第1話 気が付けば異世界
ここから5話を一気に投稿します。
(…どうやら着いたみたいだな)
霧与は魔法陣の光が止むと同時に辺りを確認する。
まず目に入ったのは石造りの床。
どうやらここは屋内ようで石造りの部屋のようだ。
そして足下に魔法陣が描かれている。
自分をここへ連れてきた魔法陣だった。
次は例の三人組。
こちらは気を失っていた。
命に別状は無い様なので後回しにする。
最後に目に入ったのは人間だった。
白いフード付きのコートをきた中学生くらいの少女と明らかに訓練を積んできたと分かる兵士が十人。
(あの女は魔術師だな。魔力からしてここへ連れてきたのはこいつだろ。後ろのはどっからどう見ても中世ヨーロッパの兵士のコスプレ…じゃ無いよな。それに…)
霧与は魔力探知の範囲を世界中に広げた。
(やっぱりオヤジの魔力を感じ無い。他の吸血鬼のも。となるとここは…)
異世界
そんなフレーズが霧与の頭の中をよぎる。
異世界の存在は父親であるアルゼス スパードから聞かされてはいた。
(しかしまさか俺が異世界に行く事になるとは…。)
「あの…」
(俺は吸血鬼としてじゃなく人間として生きたいってんのになんでまた…)
「あの…」
(元の世界でもイチャモン付けてくるバカな吸血鬼も多かった。あれか?俺はそういう星に生まれちまったって事か?)
「あの!」
「…なんだよ」
ようやく霧与は魔術師らしき少女の言葉に耳を傾けてる。
その少女の髪は初雪を思わせる柔らかい白色で顔も幼いながらも整っており文句無しの美少女だった。
「っつう」
っとそこでうめき声。
三人組の内、イケメン男子が早くも目を覚ましていた。
「ここは…確か変な光に捕まって…」
そう言いつつ視線を霧与に向けた。
「オマエは確か…」
「ああ、さっき廊下ですれ違ったよな」
「どういう状況なんだ?」
「さっき光が収まったばっかだからわからん」
「そうか」
すると霧与は、
「そういやあんたの名前何だっけ?」
と的はずれな質問をした。
「…は?」
「だから名前だよ名前」
「そういや話したことなかったよな。俺は佐山圭人
だ」
「俺は…」
「矢嶋S霧与だろ。名前が印象的だったから覚えてる」
(嫌味かこいつ)
霧与は圭人の言いように内心で毒づく。
「ううん…」
「…ここは?」
そうこうしている内に残りの二人も目が覚め、何故か自己紹介をすることになった。
…二人も霧与の名前を知っていたので一方的なものだったが。
活発な女子は桑崎由花、冷静沈着なメガネは多賀貴一。
三人は幼馴染みということだ。
「え?矢嶋くんって入学してからクラスじゃ誰とも話して無いの?」
「…まあな」
「それじゃあ高校生活損してるよ!エンジョイいなきゃ」
「別に今のままでもいい」
「今のままでもいいって、ダメだよそれじゃ!絶対後悔するよ」
「静かな高校生活を送りたいんだ」
「静かな高校生活を送りたいのは分かるけど…でも!」
自己紹介が終わると由花が霧与に何故か説教をし始めた。
どうやら霧与のクラスでの過ごし方に異議があるようだ。
圭人と貴一は苦笑しながらやりとりを眺めるだけ。
止める気はなさそうだ。
「…あの…そろそろよろしいでしょうか?」
(あ…忘れてた)
気付いても時既に遅し。
霧与は気まずい感情を押し殺して振り返る。
兵士達はおいてけぼりをくらって呆然としていたのでよしとする。
しかし魔術師の少女に至っては眼に涙を貯めていた。
(あちゃ〜)
「その…すまん。完全にコッチに気を取られちまって…」
「…いいのです。どうせ私は存在感の薄い女です。忘れ去られても仕方のない事なのです」
(ダメだ。完全にいじけちまってる…)
霧与が思わず額に手をやったその時、
「リーシア‼︎」
部屋のドアが勢い良く開かれ、ドレス姿の少女が飛び込んできた。
彼女もまた魔術師の少女と同じく髪は白、凜とした雰囲気を醸し出しているが顔立ちが何処と無く魔術師の少女に似ている
「お姉様…」
「リーシア、ねえどういう事⁉︎勇者召喚を行うって。あれがどれだけ危険な魔法か分かってるの⁉︎」
「分かってます。でも…」
「ええ分かってるわ。帝国や教会が『勇者召喚を行え』って言って圧力をかけて来てる。でもこれは失敗したら魔力が暴発して最悪術者が死んでしまう事だってあるの‼︎」
「覚悟の上で行いました」
「お父様だって無理強いするどころか止めるよう貴女に言ったはずよ。なのにもう行ってしまったなんて…ってちょっと待ちなさい」
ドレスの少女は目を見開き魔術師の少女の肩を掴む。
「何で過去形なの」
「何でと言われましても…」
魔術師の少女は霧与達に目を向る。
「成功したかは分かりませんが、ひとまず勇者召喚は先程無事終えました」
「…ウソ」
(…面白い女だな)
先程の会話で重要な用語が出てきたにも関わらず、霧与は仕切りに笑いを押し殺していた。




