第9話 「俺にとっては大きな一歩」
どの世界も、大人っていうのは頭が固くて困る。
「な、何を言っているのですか! シュラ様。それは不可能だと」
「不可能かどうかなんて、誰にも分からないだろ? それに」
「それに? なんですか?」
「いや」
危ない。俺が転生したことを言いそうになった。
漫画やゲームだと、転生した者はたいていチートなんだが。あいつは特に何も言ってなかったし。地道に努力するしかないか?
「俺はまだ5歳だ。何に適正があるか分からない。だからとりあえず、全ての力を平均にはしたい。これなら、いいんだろ?」
もちろん、平均で終わらすつもりはないが。
「分かりました。では、魔法、剣術、学術を並行しておこなっていきましょう」
リュンは諦めたようにため息を吐いた。
「よっしゃ!」
「とはいえ、私が教えられるのは魔法と学術くらいです」
「ん? 剣術はどうすればいいんだ? 父上と母上にばれないように習わなきゃいけないから、外には出れないぞ」
「私に当てがあります。しかし、あいつに頼るのは」
リュンが苦い顔をする。
たいていのことは涼しい顔でこなすリュンに、こんな顔をさせる相手がいるのか。興味がわいてきた。
「そいつに頼んでくれ。頼む、リュン」
「分かりました。では、シュラ様。明日から修行を始めます。よろしいですね?」
「はい!」