシェードは、懐からフード付きの黒い外套を取り出し、軍服の上から羽織っていた。そして顔を覆うマスクらしき物を取り出して装着する。間違いなく、この間の暗殺者だ……


 そしてナイトシェードは、周囲をきょろきょろと見回した。私から彼女までの距離は60mほど。空は分厚い雲に覆われていて月も見えていないし、向こうからこちらは見えないと思うけど……でも、私の方に視線をやったときに、彼女の動きが一瞬止まったような気がした。

 私は一瞬目を見開いたが、これ以上声を出したり動いたりして反応しないよう我慢する。


 ともあれ、ナイトシェードはすぐにかぶりを振って屋上を走り始めた。私から少し距離があるとは言え、瓦の音なんかまるでしない。空中からでなかったら、撒かれていたかも。



              ◇   ◇   ◇



 先ほどの荷馬車追跡とは違って、小さいし速度も早いし、撒かれたり発見されたりするリスクもあるため、私はかなり緊張感をもって追跡を続けていた。


 でもなんとか、その苦労が実ったようだ。高級住宅街の方に向かって進んでいたナイトシェードは、とある屋敷の上で歩みを止めたかと思うと、不意に地上に向けて飛び降りていった。

 ここが目的地なんだろうか? 誰の家かは分からないけど、シャイロックさん家なみに大きなお屋敷で、内側に中庭まで設えられているなんて、これはかなりの大物のお宅のようだ。ナイトシェードはその中庭に向けて飛び降りたようだった。


「なにか良い物が撮れるかな……?」


 私は鞄から一つの装飾品を取り出した。絹のリボンに直径5cmほどの水晶玉があしらわれたリボンブローチだ。私は取り出したそれを、水晶玉部分が見えるように右手で握りしめた。

 実はこの水晶玉部分、リチャードさんが作ったレコードクリスタルと呼ばれる、録画機能を持った魔法の道具。以前、暗殺者教団に狙われる恐れが出たときに、部屋に忍び込まれても分かるように、リチャードさんに譲って貰ったのだ。

 しばらくは警戒していたんだけど、ほとぼりが冷めた頃にアレックスに頼んでリボンブローチに改造して、こうやって活動の記録が残せるように使うようになっていた。


 少し待ってから中庭を見下ろすと、寝静まっているのか建物の内部は真っ暗だった。そして、中庭に面した開放式の廊下を、ナイトシェードがランタンを持って移動しているのが見えた。いつの間にか二階に上がっていたようだ。

 そして、一つの部屋の前で立ち止まり、彼女はその扉をノックする。


「総大主教猊下、お休みの所失礼します」


 少し時間を置いて、部屋の中の主は起きてきたらしく、二、三言葉をやりとりした後にナイトシェードは部屋の中に入っていった。

 私はその後を追って廊下に侵入し、レコードクリスタルを片手にその部屋の窓から中をそっとのぞき込んだ。



              ◇   ◇   ◇



 そこそこ広い寝室のように見える部屋は、ベッドの他に様々な調度品が並んでいた。成金とまでは行かないけど、余り趣味は良くなさそうだ。


 そして、ベッドにはナイトガウン姿の中年の男性が腰掛けていた。その前にナイトシェードが膝をついて報告の体勢に入っている。


「私を起こしてまでの報告とは、よほどの吉報かな」

「総大主教猊下に一刻も早くお知らせしたい事がございまして」

「ほう?」


 中年の男性は、それを聞いてナイトシェードの方に身を乗り出した。床に置かれたランプに照らされて、その顔が更にはっきりと見えてくる。


 うーん、この中年のおっさんの嫌らしい声、どこかで聞いた事あるんだよな……顔もなんとなく見覚えあるし。


「多少の妨害はありましたが、要石の搬入に成功しました。本日未明にも設置完了するかと」

「それは素晴らしい! よくやったぞ!」

「”魔神召喚計画”も予定通りに?」

「ああ、無論だ。これは寝てはおれんな」


 おっさんは勢いよく立ち上がった。それにより、背の高さと体格をはっきりと確認する事ができた。


「げ、ラシード公安部長だ」


 私はようやく、この中年男性の正体を思い出した。公安のトップに就任していたラシードとかいうおっさんだった。それが総大主教猊下?

 つまり……トップからして公安イコール悪魔崇拝教団、と言う事ぉ!?

 次回予告。


 証拠の撮影中、気付かれるハニーマスタード。中庭に飛び降りた彼女の周りに、公安らしからぬ暗殺者共が十重二十重に包囲するのだった。


 次回「証拠確保!?」お楽しみに!

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