二重人格……?
……何かが、おかしい。
あの安奈って子、絶対におかしい。普通じゃない。
私はえいちゃんの部屋の中で、一人布団の上に座っていた。
えいちゃんが出て行って30分くらい経っただろうか……二人はまだ帰ってきていない。
「何やってんだ私……」
深くため息をつき、携帯電話を取り出した。
着信が3件、メールが5件……
いずれもあの女友達から。メールを読んでみるとどうやら心配しているらしい。
はぁ……勢いって、怖いな。
我を失うほどの事でもないだろうに。おとなしく彼女らと一緒にカラオケにでも行っていれば良かった。
そう思い、また深くため息をつく。
そしてふと、小さな窓の外を眺めてみた。やっぱり、雪が強くなっている……
えいちゃんが飛び出して行った時、もっと強く止めて置けばよかった。
こんな雪じゃバイクなんか到底無理……事故起こすに決まっている……
「あぁ〜……」
私は頭をグチャグチャとかきむしった。
罪悪感がふつふつと……湧き上がってくる……それを振り払うようにグシャグシャと髪をかきむしる。
それでもやっぱりぬぐえない。いてもたってもいられない感じ……
体が寒いのか暑いのか、解らないこの感じ……
なんとも……不快……
くりかえす。グチャグチャと、グチャグチャと、何度も何度も髪の毛をかきむしる。
「だってさ……まさかこんな事になるなんて思わないじゃない」
安奈って子を、少しだけからかってやろうって思ってただけだ……
本当にそれだけ……それだけでおとなしく帰るつもりだった。
だけど……その安奈って子が普通じゃなかったのが私の誤算……
えいちゃんに依存している事は電車に乗った時、えいちゃんから聞いた話で大体解っていた。実際に見てみるとやはり彼女にとってえいちゃんが『全て』って感じだった。
えいちゃんを取られたと感じてあそこまで泣いて……そこまではまだ普通と言うか、私の思惑通りだったのだけど、その後。
突然ピタッと泣き止んだかと思うと、何の物音も立てずに、突然姿を消した。
……普通なら、怒ってかち込んでくるか、落ち込んだままその場で黙って事の成り行きを見守るか。
走ってどこかに行くにしても、足音くらいするだろうに。
急いだ様子も無く、足音も立てず、彼女は忽然と姿を消した。
「……普通じゃないよ、それって」
えいちゃんが彼女から目を離した時間は、本当にちょっとの間でしかなかったはずだ。
とてもすばやく、頭の切り替えをしたとしか思えない。
さっきまでワンワンと泣いて悲しみに暮れていたのに、パッと、思考を切り替えて、まるで散歩にでも行くように……
「まさか……二重人格じゃあ、無いよね……?」
……もし二重人格なんだとしたら……
そうなるには、何かとても大きなトラウマでも無いとそうはならないはず……
……何か大きな……トラウマ……
「あ……」
あぁそうか……えいちゃん、電車の中で言ってたっけ。
「安奈は、元々ホームレスだ…過去に何があったのか、俺も知らない。だから、絶対に挑発するな」
私は「うんうん」と軽く答えてた。
えいちゃんによって繋ぎとめられていた彼女の理性。それがはじけた……?
彼女の中にある闇を、私は軽い気持ちでつっついて……取り返しのつかない事態を引き起こした……?
安奈が帰ってこなくなる……?えいちゃんが事故にあう……?もしくはその両方……?
私は頭をグチャグチャとかき乱し「あぁ〜……」と呟いた。




