第94話 「終わりじゃなかったんですか」
朝っていうのは誰にでも平等にやってくる。どうあっても日は昇るし、学校は始まる。
「はよー。ビケル、いるか?」
今日は確か鍛錬の日だったよな。多分、全員教室にいると活き込んで来たけど。
「おはよ。シュラ」
「おはよう、シュラくん」
キャメルとソディーが仲良く挨拶してくる。ホセは本を見ているけど、あれヒーラの魔法だよな。相変わらず、俺の心覗いてんのか。
ノックルは、机に顔を伏せている。そういえば結局、後5発って意味聞いてなかったな。俺の手を掴んでくれたことで舞い上がって。俺の考えを実行する前には聞いとかなきゃな。ノックルの力は不可欠だろうから。
んで、ビケルは。
「あれ? ビケルは?」
「まだ来てないけど」
「来てないって。もう先生来るだろ」
俺は寝坊してギリギリに寮を出てきたはずだ。ちなみに、ユアンは起こしてくれなかった。薄情なやつだよ。
「はい。席ついてー」
言ってるそばから来たし。
「今日は鍛錬の日です。では、かいさ…」
「ちょっと待てよ、アンディー先生。ビケル来てないけど」
いくらこいつがDクラスをバカにしていようが。ノックルを見捨てていようが。担当クラスの生徒が来ていないんだから進めちゃダメだろ。
「ビケルは学校を辞めました。ああ、そうだ。シュラ、言付けを頼まれています」
「はぁ?」
何で、急に。
「もう俺がいなくてもいいだろ。Dクラスを頼んだ。だそうですよ」
「な!」
んだよ、それ。どういうことだよ!
「ホセ!」
「ビケルはまだ寮にいますよ」
さすが、天才。俺の言いたいこと分かっている。
「あ、シュラ! どこに行くんですか。辞めた人のことまで構っていると、あなたまで落ちこぼれになりますよ」
アンディー先生は、俺を止めようとしてるんだろう。でも、そんな言葉逆効果だ。
「あんたにとってはそうでも、俺にとってDクラスの生徒は全員大切な仲間なんだ! みんな必要なんだよ!」
アンディー先生だけでなく、他の生徒の呆気にとられた顔を横目で見ながら、俺は教室を飛び出した。