第75話 「タイミングの悪いやつらだ」
「では、これで授業を終わります」
全然、頭の中入って来なかったな。
何で、こんなに無界のことが気になるんだろう。そういえば、ホセは教師が近寄りがたいほど賢力が高いって言ってたな。
真偽は分かんないけど。
「なあ。ホセ。お前、無界について何か知っているか?」
ホセは、相変わらず本に目を向け、こっちを見ようともしない。
お前に話しかけてるんだっての。
「おい。ホセってば!」
あ、やっとこっち向いた。すごい、不機嫌だけど。
「何で、そんなに無界について知りたがるんですか?」
「そりゃ」
何でだろう。
「自分でも理由が分からないのに、僕を巻き込まないでくれませんか?」
「お前な。分かんないけど、でも知りたいと思ったんだよ。いいだろ。教えてくれても」
ホセは、ため息を吐く。
ため息を吐きたいのはこっちなんだけど。
「分かりました。この前はちゃんとソディーを守れたみたいですし」
何で、知ってるんだ。まあ、ホセのおかげなんだけど。
「守り方は、下手くそですがね」
一言多いんだよ。
「無界っていうのは」
「シュラ・イレーゼル!」
突然、自分の名前が呼ばれて身体が反応する。
え? なに? だれ?
声のしたドアの方へ目を向けると、そこには男が3人立っていた。
「お前が、シュラ・イレーゼルだな? キャメルの代わりになってくれるんだろ」
「お前ら、Bクラスのやつらか」
時刻はもう放課後。それにしても来るのが早い。
せっかく、ホセが教えてくれる気になったのに。
「僕は、助けませんよ」
ホセの、冷たい声が聞こえた。
は? 今さら何言ってんだ。そんなの。
「当たり前だろ。これは、俺の問題だ。ホセを巻き込むつもりはないよ」
「おい、なにごちゃごちゃ言ってんだ」
3人か。微妙な人数だな。怪我は避けられないか。
「ああ。悪かったな。ほら、ここじゃ目立つし。行こうぜ」
俺は、3人と共に教室を出た。
出る直前に見たホセの茫然とした顔が、なぜか頭の中に残っていた。