第74話 「リュンはそのこと教えてくれなかった」
すでに、俺の身体はぼろぼろだった。
「大丈夫ですか? シュラ」
アンディー先生が、心配して問いかけてくる。むかつく先生だけど、こういう所はちゃんと先生なんだよな。
「あー。大丈夫です」
あれから昼休みが終わるまで、ずっとじいさんの攻撃を避けまくっていた。と言っても、俺は剣も何もなし。そんな状態で全て避けきれるわけがない。
容赦なく迫ってくる攻撃は、俺の身体を疲れさせた。
だけど、授業を休むわけにもいかない。
「先生。始めましょうよ」
唯一、学術の授業だけには出るホセが、俺の状態を気にせず進める。
「分かりました。では、前回の続きです。この世界は、神様が作られた。そこまでお話ししましたね」
そういえば、前回俺サボったな。まあ、その話しはリュンに習ったことあるからいいけど。
「しかし、神様が作られた世界は、1つではありません」
「え」
俺の意識が一気に覚醒する。
その話しは聞いてない。
「どうしました? シュラ」
「あ、いえ」
ホセが睨んでくる。授業の邪魔をするなとでも言いたそうだ。
お前、どうせ知ってるんだから別にいいじゃないか。
「では、ホセ。神様が作られた世界は?」
「僕たちがいる地界。神様たちがいる上界。そして、無界」
「正解です」
無界?
「あの、無界って何ですか?」
「それは、解明されていません。確かに存在するとは言い伝えられていますが、無界に何があるのか。どこにあるのか。誰も知らないのです」
なんだ、その不確かな感じ。
無界か。嫌な予感しかしないな。俺を転生させたのは神様に関係あるやつかと思ってたけど、案外、無界の方が関係あるのかもしれない。
「次の話しに行きますよ。神様が作られた3つの人種。ヒューマニー、チキナー、コナーについてです」
それからもアンディー先生の講義は続いたけど、俺の頭の中は無界のことが支配していた。