第81話 「誰か俺に女子の手の放し方を教えてください」
俺は、掴んでくれたソディーの手を放すタイミングをうかがっていた。
「それでね、キャメルちゃんが言ってたの」
いくらもう放課後だと言っても、学校から寮への帰り道。誰に見られるか分からない。
現に、いくらか後ろにはサンがいるはずだ。
「シュラくんは、信頼できるよって」
ソディーは俺の複雑な想いに気付かずに楽しそうにしゃべっている。
良かった。警戒心は全く取れたようだ。だから、そろそろ手を放しても大丈夫かな。
「あのさ、ソディー。そろそろ手を」
「あ、ホセくんもね。シュラくんのこと話してたの」
うお。遮られた。
ん? ホセ? そういえばさっきもホセがどうのって。
「ホセについて、何か知っているのか?」
「知ってるも何も。ホセくんは、私の幼馴染だよ」
「は? 幼馴染?」
そんなの、一言も聞いてない。いや、別に俺に言う義理もないかもしれないけど。そんな素振り見せなかったじゃん。
「幼馴染って言っても、他にも数人いるんだけどね。同じ場所で育って、同じ時期に学校に入ったの」
「でも、仲良くないよな? 俺、ホセとソディーが話しているところ見たことないけど」
「うん」
ソディーは、悲しそうにうつむく。
あれ? これ、触れちゃいけないやつだったか?
「ホセくんは、本当は優しい子なの。でも、あの事件で変わっちゃった。多分、私と仲良くしないのは罪滅ぼしなんだと思う」
あの事件っていうのは、ホセがDクラスに来ることになった事件だよな。ソディーと仲良くしないことが罪滅ぼし?
「どういうことだ?」
「これ以上は、ホセくんに直接聞いたほうがいいと思う。お願い、シュラくん。私たちを助けてくれたように、ホセくんのことも、過去の呪縛から助けてあげて」
そりゃ、言われなくても。
「もちろん、そのつもりだ」
ソディーは、安心して寮に戻っていった。
さて、ホセに話しを聞きに行かなきゃいけないな。ぶっちゃけ、明日でいいとか思ってたけど、ソディーの話しを聞いてたら気になってきたし。
「ただいまぁ」
しかし、ホセの部屋って知らないんだよな。
「おう、お帰り。遅かったな」
「あ、そうか。ユアン。お前、ホセの部屋知ってるか?」
そうだった。ユアンはホセの知り合いだ。
「知ってるけど。ああ、でも今の時間なら屋上にいると思うぞ」
「屋上だな。分かった。あ、ユアン。ホセに頼んでくれたんだってな。ありがとう!」
さすが、ユアン。頼りになる。