表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

~ 手紙 ~

毎日 暑い日が続いていますが


お変わりありませんか ?


貴方に 毎年 送っていた 蓮の花ですが


今年は 送る事が 出来そうにもないのです


楽しみにされていたのに … 残念です …



夏休みの朝


明け方前に目覚めてしまった僕は


家のポストに差出人不明の手紙が届いているのを見つけた


僕は 手紙を読んで ハッとした


大急ぎで家のすぐ近くにある 蓮池へと走った


毎年 この季節になると 大きな池に 絨毯のようにビッシリと 咲く 蓮の花


僕は 毎年 この時季に蓮が咲くのを 楽しみにしているんだ


とても不思議な花で


花が開くと 実をつけているんだ


泥池が汚れている程 大きくて美しい花が咲くんだ !


息をきらせて 走って 見えてきた池には


手紙の通り


蓮の花は 一つも咲いていなかった …


「どうして … 何で? 何で咲かないの… 」


僕は 悲しくて …


だけど 池を離れたくなくて


地面に座って 蓮の無い 池を見つめていた


「いつもは … いつもは 池の端から端迄 咲いていたのに … 僕 … 楽しみにしていたんだよ 本当だよ!」


誰に 話す訳でも無く 少年は 池に そう言った


其所に その時 在るべきものが無い …


純粋な 少年の心は 涙となり


一粒の涙が 少年の 頬を伝った



大きな池は 少年の涙を感じたのか


端々から キラキラ キラキラ と 輝き始めた


軈て その輝きは 大きな池の中心に集まり


集まった輝きは 池の中心から 放射線状に拡がり


池の端々にまで届き 虹を描いた …


幻想的で 不思議な その光景に


少年は立ち上がり 池の側へと 進んだ



私 ノ タメ ニ 泣イテクレルノ 坊ヤ …



少年の耳に 清み渡る 優しい声が届いた …



「虹が 喋った … 」



少年 は 驚いて目を擦り 頬をつねり 夢ではない事を確かめた



「フフフ ! 可愛イ 坊ヤダコト … 坊ヤ コノ池ガ好キデシタカ?」



虹から 聞こえる清らかな声が 少年に聞いた



「うん ! 僕 この池に咲く 蓮の花が大好きで 楽しみにしていたんだ ! でも 今年は咲いていない … 」


少年 は 虹に向かい 悲しそうに 言った


蓮ガ見タイノ 坊ヤ ?


虹 が 少年に 聞いた


「うん! 僕 見たいよ!」


少年 は 瞳を輝かせ 池の端から 身を乗り出し 応えた …


善イデショウ … 今日 坊ヤニ 出逢エタノデスカラ …最後ニ … 私 ノ … コノ蓮池 ニ 幻影ヲ浮カベマショウ …


虹 は 更に 輝きを増し


池からも 太陽からも 周りに繁る樹木や草花達 そして 大地からも


小さな光りの 泡粒を集めた


小さな 泡粒達は 其の 一粒 一粒 が 輝き


虹 に 吸い寄せられるように 空中を ふわりふわり と 漂うように 移動した


「うわぁ~ !!」


少年は その美しさに 驚き 声を上げ 嬉しそうに 笑顔を見せた



ポンッ ♪ ポン♪ ポン♪


楽し気な 音が 彼方此方から 聞こえてきた


高い音 低い音 長い音 短い音 …


其々 違う音が 幾重にも重なり


軈て 其は メロディー を奏でた


奏でられたメロディーと伴に


池 に 一つ 又 一つ と 蓮の花が 甦っていった …

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ