第5話 一般人は吸血鬼
「…貴方が私に魔法を?」
「そうだ」
「…伝承には勇者の世界には魔法が無いと記されていたのですが…」
「それは多分今まで魔法を知ら無い奴ばかりが呼び出されてただけだろ」
「…え?」
「聞くが今まで召喚された奴はどれほどいる?」
「…伝承では今回を除いて二十人に満たないと」
「そりゃ呼び出されて無くても不思議じゃ無い。なんつっても元の世界じゃ人間の魔術師の総人数なんて五百に届かないくらいだからな。第一向こうじゃ魔法は秘匿されてる技術だし」
「……」
リーシアは驚きの余り押し黙る。
「…で、どうする?俺に魔法の教えを請うか、それとも…一生足手纏いで終わるか…」
「…その前に貴方が魔法を使えるかどうか見せて下さい。それで判断します」
「…は?」
霧与はリーシアの物言いに思わず唖然とする。
そして…
「ぷっ…あははははは!!!」
「なっ何が可笑しいのですか!」
「いや何、ビクビクしてるだけのチビっこかと思ったらなかなか言ってくれるじゃないか」
「チビっことはなんですか⁉︎チビっことは!」
霧与はひとしきり笑うと…
「なあチビっこ気付いてるか?」
「…何がですか?」
「周りが余りにも静か過ぎる事に」
「ッ⁉︎」
確かに余りにも静か過ぎる。
「『位相結界』と言ってな、ある媒介を使って位相空間を作り本来の空間と不干渉状態にする。許可のある者の転移でのみ行き来が可能な結界空間だ」
「いっ何時転移したのですか⁉︎」
「俺が勇者召喚実行の理由を聞く前だ。流石に誰かに聞かれたら事だろ?まあ最初は話しが終われば位相結界の事は話さず気付かせず戻るつもりだったけどな。となりゃこの幻術も解いていいか」
霧与はそう言うと指を鳴らす。
すると景色が歪み…現れたのは左右逆の世界。
「そこの池の景色を媒介にしたからな。広さはガドルタと同じで生き物は居ないし植物もハリボテだ」
「…全く魔力を感じませんでした。それにこれ程の空間を作るには媒介を使ったとはいえ膨大な魔力と技術が必要な筈です。それを私に気取られずに作り上げ、転移し、幻術をかける…貴方は一体何者なのですか…?」
リーシアの疑問を聞いた霧与は不敵に笑う。
「俺か?俺は異端の吸血鬼だ」
そう言って吸血鬼特有の牙を見せつけた。
「異端の吸血鬼?」
「人間と吸血鬼の間に生まれた混血の事だよ」
「キュウケツキ?」
「ああ、人間の生き血を吸うと言われてる化け物だ」
(さて、どういった反応をするかな)
霧与は多分怖がるであろうと考えていた。
しかしリーシアはそれを聞くと目をパチクリさせ疑わしそうに霧与を観察する。
(…なんだ?)
予想外の行動に霧与は唖然とする。
それから1分たちようやくリーシアは口を開いた。
「思えません」
「…は?」
「キリヤ様は人の生き血をすする方には思えません」
「……」
「確かにキリヤ様は口は悪いですし、目上の人に対する態度はなっていません」
「うるせえ、ほっとけ」
「ですが本当はお優しい方だと私は思います。そうでなければ勇者召喚の事をそう簡単にお許しにならかったでしょうし、何より私に魔法をご指導なさるとはおっしゃらないでしょう」
「…チビっこ、お前は勘違いをしてるぞ。勇者召喚の事はもう終わった事だ。過去の事をぐだぐだ言ったって仕方がないしまず第一面倒臭い。それに魔法を教えるのはお前にもしかしたら類稀なる才能があるかもしれないという一種の希望観測だ。才能がゼロだと分かったら即刻やめるからな!」
リーシアは一瞬キョトンとしたが急に下を向いてクスクスと笑い出した。
「…面倒な事がお嫌いで素直でないお方でもあるのですね」
「…好きに言ってろ」
(クソ、調子狂うな)
霧与は心の中で毒付く。
「で、どうすんだ。やるのか?それともやらないのか?」
「やります。どうかご指導よろしくお願いします」
リーシアはそう言って頭を下げる。
霧与の魔法の一番弟子が生まれた瞬間であった。
しかし霧与は知らない。
この少女が後に大魔導師となり霧与と共に世界の危機に立ち向かう事を…。
そして彼女がのちに霧与にとって大きな存在になる事を…まだ知る由も無い。
バトルはもう少し先の予定です。
もうしばらくお待ちください。




