第57話 「見た目と違うのはお互い様だと思う」
俺は、メビウス学園に入って初めて授業をサボった。
「それで、どこに行くの?」
「え?」
「あんたが誘ったんだから、あんたがエスコートしてよ」
そこまで考えてなかったな。
「いや、別に話しがあるだけで。どっか行こうってわけでは」
「分かってるって。チビッ子なのに真面目だなあ」
キャメルは、さっきからずっと笑いっぱなしだ。あの冷たい目をしていたとは思えない。
「あのさ。チビとか小さいとか止めてくれない?」
「だって、名前知らないし」
あれ? 俺、自己紹介したよな。あのノックルさえも覚えてたんだぞ。
「シュラ・イレーゼル。よろしく」
「イレーゼル? ふーん。よろしくね。おチビちゃん」
なんなんだ? この学校は人を名前で呼ばないやつらばかりなのか?
「お前な」
「それで、話しってなんなの?」
俺の言葉遮るし。もういい。本題に入ろう。
「俺、お前たちと仲良くなりたいんだ。落ちこぼれとか言ってる学校側を見返したい」
「そんなことして、あんたに何の得が。ああ、そうか。王子様だからほおっておけない? それとも、落ちこぼれって言われてる私たちを改心させて、好感度得ようとしてるの?」
「何で、俺が王子様だって」
知ってたのか。こいつ。
「そりゃ、イレーゼルって言われたら分かるわよ。他のバカたちは気づいてなかったみたいだけど。ホセも知ってるんじゃないの? さすがに」
そりゃ、ホセは知ってるかもって思ってたけど。賢力高いらしいし。でも、この女が知ってるとは思わなかった。
でも、関係ない。王子様だからじゃない。
「違う。俺は、王子であることが嫌でこの学校に来たんだ。俺も、Dクラスなんだ。ちゃんと、仲間になりたい。何も知らないくせにバカにするやつらは許せない」
「あんた、純粋だね」
キャメルが俺の頭を撫でてくる。子供扱いしてきやがった。
「でも、だから無理だよ。あんたは私たちを掴めない」
掴めない?
キャメルの瞳は今まで見たことない色を宿していた。諦めと悲しさと冷酷さ。どれとも判別つかない。
俺は、のどまで来た言葉を声に出すことが出来なかった。
「あ、ソディー探しに行かなきゃ。じゃあね、小さい王子様」
キャメルは、いつもの笑顔で去って行った。