第92話 「意外なやつだよ」
ノックルは差し出した手を見つめている。
「あ」
「ん?」
ノックルが何か言葉を発した。
「ありがとう」
今度は、はっきりと聞こえる。
ノックルは赤くなった顔を下に向け、小さくお礼の言葉を発した。
なんだ、こいつ。ツンデレか? ツンデレなのか?
はっきり言っていい? 男のツンデレなんて、気持ち悪いんだけど。どうせなら、マリアのツンデレを見たい。
「シュラ?」
おっと、そんなこと考えている場合じゃなかった。
お礼を言ってきたってことは、俺の言葉を受け入れたって考えていいよな? 手は掴んでもらってないけど。
「仲間って、思っていいのか?」
俺は、軽く手を振った。
「あ、うん。手、掴めなくて悪い。また傷つけると思ったから」
俺の手からは、まだ腕を掴んだ時の傷が残っている。
気にしてくれたのか。本当に、見かけ倒しなやつだよな。恐い見た目に、優しい心を持ったやつだよ。
「ふっ。もったいないな。アンディー先生もケイトも。お前を恨むなんて」
こんなに優しいやつを見捨てるなんて。
「それは、俺が悪いから」
やっぱり、そう簡単に罪悪感はなくならないか。
だけど、仲間になってくれた。これで、Dクラスをバカにしているやつらを見返してやる。
まあ、どうやって見返すかなんて考えてないんだけどな。