愛して
愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して、愛して。
狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで狂わないで。
「ははは」
誰かが、笑う。
私は立ち上がって膝についていた砂を両手でほろった。
あぁ……思い切り膝から倒れたから、すごく痛い。それに玄関の床はコンクリートで出来ているからすごくつめたい。
私は冷えた膝をこすりながら「あはは…」と笑う。
ふと、目の前を見てみると、そこには松本さんの姿がなかった。
あぁ……あの元性具とどっかに行っちゃったかな……と、ちょっと思って最後の涙が頬を伝った。
……私、別に怒ってない。
だって……松本さんってもう私を抱いてくれないんだもんね。
私以外の、誰かを抱きたくなったんだもんね。
仕方ないよ……仕方ない……。
「愛して、愛して、愛して」
さっきから頭の中でこだましている言葉を口に出して言ってみた。
だけど、伝わったためしは、無い。
私はふらふらと、外に向かって歩き出した。
別に、行く宛てなんて無い……松本さんが帰ってくるまで、ちょっとだけ外出しようって思っただけ。
松本さん……今何やってるんだろう……
きっとあの元性具と……なんて思って「愛して、愛して、愛して」と呟いた。
それにしても、寒い……
手がかじかむし、お腹も冷えてくる……
トレーナー一枚で外に出てきた事を後悔した。
どうせなら去年松本さんにプレゼントしてもらったコート着てこればよかった……
今からでも取りに戻ろうかな……って思った。さすがにこの寒さは洒落にならない。「愛して、愛して、愛して」愛し合ったら、暖めあえるなぁ……なんて思う。
そういえばステーキ……今頃もう真っ黒になっちゃってるかな……
どうしよう……すっごく高かったのに。松本さんに怒られちゃう。
せっかく今日のために特別なものをって思ったのに……
あ、そういえば鳥の丸焼きはうちにオーブンが無いからやめたんだっけ。作り方も難しそうだったしなぁ……って、そこは勉強するしかないか。
料理を勉強するならやっぱりもうちょっと良い電子レンジが欲しい。うちにある電子レンジは暖める事しか出来ない。今度松本さんにおねだりしてみようか。「愛して、愛して、愛して」愛してくれているなら、買ってくれるだろう……なんて思った。
あぁ、それにしても愛が欲しい。
愛さえあればもう何もいらない。
愛を手に入れた瞬間に死んだってかまわない。
とにかく、愛。愛。愛。だ。
松本さん、愛して。
愛して。
愛して。
愛して。
「愛して、愛して、愛して」
さっきから愛という単語ばかりが頭に浮かぶ……
愛して欲しいなら、愛してあげなければならないだろう。それが世の常だ。
私の頭は『愛して』って考えているけど、私は、安奈は、人を愛した事があるの?
『お金をくれる人だけが人間』って、誰の言葉だっけ?
私は、安奈は、寂しいだけなんだ。
寂しくなければ、松本さんじゃなくても、いいんだ。
「狂わないで……狂わないで……狂わないで……狂わないで……」
私は耳をふさいで、その場にうずくまった。
冷静な安奈が私に問いかけ続ける……
「松本さん……助けて……ぇ……」
私は、安奈は、松本さんじゃなきゃ嫌だって……思い込もうと努力してる。
愛そうと努力する愛は……愛?
自然と心惹かれるのが……愛?
じゃあ……私のこの感情は……?
松本さんを奪われて、半狂状態になった私のこの感情は……?
これは、嫉妬という感情。
でもそれはきっと、愛ゆえに……
「もう……わかんない」




