残酷な世界のいたずら。
会話多めかな~
倒れたケインから剣を抜く。
そのまま、剣を地面に置いた。
「ミラン、コンロンと逃げてはくれないか」
湊がミランに交渉を持ち掛けた。
「そんな馬鹿み――」
「私に力を!」
ミランの声を遮り、コンロンが叫んだ。
もちろん、何かが起きるわけでもない。
コンロンが強くなったりもしない。
魔法や魔術などは存在しない。
するとコンロンは笑い始める。
「やっぱり何も起きないね」
最後の最後で改めて子供だなと実感させられる。
湊は、コンロンを見つめていた。
「死ぬんだったら最後に馬鹿みたいなことしてみたいじゃない。さぁ、湊。私を殺しなさい」
コンロンが『殺せ』と願った。
すると、湊も笑顔を見せる。
「馬鹿みたいな事の中身が違う気がするけどな」
そう言いながら、コンロンの前にしゃがみ込む。
「さよなら、湊」
「うん、ごめんな」
そう言って針で首を刺そうとする。
「違う」
コンロンが何かを否定する。
湊も動きを止めてしまった。
「さようなら、だよ」
コンロンは今までの事を全て知っているかのように、涙を溜めながら湊を見つめた。
「……そうだな、さよならコンロン」
コンロンは湊に抱きついた。
そして、湊は今度こそコンロンの首に針を刺した。
徐々に、コンロンの力が抜けていくのを感じる。
そのまま、優しく地面に寝かせる。
立ち上がり、ミランの方を向く。
「ミラン――」
「さっき言っていた事はごめん」
逃げなければ、殺さなければならない。
「ここまでやって逃げてって、今まで湊にはひどい事されてきたけど今までで一番、酷く辛い事よ」
「そう……だよな」
ミランの言っている事は解る。
だから、殺さなければならない。
「あのね、言おうか迷ってたんだけどさ――」
「……なんだ」
「湊が、人形って事はねブレア家と私だけ知ってたの」
湊は目を見開く。
「と言っても本当に最近なんだけどね」
「だったら、なんで――」
「殺さなかったのか、かな?」
無言で湊は頷いた。
「八年も居たんだよ、信じていたいと思ったし心変わりとかあったかなとか思った」
「……でも」
「違う」
湊の言葉に続けるように、ミランは話した。
「でも違うんだよ、信頼されるために八年も居た。三年とか五年以上経ってるからケインは大丈夫とも言ってた。でもね、私としては湊は慎重だから人形ならもう動いてるんだろうな、って思ってた」
流石彼女と言うべきだろうか。
全てが綺麗に当たっていた。
丁度新入りが来たから、チャンスだと思った。
実際に人形がいる事は誤算だったけど。
「私を殺しなさい。湊」
湊はミランの言葉に足が動かなかった。
今までここで殺した人たちの事を思い出し、悲しさが込み上げてきた。
ミランは湊の方に歩きながら喋る。
「知ってる。湊は本当は殺したくなかったんだよね」
「……違う」
「知ってる。だって、人間の急所だけを狙ってたじゃない」
「……知らない」
「知ってる。本当はここが好きだったんだよね」
「……分からない」
そして、湊の近くに腰を下ろす。
「嘘だよ、さっき皆を殺している時、悲しそうだった」
「……」
「私がもしも生きてたら湊が傀儡子に酷い事とかされるんでしょ」
湊は静かに首を振った。
「嘘だよ」
ミランの言葉は、全て優しかった。
湊の閉ざした心に直接話しているかのように。
「さぁ、私を殺しなさい、湊」
湊は涙を流しながら手に針を持った。
すると、ミランは湊にキスをした。
口をあわせた瞬間に、ミランから大粒の涙が流れ始めた。
湊は最後に、
「ありがとう、そしてさようなら。ずっと愛してる」
ミランもその言葉に返す。
「うん、ありがとう、さようなら。私も愛してる」
湊はミランを殺した。
周りを見回し、一気に感情がこぼれ始める。
人形と知られていた今ならルークが言っていた事が解る気がした、
少しだけ聞こえてきた言葉を思い出し、そこからどんな言葉を言っていたのか想像する。
おそらく、
「ごめんね、さよなら」
だろう。
薄暗い場所に一人、泣いていた。
大きな声を出しながら泣いていた。
声が枯れて声が出なくなるほど泣いた。
次で最後だよ!




