明日
啓二君は、親切で言ってくれているんだと思う……
多分今の私、すごく暗い顔をしている。だから啓二君は私を元気付けようとして誘ってくれている。
でも……私はそろそろ帰りたい。
今は、誰かと関わったり話をしたり。そんな事はあまりしたくない。
部屋で体育すわりでもしていたほうが、よっぽど落ち着く。
知らない人とパーティーなんかやったって……今の私は作り笑顔すら作れないかもしれない。
「ううん……やっぱりいいよ……ごめんね」
私は啓二君の顔を見ながら申し訳なさそうにそう答えた。
啓二君は「……そ……そっか」と呟き、広げていた両手をゆっくり下ろす。
「ごめんね……また今度誘ってよ」
そう、今日でなければ、別にいつ付き合ったってかまわない。
どうせ暇だし。松本さんには……元鞘がいるし。
だけど今日だけは、布団の中でうずくまっていたい気分なのだ。
「今日だけは……ごめんね」
「じゃ……じゃあ明日は……?」
明日……?
急に明日って。
もしかして啓二君は私が「いつか今度ね」という返事をして逃げるとでも思っているのだろうか?
そんなつもりは無い。どうせ暇だし、やる事も無いんだし。
「何も急に明日じゃなくても……いつでもいいんだよ」
「だっ……だから明日!明日また会ってよ。友達も連れて行くから」
…啓二君の顔が本気だ。目をものすごく輝かせている。
どうやら私は……啓二君の心に与えてはいけない感情を与えてしまったようだ。
駄目だよ……貴方のように純粋な人は、私なんかを好きになっちゃ駄目。
「明日……か……」
いや、もっと駄目なのは……私だ。
何を考えている?何を考えている?何を考えている?何を考えている?
馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か、馬鹿か。
松本さん以外、認めるな。
「あはは……」
「明日も……駄目ですかね……」
「……ううん、別にかまわない」
啓二君は「えっ!?」と驚いた。それと同時に右手に持っていた缶コーヒーを落としている。
落とした事にも気づいていないようで、啓二君は私の目を初めて直視していた。
「ほ……ホントに……?ホントに明日も会ってくれるんですか?」
「うん良い…………けど」
あぁ……浮かぶな……浮かぶな……浮かぶな……
狂うな……狂うな……狂うな……
ふざけるな……安奈……お前はサカリのついた雌犬じゃないんだ。
私は啓二君から目線を外し、空を見上げた。
……雪が、降っている。
さっきまで小降りな雪だったのに、今は結晶が見えるほど大粒の雪になっていた。
「……けど……?なんですか……?」
「愛」
「あい……?」
「…………」
今日の分はもう流しきった筈なのに……
涙が、溢れる……




