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残酷な世界のいたずら。  作者: 紗厘
第二章 ~始まりの夜~
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楽しい調理場

調理場では、セリアとコンロンがヴァレリにクッキーの焼き方を教わっていた。


「そうです、厚さが均等になるように伸ばしてください」


 ヴァレリは実践しながら二人に教えている。


「これくらいでいいかしら」


 セリアは自分で伸ばした生地をヴァレリに見せる。


「いくつか種類がありますが、目標より少し厚過ぎかもしれないです」


「……そう」


「頑張ってください」


 落ち込むセリアを励ます。

 平均的な厚さとされる5㎜で作っている。

 一方コンロンはかなり薄く伸ばしていた。

 それに気づきヴァレリが急いで止める。


「コンロン様、ダメではないですが薄すぎます」


 コンロンがヴァレリが伸ばしている生地を見て、黙ったまま伸ばし直す。

 本気で作っているらしい。


 セリアとコンロンが何故ここまで一生懸命かと言うと、三日後がクラパムの誕生日だからだ。

 セリアが、ヴァレリにプレゼントで何がいいかと聞き、ヴァレリが案の一つにクッキーと言ったことが事の始まりだ。


「本番は三日後なんですから、ゆっくり覚えたらいいと思いますよ」


 ヴァレリは二人に声を掛けるが、届いていない。

 ヴァレリは、乾いた笑いを浮かべて、ため息をつく。


 ヴァレリがしゃがんで作業台の下の戸を開ける。

 そこから奥にある、クッキーに使える型抜きを取り出した。

 腰を上げるとコンロンが目を輝かせながら型抜きを見ている。


「ヴァレリ、これは何だ」


「型抜きっていって、小麦粉を少しつけて、生地に抑えつける。するとその形のクッキーが出来るものです」


 コンロンは早くやりたそうにしていた。

セリアの方を見ると、


「ここに茜が居なくて良かった気がする」


「そうですね」


 そんなことを話していると、コンロンがヴァレリを呼んでいる。


「なぁ、生地の厚さこのくらいでいいか?」


 と言われ、ヴァレリが確認する。


「いいと思います。型抜きしますか」


「うん!」


 コンロンは嬉しそうに返事を返す。


 と、そこに茜とエリーがやってきた。


「どーしたんですか?こんなところで」


 茜が元気がなさそうにしていた。


「クラパムの誕生日にうまくクッキーを作れるように練習してるのよ、てか茜どうしたの」


「掃除サボってたら時和に見つかって四時間もさせられました。しかも『料理の手伝いならできるだろう、僕の代わりに行って、茜が片づけられなかった分は僕とリアムがやるから』って追い出されて料理できないのに……」


「自業自得でしょ、さあ料理頑張って」


セリアは、心配はするが興味が無かった。

するとコンロンが珍しく茜を心配する。


「茜は今日頑張った。これ焼けたら茜に半分あげる」


 茜の表情が一気に変わる。


「いんですか。コンロン様どうしたんですか。ついに私に敬意を払う気になりましたか」


 茜は正直に喜べなかったという事もあるが、実際何か疑っていた。

 コンロンは、ため息を吐き、


「もういい、茜にだけあげない」


 茜は顔を青ざめる


「あぁ……、ごめなさい、ごめんなさい、だからください、お願いします」


 相当疲れているようだ。


 見かねてヴァレリが指示を出す。


「エリー、スープを作って、なんでもいいから」


 エリーは頷き、鍋のあるほうへと歩いて行った。


「茜は私の手伝いね、今日はハンバーガーにするから」


 茜は『ハンバーガー』という単語に反応する。


「分かった、なんでも手伝う」


 と、ヴァレリの隣へ行く。


「セリア様、型抜き出来たら呼んでください、私のもやっといてください」


「分かったわ、じゃあ頑張ってね」


 珍しく調理場が賑やかだった。

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