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残酷な世界のいたずら。  作者: 紗厘
第五章~悲しみに溺れて~
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掃除も楽しく

 時和は今日、茜とダイニングルームの掃除を担当していた。

 よりにもよって茜と、運が悪い。

 だがまだ茜は来ていない。

 時和一人で、床を磨いていた。


「ごめんね、少しおくれ……何その格好」


 と、口を手で押え笑いを堪えていた。

 予想通りの展開だった。


「うるさいな、僕だって着たくなかったんだよ」


 茜は時和の姿をじーっと見る。


「似合ってると思う!」


 その言葉は嘘ではないだろう。


「嬉しくない」


 嬉しさなど一つもなかった。


「とにかく、茜は棚とかの埃を綺麗にして」


 茜は、城の中にある物置から掃除道具を持ってくる。

 やる気なのは嬉しいが、最初から掃除するってわかっているのに、なんで持ってきてなかったんだ。

 と、内心怒っていた。


 茜が戻ってきて掃除を始める。

 最初は静かにしていたが時間が経つにつれ話を始めだす。


「今日ぐらいは、楽しい日になるかな」


 茜が不安をあらわにした。


「どうだろうね、屋敷では人が死んだり、皆が眠ったり、町では指名手配犯に殺されたり、怪我を負わされたり。嫌なことが続いてるからね」


「でも、今日はクラパム様の誕生日であり、祝う日だからさ」


 今、掃除をしているのもクラパムの誕生日会に向けての物だ。


「うん、そうだね。由紀奈とアグナは二人で、浩正は知らない誰かに、その知らない誰かが乗り込んでこない限りは大丈夫だよ」


 と、茜に笑って見せた。

 茜の不安を少しでも抑えるためだ。

 だがその笑顔も不安で満ちていた。

 誰が見ても、作り笑顔だと分かるくらいに、不安と言う感情で作られていた。


 茜はその笑顔を見て時和に励まされている。

 時和に無理をさせていると思った。


「そういえばさ、コンロンが作ったクッキー美味しかったんだ」


 初めてコンロンが作ったクッキーを茜はもらって食べていた。

 少しでも楽しい話に変えるために、思い付きで茜はその話を始めた。


「そうなんだ、でもね昨日作ったやつはオーブンでまる焦げにしてたんだよ」


「それもそれですごいわね」


 そんな話をしていると、不安は少しずつ薄れていき、自然と笑顔も出始めた。

 最後は茜らしい言葉が出てきた。


「これからずっとメイド姿でいいじゃん」


 時和は、床を拭いていた雑巾を茜の顔に投げつける。


「うわ、汚いじゃん!」


「知らないよ、茜が変なことを言うからダメなんでしょ」


 茜が雑巾を時和に投げつけようとしたら、時和にすごい圧力と共に睨まれる。

 その圧に負けて歩いて手渡しで茜に返した。


 それから少し経ち、また茜が口を開く。


「あのさ……」


「少しは黙ってできないの?」


時和は即座に反応する。


「ごめん、でも気になってさ」


 両手を合わせて時和に謝る。


「それで、どうしたの」


「誕生日会の飾りつけっていつやるの」


 時和は、固まっていた。


「ん、おーい」


 茜は時和の前で手を振ってみる。

 時和は急に茜の振っている手を掴む。


「きゃ」


 と、茜は可愛らしい声を出す。


「急につかまないでよ、びっくりするじゃん」


 時和は茜の腕を掴んだまま話を続けた。


「――忘れてた」


「え?」


「忘れてた」


 メイド服を着ていていつもと違うせいか、すっかり装飾の事を忘れていた。

 このペースだと、夕食ぎりぎり終わるくらいだ。

 流石に余裕は欲しい。


「ごめん、掃除のペースもっと上げて。でも丁寧にね」


「リアムにも手伝ってもらったら?」


「ごめん、呼んでくるから一人で頑張って!」


 そう言い残し、すぐに走ってリアムを呼びに行った。

 と思ったら、スカート部分に引っかかてこけた。


「あー」


 茜は呆れながらも面白おかしく見ていた。


「たまにはちゃんと掃除をしよっかな」


 と、茜は本気モードに入った。

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