プロローグ
「…はぁ」
人気のない放課後の廊下に落胆のため息が響いた。
ため息を吐いた生徒は気怠げに廊下を歩く。
黒の癖っ毛に眠そうな目。
何処にでもいそうな少年の名は矢嶋S霧与。
見た目や態度からは想像もつかないが吸血鬼と人間のハーフで、その実力は吸血鬼の中でも上位に位置する。
「あ〜…、かったるい」
…本当に全然そうは見えないが。
彼が今学校にいるのは忘れ物をしたからだ。
それが無ければ明日提出の課題ができない。
意外と真面目なのかと思われがちだが…
「提出しないとあのゴリラが面倒だからな」
…とまあ彼の行動原理は「面倒臭い事は避ける」と典型的な面倒くさがりのそれな訳だ。
こんな性格のため友人は少ないし高校に上がってからは一人もいない。
まあ本人は気にしていないが。
教室のプレートが見えてくる。
(さっさと取って帰ろう)
そう霧与が思った矢先、
「もう!何忘れ物してんの⁉︎」
「悪い!」
(…先客か?)
霧与の予想どうり3人の男女が教室から出てきた。
少し日焼けしたイケメン男子と活発そうな女子、冷静沈着という言葉が似合うメガネの男子。
彼らはクラスでも仲の良い3人組として知られていた。
しかし霧与は、同じクラスである事は知っていても話した事がないので彼らの名前を知らない。
3人組も霧与に気付きはしたが、話し掛ける事はせずそのまますれ違う。
っとその瞬間、
ブオンッ!
突如廊下の床が光る。
「え?」
「うお⁉︎」
「ッ⁉︎」
「何だと⁉︎」
3人組は訳が分からずパニックになっていたが、霧与はこの光に見覚えがある。
(マジックサークル?いや魔法陣か⁉︎)
すぐに離脱しようにも光に足を取られる。
どうやら拘束の効果があるようだ。
(引き千切ることも出来るが…)
この魔法陣には膨大な魔力が込められていた。
崩壊すればその魔力が行き場を無くし爆発することもありえる。
しかし…
(この魔法陣、拘束だけじゃないな。転移や見た事も無い術式も多く組み込まれていやがる)
そう、このままではどこに飛ばされるかわったものでは無いし飛ばされた先で何が起こるか分からない。
(脱出したいのは山々だが…)
霧与は3人組に目を向ける。
男2人はなんとか全員で脱出する手立てを探している様だったが、女子に至っては完全にパニックになっていた。
そうこうしている内に転移の術式が発動する。
(クッソ!どうにでもなれ‼︎)
霧与はヤケクソに目をつむった。




