第63話 「どの世界でも」
キャメルが不死身という噂は、Bクラスだけでなく、力を求めていたCクラスにも広がり、Bクラス、Cクラスを中心とした生徒に練習台にされたらしい。
「ある事件ってなんだよ」
「私が練習台にされているからって、ソディーが安全ていう意味ではなかったの」
ということは。
「ソディーもいじめられていたってことか?」
キャメルは無言でうなずく。
「そして、それを私が気づいた時には、ソディーの心はすでにぼろぼろだったの」
ソディーの姿が思い浮かぶ。
幼いころから蔑まれ、そしてこの学園に来てもいじめられる。そりゃ、あんな性格になるよな。
「だから私は、交換条件を持ちかけた」
「交換条件?」
「ええ。私がいつでも練習台になる代わりに、ソディーをいじめないでって」
なるほど。
「相手は、それを引き受けた。でも、そこから私への練習がエスカレートしていったの」
「それが、事件と繋がるのか?」
「ある日。ある生徒が言った。私がどれくらいまで耐えられるのか実験しないかって」
それは、相手が人間でないなら妥当な発想なのかもしれない。でも、相手はキャメルだ。
「そして、私を屋上から落とそうとした」
「え!」
どの校舎も4階建て。キャメルはヒュマニーだし、屋上から落ちたらただでは済まない。下手したら、死ぬ。
「もちろん。私に拒否権はない。そして、落とされた」
キャメルは、淡々と語る。
「ど、どうなったんだ?」
「私も死ぬかと思ったわ。でも、ソディーが助けてくれたの」
そうか。ソディーは、チキナーだ。空を飛ぶくらいなんてことない。いつか、ユアンが俺を助けてくれたように。
「その時のソディーは、見たことのないくらい怒っていた。私を屋上に降ろして、落とした生徒たちに立ち向かえるくらいに」
あの、おどおどしたソディーが。
「でも、力はどう考えてもあっちの方が上だろ」
「そうなの。だから、ソディーは攻撃を受けた。それを見て、私思わず」
「反撃してしまったんだな?」
キャメルがうなずく。
元々、キャメルもBクラス生だ。それも、自分で言ってたように、上の方。おそらく、尽力だけでなく、他の能力もほどほどにあるのだろう。
「さすがに、屋上で相手を怪我させてしまったから、先生に隠すことは出来なかった。怪我の具合から見て、私とソディーの方が悪いってことにされたの」
「そんなの! 先生たちは、話しを聞いてくれなかったのか?」
「仕方ないのよ。この学園でケンカは良くあること。いちいち事情を聴いていたら、対応できないわ。怪我させた具合で、判断するしかないの」
なんだよ、それ。理不尽だ。
「そして、私たちはDクラスに落とされた」
「でも、お前へのいじめはまだ終わってないじゃないか」
そんな事件があったのに。
「あいつらは、私たちがDクラスに落とされただけじゃ、満足しなかったのよ」
キャメルは、顔を歪ませた。