第77話 「こいつには聞きたいことがたくさんある」
「さて、頼まれた分は、仕事をしますかね」
頼まれた? 一体誰に。
「おい。ホセ。助けてくれたのは感謝する。でも、もういいよ。俺の問題だ」
「本当に、あいつの言ってた通りですね。1人で抱え込むなって言われたばかりなんじゃないですか?」
ホセは呆れた口調ながらも、目線はきつく男たちの方を向いている。
その言葉。最近誰かにも言われた気がする。もしかして、ホセに頼んだのって。
「おい。誰だよ、お前。邪魔すんな」
「僕は、ホセ・エミリオ。邪魔してはいけないなんて約束は、してないですよね?」
最後の問いは、俺に向けられていた。確かに、俺が相手になると言っただけで、そんな約束はしていない。
俺は、無言で頷く。
「だそうですよ」
「ちっ」
「おい。ホセ・エミリオって言えば、確か元Aクラスの魔法使いじゃ」
元A? ホセが?
「あの事件があってDクラスに落とされたって聞いたけど、本当だったみたいだな。それにしても、Dクラスの人間と仲良しこよししてるとは。うわっ」
男たちの足元から火柱が上がる。いつの間に魔法を使ったんだ。
「まだ喋ってる途中だろうが!」
「あなたたちのバカ話しなんて聞きたくありません。さっさと、終わらせますよ」
ホセの右手に、大きな火の玉が浮かぶ。
「お前の相手なんか出来るか。おい! 今日はもう行くぞ! これで終わりだと思うなよ」
なんか、悪人らしいセリフだな。
でも、去っていってくれて。
「良かったぁ。助かったよ、ホセ」
俺1人じゃ、確実に怪我はしてたな。下手すれば重症だ。俺は尽力はそんなに高くないし、助かった。
それにしても、助けないって言ってたのに。どういうことだ。
「僕は、頼まれたから助けただけです。あなたにお礼を言われる筋合いはありません」
「もしかして、ユアンか?」
「ええ。僕は、ユアンに借りがあるので」
ユアンに借り? 意外だな。
「聞きたそうですね」
ばれた。なら、隠す必要はない。
「聞きたいさ。どうして、そんなに魔法を使えるのに法術に興味ないのか、とかな」
「相変わらずの好奇心。めんどくさい王子様ですね」
ホセは、やれやれといった感じで首を横に振る。
「僕はヒントは与えたつもりですよ。どうすれば、あなたの手を取るか」
ヒント? 以前に仲間になりたいって言った時のことか?
「大切な人を守れないくせにっていう、あれか」
「そこまで分かっているのに、まだ僕に関わるんですか? まだソディーの手も掴めてないのに」
攻略対象でいうと、ソディーを先にどうにかしないとホセは仲間になってくれないってことか。
なんか、ゲームみたいだな。
「ソディーが俺の手を掴んでくれたら、お前も聞きたいことを教えてくれるんだな?」
「僕は、2度も同じことを言うのは嫌いですよ」
嫌な言い方をするやつだ。
この際、どうして現在のソディーとの関係を知っているのかはどうでもいい。それも、後で聞きだしてやる。
「その言葉、覚えておけよ!」
もう一度、ソディーに手を差し伸べるまでだ。