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1.わたしは、魔法少女になりたい!(絵あり)

はじめまして!

小説系のサイト投稿は全くの未経験で、自分が書きたいものを書いてみました。

でも、読者の皆様が喜んでいただけると、本当に嬉しいです。

感想をいただけると、もっと嬉しいと思います!


※2018/9/13 魔法少女になりたい!から改題しました。

※2018/12/13 微調整しました。

※2018/12/27 次回予告を追加しました。

※2019/7/8 イラストを追加しました。

※2019/8/3 スマホフレンドリーに修正しました。

挿絵(By みてみん)


 ――燃えている。


 村が、家が、燃えている。

 暗闇の中、炎を背景に、駆け回る人たちの、そして倒れていく人たちの、いくつもの影が踊っている。


 私は赤ん坊を抱いた小さい女の子に手を引かれ、林の中を走っていた。


 ――ああ、これは夢だ。なぜかって?

 私はもう12歳。この夢の”私”は、目の前の小さい女の子より更に小さいのだから。


 女の子は赤ん坊を私に預け、一度ぎゅっと抱きしめてから、唇に人差し指を当て、黙っているような仕草を行った。

 そして、私たちを藪の中に押し込み、再び駆けだしていった。恐らく私たちをかばって、囮になろうとしているのだろう。しばらくの間、私と赤ん坊は藪の中で息を潜めているしかなかった。


 すると、目の前に人影が現れた。


 さっきの女の子……ではなく、明らかに大人の男の人だ。ニヤニヤ笑いながら何か言っているようだが、私の耳には聞こえない。その右手にはぎらりと光る長剣が握られている。


 私は腕の中の赤ん坊を男から見えないようにかばいながら、目をつぶって体を硬くするしかなかった。


 次の瞬間、背中側から右胸にかけて、ざっくりとした衝撃が突き込まれた。

 一瞬の空白の後、まるで火箸を突っ込まれるような、熱さと痛みが体中を走った。


 ――熱い、熱い、痛い、痛い!


 様々な感情がわき起こり、そして――はじけて消えた。



              ◇   ◇   ◇



「――――ッッ!!!」


 がばっと上半身を起こす。

 周りを見ると、白い漆喰の壁、木の床でできた見慣れた部屋だった。まだ空が白んできた時分。晩夏といえども、十分早朝の部類に入る。


 うん、まだ心臓がどきどき言っている。

 寝汗がひどい。寝間着から下着までドロドロだ。


 そう、私、アニー・フェイ。12歳。あの夢が本当の事だったとしても、少なくともその時に死んではいない。


 隣のベッドから、妹が目をこすりながら起き出してきた。この子は妹のアレックス・フェイ。私よりふたつ下。


姉様(ねえさま)、またいつもの夢ですか?」

「うん……ごめん、起こしちゃった?」

「いいですよ、もともと、そろそろ起きなければならない時間ですから」


 そして彼女はベッドサイドから眼鏡を取り出してかけ、のそのそと着替えを始めた。ちなみに白と黒を基調にしたメイド服。本人曰く、機能的でとても便利だそうだ。


「姉様、ものすごい寝汗ですよ。体を拭いてきた方がいいのでは?」

「そうね、せっかくだから軽く体を動かしてくるわ。 悪いけど、朝食の準備をお願い」

「分かりました。30分後には朝食ですから、それまでには出てきてくださいね」


 まずは着替えだ。汗まみれの寝間着を脱いで、水差しの水で手ぬぐいを濡らし、それで体を拭こう。冷たい水が、少し残っていた眠気を追い出していく。


 鏡を見ながら、冷たい水の感触に少し顔をしかめる。胸くらいまでの長さの栗色の髪。ちょっと癖っ毛。まだ少し顔に残っているそばかす。美人だとは言わないが、十人並みはクリアしていると信じたい。

 体形は……まあ、細い方だよね。素早さは自分でもたいした物だと思うけど、腕力や体力は、村の二つ三つ下の子供にも負けかねない勢いだし。


 正直、いろいろ発展途上中だと思う。つまり将来に期待があるという事!


 夢の中の感触が残っている右胸には、傷一つ残っていない。髪は、とりあえず頭の後ろにくるっとまとめておこう。三つ編みは時間がかかる。


 運動着に着替え、寝間着を洗濯かごに放り込む。

 炊事場から中庭に出て、石畳の上に立つ。


 まず、息を整えて両足を揃えて立ち、手も揃えて体の前に。

 腰を落としながら、両腕を前に挙げる。

 左足を前に出し、少し前進して下ろす。

 今度は右足を前に出しながら、下ろさずに、腰を上げる。


「はッ!」


 一気に踏み込み、両腕を曲げ、右肘を正面の敵に打ち付けるような形で振り上げる。踏み込んだ足から、どぉんといういい音が石畳に打ち付けられる。


 これは、套路と呼ばれる、東方の武術の型をおさらいする訓練法。


 あ、私は武術家じゃないよ。私は魔術師(ウィザード)……の、卵。多分。

 魔術師(ウィザード)というのは、強力な術式魔法を使えるのだけど、近づかれると滅法弱い、両極端な人。なので、超接近戦を得意とする武術を、自己防衛のために習っている。


 とか考えながら体を動かしているうち、一通りの型は終了。炊事場からトーストが焼けるいい香りもしてきた。寝室に戻ってもう一度体を拭いてから、今度は普通の服に着替えて食堂へ。


 テーブルにはライ麦パン、ハム、バターに紅茶と朝食の準備が出来ていた。そこにはもう、リチャードさんとアレックスが席に着いている。


「おはようございます、リチャードさん」

「やあ、おはよう、アニーくん」


 この人はこの館の主人、リチャード・ロンさん。私たち姉妹の保護者。

 私たちの村が襲撃を受けた後に駆けつけ、私たちを拾ってくれて、しかも教育まで受けさせてくれている奇特な人。


 ただ、生き残りは私たちだけで、夢に出てきた女の子――たぶんお姉ちゃん?――は、見つからなかったらしい。

 誘拐されたのだとすると、生きている可能性はあるけど……今はまだ、私たちにできる事は何も無い。でも、いつかきっと、ね。


「そういえば、アニーくんの初等学校が終わったそうだね」

「はい、先日が最後の授業でした」

「アニーくんは、これからどうしたいか希望はあるのかな?」

「わたしは……」


 私には目標がある。


 まずは一人前になって独立する事。

 そして、お姉ちゃんを探す旅に出る事。

 あともう一つ、目標というか、誓いもあったりする。


「わたしは、冒険者学校に入りたいです」

「――ふむ、フライブルクの冒険者学校、か」


 この村にほど近く――それでも歩いて1時間半くらいはかかるけど――フライブルクという、王様から自治を許された自由都市がある。

 領主の代わりに大商会の商会長達によって運営が行われているのだけれど、領主がいないという事は、騎士や兵士もいないわけで、最小限の防衛や警備を自前で行う必要があるということでもある。

 なので、王国で唯一、公営の冒険者ギルド及び付属学校が設立され、専業の軍人、傭兵、あるいは冒険者の育成を推進している。


 12歳以上で入学できて3年間在学し、卒業後は専業軍人として任官するか、数年間冒険者ギルドに所属して任務に従事するか、あるいは授業料を支払って独立する事になる。

 そう、すぐ独立する場合を除いては、なんと基本無料で学ぶ事ができるのだ。

 この国の人間であれば、フライブルク市民でなくても入学が認められている。


 当面の私の目標である冒険者で独り立ち、という事を考えると、この学校に行くのが一番近道のはず。

 それに、念願の都会暮らしもできるし。

 隣の家まで歩いて10分、月が出ていないと自分の手も見えない真っ暗闇、という事もない、城壁で囲まれた、街灯で照らされた石畳の都会!


「このまま、ここで独学で進めるという手もあると思うが、やはりフライブルクの冒険者学校がいいのかな」

「わたし自身は、冒険者として独り立ちしたいと考えています。ここもたくさんの本があって面白いのですが、冒険者としての基礎教育や、人のつながりというのも大事だと思うので」

「そこを突かれると弱いな。都会で生活するのはどうにも苦手でね」


 リチャードさん、頭を掻きながらひとしきり苦笑した後、真面目な顔に戻って椅子に座り直した。


「――いつか巣立つ日が来るのは分かっているが、私としては君たちをいつまでも家族だと思っているし、子供は大人のすねをかじって生きるものだからね」

「すみません、進学したとしても、まだもう少しかじらせていただく事になるかと思います」


 私の言葉に、リチャードさんは軽く頷いた。


「ともあれ、アニーくんの希望は分かった。今日、フライブルクに行った際に冒険者学校に寄って、受験方法について聞いてみるよ」

「あ、ありがとうございます!」


 私が勢いよく礼を言うと、リチャードさんは少し遠い目をした。


「それにしても……君たち姉妹と一緒に暮らすようになって8年か。最初はまだ、このテーブルから顔が出るくらいの大きさだったのに、子供というものは本当にあっと言う間に大きくなるものだね」


 そういうリチャードさんの見た目は、私が小さい頃から変わらず、いいとこ20代半ばくらいにしか見えない。

 本人曰く、一山当てた錬金術師という事らしいけど、不老長寿の薬でも作ったのかも……


「すみません、最初は本当に、いろいろご迷惑をおかけしたようで」

「なに、結果、今のようにいい子に育っているんだから、迷惑だなんて思っていないよ」


 引き取られた当初、事件の精神的ダメージのためか、私は何に対しても無反応で、言葉も喋らない子供になってしまっていたそうだ。

 本を読み聞かせてみたり、おもちゃで一緒に遊ぼうとしてみたり、外に連れ出してみたり、いろいろ試してくださったらしい。

 最終的には、この家の図書室にあった、とある本を見せたところ、それに対して反応を示すようになり、それをきっかけに、いろいろ子供らしい反応を取り戻すようになったのだとか。


 ――私もその頃の事はなんとなく覚えている。


 すべてが灰色で、音もない世界だった。

 ただそこに、一つだけ色が付いて見えたものがあった。


 絵本だ。


 知らない国の文字だったけれども、小さな女の子が可愛い服を着た魔法少女に変身して、人々を助ける話のようだった。


 そう、魔法少女。


 今なら分かるけど、この世界に魔法少女なんてものは存在していない。

 変身するような魔法も存在しない。

 箒に乗って空を飛ぶ魔法も存在していない。


 それでもいい。


 私は、私が知っている限りの手段を使って、この、人々を助ける魔法少女という存在になりたい――そうすれば、お姉ちゃんも見つけられるかも知れない。


 それが、小さい頃からの私の誓いとなっていた。


「さて、今日は少し早めに出るとするか。アレックス君は初等学校だったかな」

「はい、私はまだ2年、残っておりますので。姉様、洗い物を手伝ってくれますか?」

「はいはい、今の身分は家事手伝いですからね。ハウスキーパー様のおっしゃる通りに」


 さあ、今日も一日が始まる!

 掛け値なしの初投稿です。よろしくお願いします。

 武術についてはフィクションという事でご理解いただければ幸いです。



 次回予告。


 リチャードさんは街に、アレックスは初等学校へと外出していった。独りになった私は、中庭で日課の軽業や魔法の練習に励む事にした。

 ちょっとした失敗はしてしまったけど、まあ、ご愛敬?


 次回「とどめの、暴風雪(ブリザード)!」お楽しみに!

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