年代
私はニヤニヤしながらけいちゃんの表情を伺っていた。
どうやら深く思い悩んでいる。
ちょっとイジメすぎちゃったかな…と、少し思って私は口を開いた。
「それはそうと、安奈ちゃん、昨日の夜もちょろっと話したけどさ」
私がそう話し出すと安奈ちゃんは「はい?」と言いながら枕から目だけを出して私を見る。
けいちゃんもまだちょっと暗い顔をしていたが、私の顔を見ているようだった。
「昨日の夕方さ、安奈ちゃんおかしくなってたでしょ?その時に安奈ちゃんをタクシーに乗せるの大変だったんだから」
安奈ちゃんはそれを聞いてようやく枕から顔を全部出して「あ、はい。本当に迷惑かけてごめんなさい」と謝る。しかしその表情は少し笑顔が混ざっていた。
「いやいやいいのいいの。私はほとんど手を添えてるだけだったから」
そう言ってケラケラと笑う。そして笑いながらチラっとけいちゃんの顔をのぞいてみると、少し頬を赤く染めていた。
「けいちゃんがね、頑張って運んでくれたんだよ。やっぱり男の子、いざって時には役に立つよねぇ」
私は拍手をしながらけいちゃんを賛美する。少し大袈裟かも知れないが当のけいちゃんは照れながら「いや……そんなたいした事じゃないよ……」と言っている。どうやらまんざらでもないようだ。
「ううん、本当にありがとう。知り合って間もないのにいっぱい迷惑かけちゃったね……」
安奈ちゃんはそう言い、申し訳なさそうに頭を下げる。
やっぱり、安奈ちゃんは良い子だ。そしてけいちゃんも、良い奴だ。
二人ともまだ幼い。私より5つも年下。でもなんていうか……そんなもの、関係無いような気になってくる。
私は兄弟も姉妹もいない一人っ子だからだろうか、5つも年下だともう何を考えているのか解らないのが普通だと思ってた。世代が違うと思ってた。通じ合う事なんて出来ないと思ってた。
でもなんてことは無い、やっぱり、いい奴はいい奴。
「いいじゃん、迷惑なんていっぱいかければ」
私は自然と声を弾ませ、ニコニコしながらそう言っていた。
「けいちゃんも私も、安奈ちゃんの迷惑を迷惑だなんて思ってないからさ」
安奈ちゃんは申し訳なさそうな顔半分、嬉しそうな顔半分の微妙な表情を浮かべながら「あはは」と笑った。
けいちゃんが来て二時間くらいたっただろうか。時刻は9時30分を過ぎたあたり。
「さて……そろそろいい時間だし、お見舞いに行く?」
私はそう切り出してその場に立ち上がった。
安奈ちゃんは「あ、そうですね」と言っていたが、けいちゃんの表情がどうにも暗くなっている。
複雑なのは解るが、そんなあからさまに暗くならなくても良いだろうに。
「けいちゃんは?どうする?」
私がそう話しかけるとけいちゃんは頭をビクッとあげ、安奈ちゃんの顔を見た。
嬉しそうな安奈ちゃんの表情を見て、けいちゃんの顔はさらに影が濃くなっていく。
まったく……若いというかなんというか……
見かねた私はため息をひとつついて、けいちゃんの頭をポンと叩く。
当のけちゃんはビックリしたようで、目を大きくさせながら私の顔を覗き込んだ。
「あんさぁけいちゃん、はっきり言っておくよ」
「……は、はい。なんです?」
私はもうひとつ浅くため息をはく。
「けいちゃん、来ないほうがいいと思う」




