第69話 「これは必要なサボりである」
そういえば最近、まともに授業に出てないな。ふと、心の中でそう思った。
「キャメル。ソディーは、体調悪いって言ってたんだよな?」
旧校舎に向かう俺の隣にいるキャメルは、まだ思い悩んだ表情をしている。
「おい?」
「手紙があったの。私の部屋に。今日も体調悪いから休むねって。ごめんねって。何で、私、確認しなかったんだろう」
手紙。なら、直にソディーに会ったわけじゃないのか。
「悩むのは後だ。着いたぞ」
旧校舎3階。まだ昼なのに、暗い雰囲気を醸し出している校舎の中で、唯一明りのついた部屋があった。
あれか。
「行くぞ」
俺は、ドアを開けた。
「おら! 大人しくしろよ!」
「そっちが約束破ったんだ。当たり前だろ」
教室の中では、3人の男子がソディーを取り囲んでいる。その後ろには、1人の女子がいた。
「来たよ」
女子の方が呟く。
「ちっ。早かったな」
男子がソディーから離れた。
「ソディー!」
俺たちは、ソディーの無事を確認しに行く。
衣服は乱れているが、どこも怪我した様子はない。
「キャメルちゃん。シュラくん? どうして、ここに」
床にへたり込んでいるソディーは、俺たちの顔を茫然とした表情で見つめていた。
「それはこっちのセリフだ。おい。ソディーを呼び出してどうするつもりだったんだ」
俺は、女子の方を向いて言った。何となく、あっちの方がボスっぽい。
「キャメルが約束破ったからよ。あんたが何者かは知らないけど、邪魔しないでよ。下手にくび突っ込んで、痛い目見たくないでしょ」
やっぱり、そういうことか。昨日の今日で早すぎる。
「お前は、Bクラスの生徒か?」
「そうよ?」
「俺は、Dクラスのシュラ・イレーゼル。このいじめに加担している全員に言っておけ。キャメルとソディーの代わりに、俺が相手になると」
くびを突っ込むなだと? 今さら遅すぎる。ここで、降りれるわけないだろ。
「ふん。かっこいいのね。後悔しないようにね。行くわよ!」
4人の生徒は、教室から出て行った。
「シュラ。あんた」
「これで、もうキャメルとソディーが傷つくことはないだろ?」
キャメルの心配に、俺は精一杯の笑顔で応えた。
「でも、何で。私なんか助けても意味ないのに」
「意味ないことなんかない!」
ソディーの身体が、びくっと震える。
「あ、大声あげてごめん。でも俺は、ソディーと友達になりたいんだ。仲間になりたいんだ。だから、助けた。もう、傷つかなくていいんだ」
俺は、床に座っているソディーに手を差し伸べた。