第62話 「そんな簡単な問題じゃないのかもな」
ソディーとキャメルがいつも一緒なのは、クラスが一緒の女子だから。
キャメルがあいつらに攻撃されていたのは、キャメルが不死身だから。
そんな簡単な物語なんだと思ってた。だけど、どうやら違ってたみたいだ。
「私とソディーは、元々同じクラスだったの。私がこの学園に来て1年経った2年前。ソディーがBクラスに入学してきた」
それは、魔法の先生も言ってたな。でも、確かソディーは全ての能力値が低かったはずだ。それで、Bクラスに入れるものなのかな。
「ソディーはね、全ての能力値が低いのにBクラスに入学したの。でも、彼女にはチキナー特有の能力があった」
チキナー特有の能力?
「能力って?」
ユアンもロトさんもチキナーだけど、特有の能力なんてなかったはずだ。いや、ユアンはあるけど。あれは、ユアン特有の能力だよな。
「彼女は、無限に飛ぶことが出来る黒色の羽。それを持って生まれてきたの」
確か、リュンに学術で習った気がする。
チキナーの羽の色は白。だけど、ごくまれに黒い羽を持って生まれてくる者がいる。その者は、無限に空を飛びまわることが出来る。人間離れしたチキナーだと。
「でも、だからこそ標的になった」
「だからこそ?」
「シュラ。あんた、ソディーを初めて見たとき、どう思った?」
どう思ったって言ったって。初めて見たのって、あのめちゃくちゃな教室の時だろ。
「えっと、眼鏡かけてて、おどおどしてるなって」
言っていいのかな。これ。
「やっぱり。そうなの。ソディーは、チキナーの中でも珍しい能力を持っているのに他の能力値が低いから、幼いころから周りに蔑まれて生きてきたらしいの。だから、あんなおどおどした性格になった。そして、それを見逃すBクラス生じゃなかったの」
「どういう意味だよ」
「みんな、上のクラスに上がりたくて足掻いてる。そのためには、他の生徒は邪魔でしかないの。特に、力のない生徒はね」
「それじゃあ、標的って」
キャメルが、頷く。
「ソディーは、他の生徒からいじめられるようになった」
どこまで腐ってんだ。そんなことが、許されてたまるか。
「そんなの、最低だ」
「そう。私もそう思ったの。私は、尽力が無限ていう能力があったし。元々必死なのは、Bクラスの中でも下の方の生徒たちだったから。でも、私がかばったから、いけなかったのよ」
「どういう意味だよ」
「尽力が無限って、言葉で聞くとそうでもなさそうに見えるけど。実際に目の前で傷が高速で塞がっていったら、誰でも気味が悪いって思うわ」
つまり、ソディーをかばったことで、キャメルが不死身だって思われるようになったのか。
「そして、徐々に標的はソディーから私に移っていったの。最初は、それでいいと思った。私は、不死身だし。傷もすぐ塞がる。ソディーが傷つけられることもない。でも」
キャメルは、一旦言葉を区切った。
「でも?」
「ある事件が起こったのよ」