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おかしなシリーズ

おかしな王子様

作者: かんゆかん

おかしなシリーズ、おかしな日々の続きです。

正直、これ見てくれてる人いるのだろうか?と

疑問に思いながら書きました。

でも、楽しいので書きました!テスト期間なのに!

こんにちは、私の名は水野雨みずのあめ


突然だが、私の幼馴染みはおかしい。


成績は悪くない。

教師の信頼を得ている。

友人も少なからずいて、むしろ整った顔立ちをしているから、女子から人気が無いわけではない。


ならば、何故おかしいか。


それは・・・。


「水野、放課後空いているか?」

「空いていないといえば嘘になるね」

「ならば、付き合え」

「・・・一応聞いおく、どこに行く気だい?」

「駅前の喫茶店のデカ盛りスウィーツ食べ放題」

「この間腐ったプリン食べて食中毒になって入院してから、親御さんにお菓子は控えなさいって言われなかったっけ」

「あれは母さんが腐らせたんだろが!俺の責任じゃない!故に、俺を縛るものは何も無い!」

「普通トラウマにならないのか」

「アイアムフリーダム!アイウォントシュガー!」


お分かりいただけただろうか。


この慶喜野白けいきのしろの、お菓子への異常なまでの執着心を。


こいつは先程述べたとおり、普段は好青年だけれど、砂糖が関わると途端に豹変する変態だ。


・・・失敬、変人だ。


「まあ、百歩譲って、君に菓子を食べる権利があるとしよう」

「当然の権利だな」

「しかし、なぜ私が君の道楽に付き合わねばならない」

「ふっ愚問だな」

「今イラッとしたから断ろうかな」

「ちゃんと話す、早まるな!」


めんどくさい変人だな。


「俺だって唯一の楽しみ、至福の時に、お前の顔を拝みながらなんて気が進まない・・・くっ、涙を飲むぜ」

「言ってくれるな」

「でも!このデカ盛りスウィーツ食べ放題は・・・カップル限定なんだ!」


その言葉に呆れる。


「アレだよ、ほら。生堂夏なまどうなつ君だっけ?彼を誘えばいい。わー、お似合い。ベストカップル」

「野郎同士で何がカップルだ!気色悪い事言うな!男女ペアじゃないとダメなんだよ」


くっ、生堂が女だったら・・・。

と、よく分からない悔しさに、唇を噛む慶喜野。


うっわ、気持ち悪。


何故こいつはモテるのか甚だ疑問だ。


女子達よ、外見に騙されるな。

こいつの中身は脳内サトウキビ畑だ。

好きになっても、君達の貴重な青春をドブに捨てるようなものだ。

外面に騙されるな。


私の女子達への哀れみの想いに気付きもせず、慶喜野は話を続ける。


「来てくれたなら、それなりの礼はする」

「・・・一応聞いておこう」


慶喜野が含み笑いをしながら自身のカバンをゴソゴソと漁る。


ムカツクから顔面ビンタしていいだろうか。


「ふっふっふ、これだ!!」


と、勢い良く取り出したのは一枚のチケット。

訝しげにそれを見つめ、目を見開く。


「『劇場版、絶対暴君・ペンギンス』試写会特別優待券・・・だと?!」

「お前、これ好きだよな」

「ふざけるな、好きなんてものじゃない、大好きだ愛してる」

「え、あ・・・ごめん」


慶喜野が引いたような目で見てくるが、関係ない。


ずっと欲しかったのだが、試写会の定員は既に埋まっていて、悔しさの余り血の涙を流しそうな・・・そんな状況だった。


「絶対暴君・ペンギンス」

それは主人公の皇帝ペンギン、ペンギンスを中心に、個性溢れる仲間達と、暴君への階段を駆け上がる子供向けの浪漫アニメーションなのだか、アニメーションという枠を超え老若男女を虜にする、それはそれはもう素晴らしい作品で、出演声優陣も実力派でその演技に目を見張るものがありそれもまた人を惹きつける要因となっているのだろう、来年ハリウッド化したとしても何ら不思議ではないほどの面白さに心を奪われた者は後を絶たない。そして波乱万丈の第二シーズンを終え現在第三シーズンを迎え、新たなキャラクターも加わり、なおかつストーリーが二転三転と変わり目が離せなく・・・。


「おい!帰って来ーい!!」

「はっ、私は一体」


慶喜野に揺さぶられ、はっとなる。


「で、行くのか?行かないの・・・」

「行く」

「随分とやる気があって結構結構」

「その代わりちゃんと約束通りそのチケットを渡せ。放課後までに紛失してみろ?死ぬより恐ろしい目に遭わせてやる」

「たった今俺の中でこのチケットの重要度が変わった」




そして、午後の授業も終わり、約束通り駅前の喫茶店へと訪れた。


そこで、私は今・・・魔境を目にしている。


店内に充満する甘ったるい香り。

視野を狭めるようにこちらを威圧する通常の二倍ほどの大きさと量をもつ菓子。

そして何より、店内に入った瞬間から人が変わったように瞳が爛々としている慶喜野に。


私はただただ恐怖していた。


「この生クリーム・・・ヨーグルトソースに合うように甘さ控えめでいて、生乳の風味を損ねず、互いの良き所を引き立てあっている!このスポンジの柔らかさと優しい甘み・・・シンプルな菓子は素朴さの中に確かな煌めきを宿す。確かにクリームやフルーツで彩った菓子も大変美味だが、シンプル・イズ・ベスト・・・それもまた個性なんだ。ああ、いちごの旬が今じゃないなんて誰が言ったんだ?こんなに見た目麗しく美しいものに旬なんて関係ないんじゃ無いのだろうか・・・旬のものがこれより美味しくなるという事があっていいのか・・・?

そうしたら俺はどうなってしまうんだ!?」


「どうにでもなればいいよ」


周りのカップル達の甘甘な会話にに負けず劣らず、この男の甘言に胃もたれしそうだ。


「良くそんなに食べるな・・・内臓器官、どれほど働いてるんだ。いつか絶対体壊すぞ」

「毎朝、毎晩ジョギング、ストレッチ、腹筋、腕立て伏せをしているからな!菓子を食べるため健康は維持している!」

「運動しても落ちない内臓脂肪とかもあるんだぞ」

「この間健康診断で体内脂肪測ったら6%だったぜ」

「一桁台ってアスリート選手並みじゃなかったっけ」


菓子を滞りなく摂取するために、肉体改造を既に済ませていたのか。

恐ろしい。


「っていうか、お前もせっかく来たんだ。なんか食べればいいだろ」

「生憎だが、目の前でそうガツガツ食べられると食欲も失せる」

「あっ、あれなんかお前好きそうだな」

「人の話を聞け・・・って、ちょっと」


慶喜野は席を立ち、私のためにお菓子を選びに行った。


全く、本当に菓子が関わると変人だな。

昔はもうちょっと可愛げがあったんだがな・・・。











私と慶喜野白が出会いは幼稚園の頃まで遡る。


数多くいた子供達の中で、私はその存在が埋もれていた。

今でこそ慶喜野白の幼馴染みとして知られているが、その当時の同じ幼稚園に通っていた彼等の殆どが、私のことなど知らないだろう。

無表情で無口、何を考えているかわからない、そんな影の存在の私のことなど、誰も気に止めなかった。


そんな中、慶喜野白は目立っていた。

否、目立たずを得なかった、といったところか。


当時から高度な対人スキルと、愛嬌のある顔を持つ慶喜野は、先生からも幼児たちからも人気者だった。

私とは正反対な存在。


幼心に、そう確信していた。



とある日の夕暮れ。



私はある絵本を読んでいた。

それは「おかしな王子様」という本。


お菓子の国の、お菓子の城に住んでいる、お菓子が大好きな王子様が、色々なお菓子を食べて、その感動を隣の国のお姫様に伝えるお話だ。

隣の国のお姫様はお菓子が嫌いで、嫌いなお菓子の話ばかりする王子様のことが好きではなかった。

しかし、王子様はお姫様もお菓子が好きになって欲しいと、毎日毎日話を続けた。

そして、ある時お姫様はついに王子様に怒ってしまった。


『そんなにおかしのはなしをするなら、わたしがたべられるおかしでももってきてみなさいよ!』


お姫様は、お菓子について楽しく語る王子様のことがだんだん羨ましくなってしまったのだ。

でも、自分はその気持ちを味わえないもどかしさから、王子様を怒鳴ってしまった。


その日から、王子様はお姫様の元に来なくなった。


お姫様は悲しんだ。

私があんなこと言ってしまったから、王子様に嫌われてしまったのだと。


別にお菓子が食べれなくても良かった。

楽しそうに話す王子様がいてくれればば、お姫様はそれで良かったのだ。

お姫様はシクシクと泣いてしまった。

すると、ひょっこり王子様は現れた。



『ごめんよ、きみがきにいりそうなおかしをさがすのにじかんがかかってしまった。よかったら、これ・・・』



王子様は可愛らしい小箱を取り出し、お姫様に渡した。

お姫様が蓋を開けると、そこにはコロコロと可愛らしい形の小さなお菓子が。


『かわいい!』


『よかった、気に入ってくれた?』


『うん、とても!』


お姫様はお菓子が嫌いだ。

けれど、王子様が自分のために選んでくれたそのお菓子を、どうして嫌いになろうか。

お姫様はそれだけで、そのお菓子がとても素敵に見えた。


『このおかしなまえは、なあに?』

『これはね・・・』




「なによんでるの?」

「・・・っ!!?」


顔を上げると、不思議そうに首を傾げる慶喜野がいた。


「あー!そのほんおかしのほんだね!あめちゃんもおかしすきなの?」

「えっ・・・う、うん」

「そっかーぼくとおなじだねー」


私ひどく驚いた。


「しろくん、なんでわたしのなまえしってるの?みんなわたしのなまえおぼえてないのに」

「えー、だって」


慶喜野はにっこり笑った。


「あめちゃんのなまえって、あまーいあめだまのあめでしょ?ボクあめすきだから!覚えちゃった!」


正確にはちがうのだけれど、私はその時とても嬉しかった。


自分の名前を呼んでもらえたこと。

名前を好きだと言ってもらえたことが、純粋に嬉しかった。


慶喜野は笑顔を浮かべたまま、尋ねる。


「あめちゃんは、どんなおかしがすきなの?」


私はその言葉になんて返事をしようと狼狽え、絵本を見た。


「わたしは!これがすきだよ!」











あれから、約10年・・・。

こんな変人とよく私も付き合っているものだ。

慶喜野の様子じゃ、あの時のことは全く覚えてないんだろうな。

やつの記憶は随時菓子のことで更新されていくからな、その為だろうか。


「持ってきたぞ」


と、慶喜野が席に戻ってきた。

相変わらずの態度にすこし苦笑する


「まったくもって押し付けがましいな。いいと言っているのに」

「せっかくこんな幸せな場所に来たんだ。少しくらい俺の幸せ分けてやるよ」

「ありがた迷惑だな」


と、テーブルに置かれた皿を見て、目を瞬かせる。


「これ・・・」

「ん?お前それ好きだろ?」


私が特別に好きな菓子は実を言うとない。

しかし、私が思い入れがあるお菓子ならある。


「マカロン好きとか、結構お前も話がわかるじゃないか」


あの絵本の王子様がお姫様に渡した、あの日、あの時、私が白に慌てて言った、あの出会いを象徴するお菓子。


色とりどりの、コロコロとした可愛らしい、特別なお菓子。



「・・・・・・」

「なんだ、これも気に入らないのか」


そう言いマカロンの皿に伸ばそうとする手をぺチンと叩く、


「イテッ」

「人のさらに手を出すんじゃない・・・これは私のための献上品らしいからな、君の意を汲んであげよう」

「うっわ、偉そうな態度・・・んっ?なんでお前機嫌良くなってるんだ?」


不思議そうにこちらを見る白。


「ふふっ」


覚えてない癖に、覚えていたということか。

それがなんだか面白くて、笑みを漏らす。



『わたし!これがすきだよ!』

『まかろんぼくもすきだよ!』

『うん、とっても、とっても』



『とっても好きなんだ!』



「何でもないよ」


マカロンを一口頬張る。

その優しい甘みが口の中に広がり、なかなか悪くない気分だった。

水野雨ちゃんは私の中でだいぶ可愛い部類に入りますが皆様は如何でしたでしょうか?

容姿の指定をしたほうがいいのか、皆様のご想像に任せるか、悩んでおります。

彼らの容姿の件や、このシリーズの感想があれば、コメントして頂くととても有難いです。


ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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