1、転生した私
初めまして、月見 瑠奈と申します。
小説初挑戦、そして初連載ですので、拙い文章になりますがどうぞよろしくお願いします。
死というのは突然なのだと、身を以て知った。
高校2年生のある日、私は死んだ。
放課後、何も考えられず、2年間ほぼ毎日通った通学路なのにどこを歩いているのかもわからないままフラフラとおぼつかない足取りで歩く。その脳内では、親友との思い出がぐるぐると巡っていた。
思い出といっても最近のもので、決して良いものではない。私の親友はいじめられていたのだ。
最初こそ私がいるよ!私たち親友だよ!なんて青い会話もしたものだけど、親友へのいじめがヒートアップしていくにつれて、巻き込まれることを危惧した私は少しずつ、けれど確実に親友との距離を開けていき、最近ではもう目を合わせることもしていなかった。
私の行動は責められるべきものだ。
けれど、誰も責めてなんかこない。
だって怖かった。いつ標的が私になるのか、それを考えると怖くてしょうがなかったんだ。そして友人たちは仕方ない、あなたは悪くないよと言うんだ。日々言い聞かせるように自分の頭の中で仕方ないと繰り返すも、その行為すら私を追い詰めているような気がしてしまい、寝不足になり体調は悪化したが、自分の行為が悪であると考えたくなかった。だからこの時も悪くない仕方ないと言い聞かせながら帰路についていた。そう、私は悪くない、悪くないんだ、仕方ないんだ、悪く–––
横断歩道を渡ろうとして左から迫ってきた眩しい光によって、私は最悪の思考を抱えたままその人生を終えた。
このまま無に帰るのかなと思われた私は、男性と女性の声に引き上げられるようにして意識を浮上させた。
なんだか光が目に痛い・・・なんだろう、ここはどこなのかな・・・病院?
ゆっくりと導かれるように瞼をあげる。そして見えたのは––––––––何も見えない!?
光が眩しいとかそういうのはわかるのだけど、なんというのか・・・視界が濃霧に遮られているような、ぼんやりどころかモヤモヤして何も見えない状態。なんだこれ困る、事故の影響で視力が落ちたとかそういうやつかな?
とりあえず、誰か呼ぼう、と考えて声を出したのだが。
「ふぎゃぁ」
赤ん坊の泣き声?
どこかに赤ん坊でもいるのだろうかと思いつつさらに声を出し続けたのだけど、いつまでたっても聞き慣れた自分の声は聞こえないまま、赤ん坊の声だけが響き渡る。
「ふぎゃああああふぎゃ、うぎゃあああ」
「あらあら、さっきまで良い子で寝てたのに、この子ったら急にどうしたのかしら?」
「抱っこしてくれ、って泣いてるんじゃないか?」
これは、まさか。
この赤ん坊の声こそが、私の声・・・?
「ぎゃあああああん(えええええええ!?)」
「よしよし、お母さんはここですよ〜」
首の後ろとお尻あたりに温もりを感じたと思えば、そのまま浮遊感が私を襲う。どうやら抱き上げられたようだ。
赤ん坊の目とはどうやらど近眼らしい。抱き上げられて顔が近づいたからか、私を抱き上げる人の顔がはっきりと、とはいかないが見えた。
「あう(ナニコレ)」
「やっぱり抱っこして欲しかったんだな!」
「ふふ、甘えんぼなのね」
微笑む美しい女性の隣には、キリッとした表情の男性。ううん、この2人が私の両親、ということで良いのかな?
女性も男性も整った顔をしていたが、それよりも気になるのはその髪色や瞳の色だった。
女性の髪は透き通るような水色に、エメラルドのように輝く瞳。男性は燃え上がるような赤い髪と瞳をしていた。
待て待て待て、ここはどこの国なの?日本じゃないの?日本じゃなくてもこんな奇抜な髪と瞳見たことないぞ!?
人工的なやつ?染めたりカラコン入れたり??いや、そもそも私は死んだんじゃなかった?そう、私は、死ん、
「・・・(そっか、私)」
私、死んだんだ。
痛みなんか覚えていない。覚えているのは横から迫る眩しい光だけ・・・それくらい一瞬の出来事だったということだろう。一通り混乱したら、今度は冷静になってきてしまった。
私の両親らしき2人は静かになった私を見て微笑むと、またそっと、どこか(おそらくベビーベッドのようなものだろう)に置いたようだった。
人の気配が消えて、静寂が空間を支配する。
死ぬ前のことも思い出した。私は、親友を裏切った・・・見捨てたのだ。
だからと言って、死ななければならないほど私は悪いことをしたのだろうか。
そして、そんな私にもう一度生きろというのだろうか、新しい人生を。なんのために?
幸い、考える時間だけは腐るほどにありそうだ。
赤ん坊の体だからだろうか、先ほどまで眠っていたはずが再び襲ってきた眠気に逆らうことができず、私は思考を止めて瞳を閉じ、ぼやける世界をシャットアウトした。