表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生初期からイージーモード・少年期  作者: きと
キャメル&ソディー&ホセ編
60/132

第59話 「この感情は、俺が王子様だからではない」

 メビウス学園は、非常に広大な敷地を持っている。

 中庭付きの校舎3つ。グラウンド4つ。訓練場と魔法訓練場がそれぞれ3つ。道場、弓道場、剣道場がそれぞれ2つ。寮施設が男女2つずつ。そして、何故か使われていないのに残っている、旧校舎と旧道場。

 国内最大の学校という名前は伊達じゃない。


「旧道場って初めて行くな」


 通常授業では、旧と名のつく建物は使われない。なのに、何故その建物が残っているのかは、永遠の謎だ。


 旧校舎と旧道場は、学園の敷地の最北端に位置している。南側を占める校舎から行くだけでも大変だ。その上、人気も少ないため不気味な雰囲気を醸し出している。


「何で、わざわざここまで来なきゃいけないんだよ。あのじいさん。どういうつもりだ」


 俺は、てっきり旧道場には呼び出した張本人が待っていると思っていた。

 しかし、旧道場に近づいた俺の耳に飛び込んできたのは、もっと若い男性の声だった。


「おらよ! フィアム・チェンサー!」


「魔法?」


 聞いたことのない魔法名が聞こえてくる。


「俺にもやらせろよ。サンテック!」


 何やってんだ? 魔法の練習か?

 声からして複数のようだが。魔法の練習ならわざわざ旧道場に来なくても。


「じいさんではないよな。とりあえず、旧道場入ってみるか」


 俺は、旧道場のドアを引いた。


「まだ行けっだろ!」


 先ほどの男性の声が、鮮明に聞こえてくる。


 中にいたのは、4人の男性。10代っぽいから、この学校の生徒だろう。

 奥に向かって、魔法をぶっ放している。俺が入ってきたことには、誰1人気付いていない。


「なんだ? 奥に何かあんのか?」


 俺は、男性たちの後ろ姿を見ながら近づいた。


「な!」


「おら! チェール・フィアム!」


 男性の持っているチェーンが、奥に向かって伸びる。


「危ない! コールド!」


 俺は、チェーンの前に出て、チェーンを凍らせた。


「何だ、お前!」


 目の前の4人の注目が俺に向く。


 だけど、そんなことどうでもいい。俺の後ろの方が心配だ。


「おい! 大丈夫か、キャメル!」


 俺の後ろに傷だらけで倒れていたキャメルは、俺の声に反応して顔を上げた。


「おチビちゃん? 何で、ここに」


「良かった。無事だな」


「おい。どこのガキだか知らねーが、邪魔すんなよ。俺らの練習にならないだろ」


 練習だと? キャメルに魔法をぶつけることが?


「何で、キャメルに」


「知らねえのか。その女は不死身なんだよ。気味が悪いが、死なねえし、傷がすぐ治るっていうのは、良い練習台だ。分かったら、そこどけよ」


「おチビちゃん。あいつらの言うとおりだから。私は大丈夫だから、気にせず帰って」


 キャメルの傷は、どんどん塞がっていっている。


 確かに、キャメルは尽力が無限だと聞いた。そりゃ、傷もすぐ治るよな。だけど、それが傷つけて良いっていう理由にはならない。


「どかねえよ」


「あ? なんだよ、ガキ」


「どかねえって言ったんだよ! 俺の名前は、シュラ・イレーゼル。お前らの相手は、この俺だ!」


 俺は初めて、敵意を持った剣を人に向けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ