国家特級拷問士リョナ子さん。番外編2。
前の番外編に追加しようとしたら無理そうなので、個別に。
後でまとめて、本編に組み込むかもです。
はい、こんにちは。
リョナ子です。
この前まで半袖を着ていたというのに、急に寒くなってきたね。
あぁ、僕は寒いのは嫌いだよ、だけど、雪を見るのは好きなのさ。
さて、今回の罪人は。
コンクリートに囲まれた灰色の部屋。
僕は、出勤すると、まず業務内容が書かれている書類を確認する。
「ふむふむ、高速道路で、なになに、散々煽って、停車させて、ほう、直後に事故か・・・・・・なるほどね」
加害者は、高速道路のパーキング内でのトラブルが原因で、その後、被害者の車を猛スピードで追いかけ、ハイビームで散々煽った後、こともあろうか追い越し車線で、車を停車させた。
車から降りてきた加害者の男は、家族連れだった被害者の父親を車から降ろして、胸ぐらを掴むなどして恫喝。直後、後ろからトラックが追突。父親と一緒に降りていた母親が死亡、中にいた他の家族も怪我。そして、この加害者自身は無傷であった。
当初この男の罪状は、過失運転致死傷罪でレベルは2で収まるかと思われた。
しかし、高速道路の追い越し車線で無理矢理停車させたという、未必の故意。さらに、男は他にも同じような行為を繰り返していたこと。それらが複合してレベルは4まで引き上げられた。
「さすがに、殺人罪までは適用されなかったか・・・・・・」
僕に言わせれば、これは事故じゃなく事件だよ。
残された家族を思うとなんともやりきれないね。
「罪人、入ります」
「・・・・・・入れて」
そうこう考えてると、今回の罪人が運ばれてきた。
頭の横にずらしていた猫ニャンのお面を本来の位置に戻して。
「寝かして手足を固定お願い」
一緒に入ってきた職員に指示をする。
ベットに寝かせ、腕は斜め上に、足も同じように固定した。
「さて、始めようか」
今回は、レベルは4。
つまり、死は与えられない。
でも。
ときに、死んだ方がましと思える事もある。
「しかし、なんでこんな事したかね」
僕は、たまに準備しながら罪人達にこんな事を聞くことがある。
純粋に、理由が知りたいと思うのだ。
だって、僕にはここに運ばれてくる人達の思考が理解できないんだもん。
本来なら、トラブルにならない事も、一方の頭がおかしいと発展しちゃうんだな。
「・・・・・・注意されたから、頭にきたけん。こっちも人間やけん」
男のふてくされたような言葉を、耳にいれながらリョナ子棒(ただの鉄の棒)を握る。
そうか、やっぱり、僕には分かりそうにないや。
もう、聞くことはないね。
「いや、君は人じゃない。人でなしだ」
腕を振り上げる。
直後、リョナ子棒を勢いよく振り下ろす。
男の口元にめり込んだ。
「あがああああああああああああああああ」
前歯が上下ともに斜めにへこみ、口から血があふれ出る。
「君はもう運転しない方がいい」
となると、ハンドルを握る手、アクセルを踏む足はいらないね。
殺すわけにはいかないから、手首と手足を慎重に切り取るか。
道具を鉈に切り替える。
「や、やめろ・・・・・・」
男はそれを見て、震えだした。
「大丈夫だよ、僕は特級だから、一回で終わる」
前は、なかなか切れなくて何回も振り下ろしたっけ。
両手首を切り落とし、足首も切り離し。
別れた肉の塊が、床に無造作に落ちた。
「ああぁあがぁああああ、いあだああああ、ああぁあああぁぁああああっ」
その最中、男はひたすら泣き叫んでいた。
「さて、これで終わりかな・・・・・・」
お面越しに男を見下ろすと、そう呟いた。
心なしか、男の顔がほんの僅かだけ安堵したように見える。
「・・・・・・あ」
一旦、降ろした手を、顎に置いた。
何かを思いだしたかのように、考えているかのように。
我ながら、少々わざと臭いね。
「あっちゃー、今は、あれだよ、技術の進歩が凄いから、こんなもんじゃ運転できちゃうよ」
背中を向けて、道具箱をゴソゴソと漁る。
振り向いて。
「え・・・・・・?」
涙を流し、それを見た男が変な声を上げた。
僕の手には、杭と金槌。
「これなら、もう・・・・・・ね?」
杭の先端を、男の眼球前に。
あてがって。
「やああ、すいま、せん、ごめんな、あ、やめ、やめめええええ」
大丈夫、僕は特級だから。
ちゃんと、深さの加減はできる。
それに、謝るのは僕にではないよ。
執行が済んだ罪人は職員に運ばれて、すぐに治療されるだろう。
一仕事終えて、僕はお気に入りのカップにコーヒーを注ぐ。
口にして。
温かいコーヒーがとても美味しい。
これなら、寒いのも。
案外悪くない。
もしよろしければ本編も見て頂けると幸いです。