第1話 異世界に転移されたんですが。
光が消えたときには周りにあったはずの木々はなかった。
一緒に光に包まれたはずの木像がある家も消えていた。
「これは、転移魔法なのか?それに、ここはどこだ?」
「悠くん!これは一体!」
一体と言われたって俺もわからない。
「たぶん転移魔法でどこかに飛ばされたと思う。」
どうやら飛ばされたのは建物ごとではなく俺たちだけなのか。
人だけの転移は難しいからできる者は限られているはずだ。
となると、俺たちと同等、もしくはそれ以上に魔法を使える者がいるかもしれない。
ともかく周りを見てみた。
森ではなく草原で背丈より高い草がちらほら生えている場所だった。
すこし周りが見にくいから移動がし辛い。
さて、どうしたもんか。
おそらく罠で飛ばされたんだから気をつけなきゃな。
「とりあえず、何があるかわからないから気を――」
「ガアアァァァ!!」
今度はなんなんだ!
どこかわからない場所に飛ばされた次はなんだよ!
出てきたのは黒い犬だった。
「この子は犬?それにしては狂暴そうで、でかいねー。」
確かにでかいな。
俺より大きいぐらいだ。
でかすぎるレベルだぞ。
それとさっきからこっちを見てよだれを垂らしてる。
腹でも減っているのか?
「それにしても今までこんな犬みたことないぞ?行ったことない国なんてたぶんないし、どういうことだ?」
見たことないでっかい犬をみんなして見ていた。
でも近寄りたくないなあ。
モフモフがあるけど、よだれが汚い。
その時、
「何突っ立っているの!危ないわよ!!」
今度は人の声が聞こえた。
声は犬の奥のほうから聞こえた。
そっちのほうを向いたときに犬が吹っ飛ばされた。
すげえな。
俺よりでかい犬が吹っ飛ぶ姿、唖然するな。
ついつい飛んで行ったほうまで見続けちゃったよ。
まったく、いきなり転移して、でかい犬がでて、そして出てきた犬が吹っ飛ぶ。
これが夢だったらいいのになあ。
ほっぺをつねっても覚めなかったけど。
「大丈夫?いくら何でも魔獣を前にしてぼーっとしているのはよくないわよ。食べてくださいと言っているもんだわ。」
声のほうを向いたら1人の女性と2人の男性がいた。
男の一人がハンマーを改造したようなものを持っていた。
それで飛ばしたのかな。すごい力だな。
「すげえ力だなあ。」
「何か言ったか?とにかく今はあの魔獣を倒すことを考えろ!」
さっきは俺たちを食べようとしたらしいな。
危険だから倒すのに協力したほうがいいか。
「わかった!」
犬のほうを見ると、いつの間にか起き上がって警戒をしていた。
俺はさっきのハンマーをイメージした。
「これで倒せるでしょ。ほらよっと!」
俺は魔法を発動させ、氷のハンマーを作った。
そしてさっきのように犬を吹っ飛ばした。
しかし犬はさっきと同じように起き上がった。
「あれ?効いてない?」
「あの魔獣は打撃に強いぞ!」
なるほど。だからすぐ起き上がるわけだ。
打撃がだめなら貫通する感じでいい、かな?
「ならこれだ!」
次は氷の槍を作り、大きな犬に向かって飛ばした。
見事貫通して少し呻いたが、すぐ動かなくなった。
さっきの3人はぽかーんとした顔で魔獣の犬を見ていた。
とりあえずさっきは助けてくれたみたいだから礼を言わないと。
「さっきは助けてくれてありがとう。」
「え、ええ。私はメラン・フィナール。メランでいいわ。こっちのハンマーを持っているのはドラウ・アルフレッド、こっちの剣を持っているのはスレイ・ビースだわ。」
名前的に元居た場所ではないだろうな。
そういえば服も違うな。
ドラウさんとスレイさんは鎧を付けていたし、メランさんはどこかの部族みたいな服だった。
昔に戻った感じかな?
それとさっきから気になっていたことがあるんだが。
「その耳、もしかしてエルフ?」
「ええ、そうよ。はじめてかしら?」
よく本とかに書かれていたな。
耳が長いという特徴があるぐらいしかしらないけど。
実在するとは思わなかったけど実際にいるんだな。
いや、おかしい。そんなはずはない。
犬の時もそうだけど、ところどころここは変だぞ。
もしかすると!
「いきなりで悪いけど、【平和の国】という国をしっている?」
「いいえ、今初めて聞いたわ。」
なるほど。そういうことか。
俺たちがいた平和の国をしらない人なんていないと言われるぐらいだった。
どうやら美咲達も気づいたらしい。
俺たちはどこか別の国に飛ばされたとかいうレベルではなく、別の世界に飛ばされていた。
「ところで、あなたたちの名前は?」
忘れてた。まだ名乗っていなかったな。
とりあえずこっちも名乗らないと。
しかし、向こうで使ってた名前は使わないほうがいいのかな?
こっちに合わせる感じに変えておいたほうがいいだろう。
えーっと、そんなこと言ってもすぐ思いつかないな。
なにかないか?最近読んだ本になにか、なかったっけか?
あ!一ついいのがあったな!
「俺はユウ。ユウ・ミグラトルだ。」
[悠くん。その名前はなんなの?]
頭の中で美咲の声が聞こえた。
鈴は面白がりながら笑ってるし、涼音は笑いを堪えてるのが丸わかり。
智輝は笑っていないと思ったけど口元は笑っていた。
たしかに名前を変えたけどそこまで笑わないでくれよ。
段々と恥ずかしくなってくるから辛い。
ちなみに念話は声とは違い、話す相手を絞って頭の中で話すからほかの人に聞かれる心配はない。
作戦とか伝えるときにとても便利な魔法の一つだ。
とりあえず名前を変えた説明をしよう。
[今まで使ってた名前はこっちでは珍しく見えるかもしれない。とりあえず周りに合わせる感じにしておこうと思う。みんなも何か別の名前を考えて!]
[わかった!]
4人はすこし考えていたけど美咲が返事をしたら凛たちも返事をした。
みんな、なんでそんなにすぐ思いつくの?
もしかしてあらかじめ決めていたんじゃないのか?
返事の順番ということで美咲から始まった。
「私はティラ・ミグラトルと言います。ユウの妻です。」
いい笑顔とすごい圧で言ったな。
相変わらずほかの女性に対しては怖いな。
そうか。ファーストネームを変えるだけでいいからな。
どおりで早いわけだ。
「わたしはリン・ミグラトル。ユウの妹だよ。よろしくねー。」
「僕はソーラ・ミグラトル。ティラの弟です。」
「スウ・ミグラトル。ソーラとは双子。よろしく。」
智輝も涼音も同じファミリーネームにしていた。
まあ義理と言っても家族だ。
今では本当の家族に思っているしな。
自己紹介も終わったことだし、どうしよう?
まだなにもわからないから聞きたいこともあるんだけど。
ところでさっきからドラウさんが後ろを気にしているな。
なにかまだあるのか?
そしたらドラウさんが話しかけてきた。
「いきなりで申し訳ないが、ユウ殿達の中で回復魔法を使える者はいないだろうか。仲間の一人がけがをしてしまって助けてほしいのだ。我々の回復魔法だと手に負えなくて困っている。」
それって一大事じゃないか!
「早く行こう!み...ティラ。治せそうか?」
「診てみないと分からないけど、とりあえず行きましょう。」
[あとユウ。名前、気を付けてね。]
可愛く言っていたけど、少し怖い。それと呼び捨てに代わっていたな。
可愛い女の子にはとげがあるとはまさにこのことかな?
―※余談注意※―
昨晩すごく寒かったですね。
暑いからの寒いは相当つらいです。
風邪ひかないようにしないと...。