3、私の両親は偉い人(過去形)
「ではバルヒェット様、また近いうちに。」
「ええ、また。」
バタン、扉が閉まり、先ほどまで家の中にいた来客は帰っていった。
3歳ともなると会話もなんとなくできるようになり、自分の気になることなんかも両親に聞けるようになった。
「おかーさん、いまのひとだれ?」
「あらアメリア、良い子にしてて偉かったわね!今の人はね、お母さんの以前の職場の人よ」
「まえのおしごと?」
頭をよしよしと撫で付けられて心地よさに目を細めつつ、また聞いた。これだけ聞いては怪しまれるかなとも思ったが、小さい子はなんでなんでとなんでも聞くので大丈夫だろう。
「うーんとね、お母さんとお父さん、アメリアが生まれる前は王都っていうところにいてね、お父さんは騎士様で、お母さんはお城の魔法使いだったの。それで、仕事を辞めた後もああやってお城の人がたまに私たちにアドバイスをもらいにくるのよ」
なんということだ。私の母は偉い人だったようだ。退職後も助言を求めて人が来るとは・・・しかもお城、ということはいわゆる宮廷魔術師的な何かでは!?嘘でしょ!?このどっか抜けてるようなお母さんが!?
「ただいまー。ん?2人でなんの話してるんだ?」
ちょうどそこへ狩りから帰ってきた父が顔を出した。ひょいと慣れた手つきで私を抱き上げてただいま〜とほっぺたスリスリしてきた。一つ言わせて、ヒゲが痛い。
「んんおとうさん、いたいよー」
「えっ・・・す、すまん・・・」
心底ショックを受けた表情されましても・・・私のほっぺたが擦り下ろされちゃうよ・・・
「ね、おとうさん、きしさまだったんでしょ?つよかったの??」
「今ほら、フィリアが来ていたでしょ?それで私たちの仕事が気になったみたいなのよ」
自分のいないところで自分の話になっていたのが嬉しかったらしく父は満面の笑みで、持っていた道具を下ろした。
「ん、そうかそうか!!父さんが強かったのかだよな?ふふん、実は父さんなぁすっごく強かったんだぞ!」
「うそっぽーい」
「えっアメリアちゃん!?父さんのこと嫌いか!?」
しまった、いつも娘にでろでろのデレデレな姿からは想像がつかなくてつい即答してしまった。
「ほんとだぞ!父さんは騎士の中でも一番強かったんだぞ!」
「い、いちばん!?」
一番という言葉に思わず大きな声が出てしまった。だって、つまりそれって騎士団長とかそのレベルってことだよね?お母さんが宮廷魔術師でお父さんが騎士団長・・・私ってすごい人たちの子供だったんだな・・・。
そんな重要な役職の人が結婚して子供ができるまではいいけど仕事を辞めてしまったとなれば、確かに大変なことになりそうだし、あの後輩らしい王宮の人がうちまでわざわざ助言をもらいにくるのも仕方ないことだよね。
「お父さんったらとってもかっこよかったのよ〜!」
「お母さんだって、今もだが綺麗でなー仕事中なんか凛々しくて騎士の中でも噂の人だったんだぞ!」
「あら、噂の人だったのはあなたの方よ!魔術師の女性の間では力強い瞳に射抜かれたい、なんていう子も・・・」
「いやいやいや、騎士の中にはお前に魔法でいじめられたい、しもべにしてほしいなんていうやつも・・・」
惚気は良いけどそんな色めき立ってる王宮大丈夫なの