二人の秘密
浴室でミランが、新人の案内をしていた。
「最後にここが浴室。ちなみに今いるのは女性専用、隣が男性専用」
リアムが口を開かないまま、外へ出ようとする。
「大丈夫よ、今は誰の入浴時間でもないから。しかも案内してるのに出ろとか言わないわよ」
と、愛想笑いを浮かべ、リアムを引き戻す。
「浴室の掃除は、基本的に茜に聞けばいいわ。不安でしょうけどね」
と、ミランは愛想笑いを浮かべる。
「案内はこんな感じよ。何かあったら呼ぶから好きなように屋敷を歩いても良し、各自の部屋に戻って休息をとっても良し、ただ秘書室や居間には入らないことね」
そう言い残し、ミランは浴室を出て行った。
「えっと、場所も場所ですけど、これからよろしくお願いします。由紀奈さん、リアムさん」
エリーが礼儀正しくお辞儀をする。
「えぇ、こちらこそよろしく、エリー。あと呼び捨てでも構わないわよ、リアムもね」
「お願い……します」
リアムは、打ち解けてはいないようだ。
由紀奈とエリーは気にしている様子はなく、そのまま、浴室を出た。
リアムもそれに付いていくように、浴室を出て行った。
ミランは、庭に向かって歩く。
歩いていると、廊下で湊と出くわす。
「庭にいると思っていたけど」
「さっきまでいた。案内は終わったのか?」
「湊が気になってることについて話をするから、私の部屋に来なさい」
と、言ってミランは真っすぐ歩く。
湊も付いていく。
歩きながらも、会話を進める。
「気付いていたのか」
「えぇ、だってずっと見ていたわよ」
湊は、黙り込む。
新人が人形の可能性についての事だ。
階段を上がり、ミランの部屋につく。
ミランは扉を開けて、湊も入っていく。
「お茶淹れるから座ってなさい」
「どうも」
湊は、椅子に座りミランを待つ。
ミランが紅茶を淹れて湊の所へ持っていく。
「新人たちが人形の可能性は、正直言って判らないわ」
湊は黙ったまま、ミランの話を聞く。
「油断し過ぎなのよ。特に殺気も感じないし」
「……」
「手慣れているなら話は別だけどね」
湊は紅茶を口に含む。
「そっか、分かった」
「警戒は続けるべきでしょうね」
「リアムは対象に入れなくていいと思う。あれは人に慣れていない」
ミランは紅茶を飲みカップを洗いに行く。
湊も飲み干し、机の上に置く。
「俺は、庭に行ってゆっくりするよ」
「分かったわ、何かあったら呼びに行く」
湊は、ミランの部屋を出た。
ミランが湊の言葉使いに怒らないのには理由がある。
とても簡単で単純な理由だ。
湊とミランは交際をしている。
それは誰も知らない、二人しか知らない事実だ。
別に交際を禁止されているわけではないが、知られると面倒なのだ。
特に茜にだけは知られないように気を付けている。