パーティー
最初はビックリした……
だって、歩道で華奢な女の子が頭を両手で抱えながらうずくまっているから。
僕は今日が終業式だったからこれから友人たちと遊ぶ約束をしていた。
男子も女子も混合で。パーティーじみた事をやる予定だった。それに向かう途中だったのだが……出会ってしまった。
始めは無視して通り過ぎようと思っていた。厄介な事に巻き込まれるのはゴメンだ。
だが、普段見る事の無い光景。どうしても気になってしまい、その女性をようく見てみた。
そして同時に驚愕した。それは、皆の憧れのアイドル、安奈さんだった。
ものすごく、ビックリした……引越しでもして居なくなったと思われていた安奈さんがあんな所でうずくまっているなんて。
僕は思わず話しかけた。「大丈夫ですか?」月並みな言葉だったが、それ以外の言葉は思い浮かばない。
安奈さんは僕の声が聞こえていないようで、小さな声で何かをブツブツと呟き続けていた。
そして何より驚いたのが、安奈さんの両手の先にあるもの……
それは、紛れも無く、犬の耳だった。
「……啓二くんはあれだね、純粋だね」
安奈さんはそう言って空を見つめていた。
……やっぱり、安奈さんは……ものすごく美人だ……横顔もすごく素敵。
「……っへ!?」
僕は声を裏返して無意識の内にそう言っていた。
……だってこの人、今なんて言った?
純粋って言ったのか……?僕の事を……?
……やめてよ……そんな顔で褒められたりしたら……
ドキドキと……心臓が高鳴る……
「え……?何……?」
僕のこのすっとんきょうな声を聞いて安奈さんはいたずらっぽく「えへ」っと言いながら微笑む。
なんだ、からかわれたのか……と思う反面、その笑顔にものすごく、ドキドキする。
「私なんてさぁ……」
そう言って安奈さんはちょっと暗い顔をしながらうつむく。
そしてそのまま、黙り込んでしまった。
「私なんて……?」
僕は聞き返す。
「……ううん、なんでもない」
安奈さんはうつむいたまま少し微笑んでそう答えた。
「安奈さんは、これからの予定って何かあるんですか?」
僕は是非とも安奈さんにパーティーに来て欲しかった。
安奈さんを連れて行ったというだけで、僕は今日ヒーローになれる。
だって安奈さんは皆のアイドル。憧れの的。男子だけじゃなく女子にだって大人気だ。
それになんだか……安奈さん、元気ないみたいだし。パーティーに参加したら間違いなく主役になってもてはやされるに決まっている。そうしたら、元気になるはず。
「……ううん、無い」
「じゃあ、だったら、一緒に来ませんか?学校の友達と遊ぶんだけど。ちょっとしたクリスマスパーティーみたいな事をするんですよ。安奈さんがきたら皆大喜びしますよ」
僕は言いたい事を一気に安奈さんに伝えた。少し興奮気味になっていたようだ。
しかし安奈さんはやっぱり浮かない顔をしている。どうやら、あまり乗り気じゃないらしい。
「……あはは……私なんかが行っても、迷惑だよ」
安奈さんはうつむきながら悲しそうに笑う。
コーヒーの缶を持っている安奈さんの手に、力がこもるのが解った。
……
「そんな事ないよ!絶対に!保障するから!」
僕はいつの間にか立ち上がって両手を広げて強い口調でそう言っていた。
そう、迷惑な訳が無い。皆今日がクリスマスパーティーだという事を忘れて安奈さんに夢中になるはずだ。
それほどまでに、安奈さんの存在は僕らのクラスで大きな存在である。
「ね?一緒に行きません?」
「…………」
安奈さんは小さく、「松本さん」と呟いたような気がする。




