表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
ノックル&ビケル編
96/132

第95話 「押し問答みたいだ」

 この学校と寮は隣接している。いくら学校が広いと言っても、校門から寮までは歩いて約15分ほど。

 でも、この時ほどその距離が遠いと感じることはなかっただろう。


「はあ。はあ」


 俺は、必死で走って寮の入り口まで着いた。


「シュラ。お前、何でここに」


 ちょうど、出てきたところなのだろう。荷物を抱えたビケルが、驚いた顔で俺を見ている。


「はあ。いや、ちょっと、お前。はあ」


 くそ。この小さい身体が情けない。あの距離を全力疾走したくらいで、息が切れてやがる。


「落ち着け。何してるんだ、お前。もう学校始まってるだろう」


 何でこいつは、こんな時も人のことばっかり考えるんだ。そういえば、出会った時も、仲間になってくれた時もそうだった。


「違うだろ! 今は、俺のことじゃない。何で、急に学校を辞めるんだ! お前がいなくても大丈夫って、どういう意味だよ!」


 俺はビケルに詰め寄って、胸倉を掴もうとした。が、大きい図体のこいつの胸倉なんて俺の手が届くわけがない。


「ちっ」


 とりあえず逃がさないのが目的だからな。腹辺りで妥協しとこう。


「一番初めに仲間になってくれたじゃないか! やっと全員、仲間になってくれたんだ。これから見返すんだ。そんな時に何で」


「だからだよ」


「え?」


 俺は、ビケルの顔を見つめる。ビケルも俺の顔を見つめ返す。その顔は自分を責めている顔でも、悲しんでいる顔でもない。いつものビケルの顔だ。


「全員仲間になったんだろう? なら、俺はいらないじゃないか」


 こいつは、この言葉を本気で言っている。


「何言ってるんだよ。そんなわけないだろ!」


「シュラこそ何言ってるんだ。俺は、誰からも必要とされない。必要とされるわけがないんだ」


 ビケルは、本当に不思議そうな顔をしている。


 不思議そうな顔をしたいのはこっちだよ。どういう意味だ。必要とされない人間なんているわけないじゃないか。

 俺はもう、こいつに何を言っていいのか分からなくなった。


「話しはそれだけか? もう行くぞ」


「あ、おいちょっと待てよ。俺と仲間になってくれたのは」


 あれは、嘘だったのかよ。


「あれは、お前が大変そうだったから手伝うって意味で考えに乗るって言っただけで。別に仲間になるって意味じゃあ」


 なんだよそれ。初めから仲間じゃなかったのか。


 ちょっと待て。そういえば、ホセが。ビケルが仲間になったことに対して疑問を抱いてたけど。あいつ、もしかして何か知ってたのか?


「やっぱり、ビケルは仲間になんかなってなかったんですね」


「え?」


 俺は、来た道を振り返った。


「お前らまで。何で」


 学校が始まって数十分。学校の外。寮の前。

 そこにDクラスの生徒が勢ぞろいしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ