第40話 ナンパではないんですが。
「よかったら泊って行ったらどう?」
「え?」
「ほかにも本はたくさんあるわ。よかったらほかの魔法についても見て行ったらどうかしら?」
もちろん興味はある。
けどそうなるとずっと居座っちゃいそうだなあ。
「いいのか?今までの研究を見せても。」
「構わないわ。ずっと知られないよりはいいんじゃないかしら?」
やらかさなかったらきっと有名人だったぞ。
もったいないことをしたなあ。
「どんな本があるんだ?」
「基本表紙で色分けしているわ。目に見える魔法で色があったらその色の本。例えば火だとこんなふうな本だわ。」
表紙は真っ赤な紙が貼られていた。
「へぇー。色で分けているのか。」
「そうよ。そうしないと私でもまとめられないからね。あとは上の番号が書いた順番。これは208冊目ね。」
「そんなにあるのか?」
「ええ。赤色って魔法で多いからね。」
そうなると俺の魔法の色の本もあるのかな?
「この水色の本には氷の魔法があるのか?」
「あるけど、本当に珍しいわね。固有魔法を持っているのかしら?」
「そうだよ。」
返事が適当になっちゃった。
すぐにでも読みたい。
「もしかしたらどの魔法も使えるのかもね。」
「そうだよ。」
「…ユウ。」
「え?」
「はあ。もういいわ。この際だから言っちゃってもいいわよね?」
「なにを?」
「すぐ集中するその癖、なおしたほうがいいわよ。」
え?何かやらかしちゃった?
「青の魔女さん、私たちをどのぐらいに思っているのかしら?」
「もちろん私以上、私たちほかの魔女が集まって勝てるかどうかぐらいに思っているわ。」
「その話が事実、と言ったらどうかしら?」
「…予想通り、と言いたいけど信じきれないわ。」
「そうやれば信じてもらえるかしら?」
「そうね、人類は五大魔法を全部使えないと言われているわ。それと固有魔法を複数使えたら信じられるわ。」
「そう。それぐらいならすぐできるわ。」
「!?」
ティラは五大魔法のすべてを小さめに発動させた。
それ以外にも俺がよく使う氷、それに自然の魔法、花をつくった。
「これで信じてもらえるかしら?」
「…ええ。夢じゃない限りね。」
「それって秘密にしていたことよね?」
「そうよ。ユウが口走らなかったらね。」
すみません。
本当にすみません。
目のまえに読みたい本があって他が耳に入りませんでした。
「なら私も一つ秘密を言えばフェアかしら?」
「まあフェアというか。」
暴露しただけなんだけど。
それでも教えてくれるなら知りたいな。
「私の名前よ。名前はセシルリア・A・ネルディルよ。」
「ん?その名前、聞いたことあるな。」
「ええ、よく本に載っているわ。」
えーっとなんだっけ?
たしか何冊も本があったはずなんだけど。
「たしか昔の姫様じゃなかったかしら?」
「そうよ。コールギアの昔の姫よ。懐かしいわ。」
ええ!
なんで姫様がこんな魔女に?
「なんでかというと父上、王様に気味悪がられたからよ。珍しい話ではないわ。」
「それは、つらかっただろうな。」
「あなたぐらいよ。そういってくれるのは。」
あ、初めて心から笑ったところを見た気がする。
「笑ってる方がいいよ。そっちの方が可愛いし。」
「えっ!?」
驚いた顔も可愛い。
顔も少し赤い。
「ユウ、ちょっとこっちに来て。」
「なんで?」
「とぼけているのかしら?私は貴方の何かしらね?」
…嫁さんの前で言ったから?
けっしてナンパとかじゃないんだけど。
ただ!本音を言っただけなのに!
「ゆっくり聞いてあげるからね?」
「リン!助けて!」
「…お兄ちゃんのばーか。」
もう助からない。
ソーラとスウはいつの間にか離れていた。
いろいろと怒られること3時間。
ずっと正座で10分ぐらい横になっていた。
―※余談注意※―
いつも通り夜中と朝の間です。
土日のほうが遅くなる...。




