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残酷な世界のいたずら。  作者: 紗厘
第五章~悲しみに溺れて~
34/36

残酷な世界のいたずら。

会話多めかな~

 倒れたケインから剣を抜く。

 そのまま、剣を地面に置いた。


「ミラン、コンロンと逃げてはくれないか」


 湊がミランに交渉を持ち掛けた。


「そんな馬鹿み――」


「私に力を!」


 ミランの声を遮り、コンロンが叫んだ。

 もちろん、何かが起きるわけでもない。

 コンロンが強くなったりもしない。

 魔法や魔術などは存在しない。

 するとコンロンは笑い始める。


「やっぱり何も起きないね」


 最後の最後で改めて子供だなと実感させられる。

 湊は、コンロンを見つめていた。


「死ぬんだったら最後に馬鹿みたいなことしてみたいじゃない。さぁ、湊。私を殺しなさい」


 コンロンが『殺せ』と願った。

 すると、湊も笑顔を見せる。


「馬鹿みたいな事の中身が違う気がするけどな」


 そう言いながら、コンロンの前にしゃがみ込む。


「さよなら、湊」


「うん、ごめんな」


 そう言って針で首を刺そうとする。


「違う」


 コンロンが何かを否定する。

 湊も動きを止めてしまった。


「さようなら、だよ」


 コンロンは今までの事を全て知っているかのように、涙を溜めながら湊を見つめた。


「……そうだな、さよならコンロン」


 コンロンは湊に抱きついた。

 そして、湊は今度こそコンロンの首に針を刺した。

徐々に、コンロンの力が抜けていくのを感じる。

そのまま、優しく地面に寝かせる。

 立ち上がり、ミランの方を向く。


「ミラン――」


「さっき言っていた事はごめん」


 逃げなければ、殺さなければならない。


「ここまでやって逃げてって、今まで湊にはひどい事されてきたけど今までで一番、酷く辛い事よ」


「そう……だよな」


 ミランの言っている事は解る。

 だから、殺さなければならない。


「あのね、言おうか迷ってたんだけどさ――」


「……なんだ」


「湊が、人形(ドール)って事はねブレア家と私だけ知ってたの」


 湊は目を見開く。


「と言っても本当に最近なんだけどね」


「だったら、なんで――」


「殺さなかったのか、かな?」


 無言で湊は頷いた。


「八年も居たんだよ、信じていたいと思ったし心変わりとかあったかなとか思った」


「……でも」


「違う」


 湊の言葉に続けるように、ミランは話した。


「でも違うんだよ、信頼されるために八年も居た。三年とか五年以上経ってるからケインは大丈夫とも言ってた。でもね、私としては湊は慎重だから人形(ドール)ならもう動いてるんだろうな、って思ってた」


 流石彼女と言うべきだろうか。

 全てが綺麗に当たっていた。

 丁度新入りが来たから、チャンスだと思った。

 実際に人形(ドール)がいる事は誤算だったけど。


「私を殺しなさい。湊」


 湊はミランの言葉に足が動かなかった。

 今までここで殺した人たちの事を思い出し、悲しさが込み上げてきた。

 ミランは湊の方に歩きながら喋る。


「知ってる。湊は本当は殺したくなかったんだよね」


「……違う」


「知ってる。だって、人間の急所だけを狙ってたじゃない」


「……知らない」


「知ってる。本当はここが好きだったんだよね」


「……分からない」


 そして、湊の近くに腰を下ろす。


「嘘だよ、さっき皆を殺している時、悲しそうだった」


「……」

「私がもしも生きてたら湊が傀儡子に酷い事とかされるんでしょ」


 湊は静かに首を振った。


「嘘だよ」


 ミランの言葉は、全て優しかった。

 湊の閉ざした心に直接話しているかのように。


「さぁ、私を殺しなさい、湊」


 湊は涙を流しながら手に針を持った。

 すると、ミランは湊にキスをした。

 口をあわせた瞬間に、ミランから大粒の涙が流れ始めた。

 湊は最後に、


「ありがとう、そしてさようなら。ずっと愛してる」


 ミランもその言葉に返す。


「うん、ありがとう、さようなら。私も愛してる」

 

 湊はミランを殺した。


 周りを見回し、一気に感情がこぼれ始める。

 人形ドールと知られていた今ならルークが言っていた事が解る気がした、

 少しだけ聞こえてきた言葉を思い出し、そこからどんな言葉を言っていたのか想像する。

 おそらく、


「ごめんね、さよなら」


 だろう。


 薄暗い場所に一人、泣いていた。

 大きな声を出しながら泣いていた。

 声が枯れて声が出なくなるほど泣いた。

次で最後だよ!

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