思い出
ミランが一人で浴槽に浸かっていると、そこに、セリアとコンロンが入ってくる。
「あら、ミランじゃない。一緒にいい?」
ミランは、迷ったが、
「いえ、私は出ますので」
と、断る。
セリアは笑みを浮かべて、
「さっき入っていたじゃない、いいから入りましょ」
セリアはミランが浴室に入るところを見て、ここに来ていた。
「ミラン、久々に一緒に入るぞ」
と、コンロンも乗る気だ。
「分かりました。ではご一緒に」
ミランは。ブレア家は似た人ばかりだと改めて実感した。
ミランは、セリアがコンロンの背中を洗っているのを見て、
「セリア様、背中を洗いましょうか?」
と、聞いてみた。
「そうね、じゃあお願い」
コンロンの背中を洗いながらセリアは答える。
タオルに、ボディソープを付け、泡立たせる。
ミランはセリアの背中を洗い始める。
「懐かしいわね、丁度ミランが初めてここに来た時のことを思い出すわ」
十年前、ミランはイソティス城に来た。
湊の時と違い、まだ人形の事件も少なく警戒のためではなく、セリアがただミランと入りたくて、入った。
その時は、二人背中を流し合っていた。
年が経ち、ミランはメイド長になり、それからきっぱりと一緒に入ることはなくなった。
コンロンとは、ミランがメイド長になる前にセリアが忙しい時一緒に入っていた。
と言っても、もう五年は経っている。
「私も、ミランの背中洗ってあげようか?」
「私はもう洗いましたので」
「それは残念」
二人は顔を合わせてほほ笑む。
「今日のセリア様は少し不機嫌そうでしたが何かあったのですか?」
「いつもの事よ、コンロンと茜のね」
ミランは察したかのように愛想笑いを浮かべた。
コンロンも二人の話を聞いていて、話に入る。
「あれは私悪くないぞ」
「二人とも悪いわよ、毎日顔を合わせるたびに口喧嘩して」
セリアは呆れ気味に呟いた。
「ここに茜もいたら昔の再現みたいになりますね」
ミランが微笑みながらそう言った。
セリアはその言葉に溜息をつく。
「そうだけど、もうごめんよ」
「そうですね、私も同感です」
次は、セリアだけでなくミランも同じよう溜息をついた。
「二人とも疲れているのか?」
コンロンが二人の様子を見て聞く。
「あんたたちのせいよ」
「コンロン様のせいでもあります」
同じタイミングでコンロンに言う。
コンロンは立ち、シャワーで泡を落とし、一人浴槽に入った。
「怒りましたかね?」
ミランは責め過ぎたのかと思った。
「ふてくされただけよ」
セリアはあまり気にしていなかった。
二人は目を合わせる。
「入りましょうか」
セリアのその言葉で、セリアとミランも浴槽へと入っていった。