第30話 嫁さんが強いんですが。
「それじゃあ、いくわよ!」
もう隠さないと分かってるからできる魔法。
豪快だな。
ティラがよく使う魔法は樹木。
こっちだと固有魔法になるんじゃないか?
「ちなみにだけど本来、自然魔法は精霊や妖精が使う魔法なんだよ。これは長く生きるものかお偉いさんぐらいしか知らないことだけどね。」
初耳だ。
一応妖精の存在は知っていたけど。
「精霊もいるんですか?」
「うん。妖精と違って光の球みたいな存在だけど。精霊によっては人の姿をするよ。」
「もしかしてそれも?」
「そう。普通は知らない。だから本にも載っていなかったんだ。」
本にも載っていない存在か。
また気になることができたな。
っと、今はティラだ。
*
~ティラ サイド~
どうしましょう。
せっかく久しぶりにこの魔法を使えるのよね。
うーん、力を出したい。
でもそうするとすぐ終わっちゃうわ。
せっかくだし、どのぐらいの強さか調べながら戦いましょうか。
「まず試しにこれはどうかしら?」
地面から太い蔓が飛び出ると龍に向かって伸びていった。
蔓は龍に絡みつき、動きを止めた。
「あら?この程度なのかしら?」
「グ…グガ…ガアアァァ!!」
龍は唸ると体に力を込めた。
絡みついていた蔓はブチブチと切れていった。
「そうこなくては!」
ならば量を増やしてみるのは?
さっきの倍以上の蔓で再度拘束した。
龍はまた力を込めたが今回は引きちぎれない。
「ガアアアアァアァ!!!」
「!?」
これは驚いたわ。
急に火を噴き、蔓を焼き払った。
さすがに自分の火ではダメージを負わないわね。
鱗も頑丈そうだし。
さすが龍わね。
少し、侮っていたわ。
龍は動けるようになると空へ飛んだ。
もう捕まらないようにするためかしら?
いや、違うわね。
なにか魔法を発動させようとしているわ。
「グワアアアアァァァァァ!!!」
口から今度は火と雷が混じった魔法を飛ばしてきた。
人間の魔法から考えるとこの龍は火と雷を使うのね。
まあ関係ないわ。
「あたりもしないわよ。【神樹の通り道】。」
大きいリースみたいな空間魔法と自然魔法の合わせ技。
私と龍、それと龍の上に2個つくり繋げる。
もちろん魔法は空間を通して龍に直撃した。
ズシンと大きな音と共に龍は地面に落ちていった。
「さすがにこの魔法はあなたでも防げなかったわね。」
久しぶりに楽しめたわね。
「あなたはここで退治しとかないといけないらしいわ。かわいそうだけど、ごめんね。」
せめても楽に逝けるようにしてあげましょう。
*
~ユウ サイド~
ティラは龍に止めを刺した。
苦痛なくしようとしたのか首を落として。
うーん、グロいなあ。
「お疲れ、ティラ。」
「ええ。ありがとう。久しぶりに存分に魔法を使えたわ。」
「羨ましいよ。」
「さて。せっかくだしこの龍の素材を取って置こうか。高く売れるし、武器とか防具にもできるよ。」
ゴウディさんからの提案。
ひょっとしたらいい仕事したかもしれない。
って、訓練所の試験のはずなんだけど。
「気が進まないけどさっさと剥いで探しに戻ろうか。」
「そうですね。」
うへえ。
首を落としたから血が尋常じゃない。
近づいたらなんか落ちてきそう。
「なにか落ちてきませんでした?」
ソーラ。俺、今それはないでほしいと思ったんだ。
戦いたかったけどグロいのは嫌なんだ。
「これって。」
ソーラは問答無用で見ていた。
俺も気になるし見たくなってきたし。
「ん?ホワイトヘルファングじゃないのか?」
血が付いていて白い部分が減っているけどそれでも特徴的な白い毛が見えた。
―※余談注意※―
書き終わってから思ったんですが。
龍、自滅してるんじゃね?




