第56話 「三次元で言ったのは初めてだよ」
学校に入学して数日。
他のやつらとは仲良くなれる気配が一向にない。というか、クラスのやつらも、お互いあまり関わろうとはしていなかった。
「それで、今日はシュラ君だけか」
授業は、魔法、武術、剣術、学術に分かれ、週に1度鍛錬の日がある。しかし、全ての授業に全員が参加しているかというと、そうではない。
いや、ほんとは参加しなきゃいけないのに、サボってるというか。
ビケルは法力が皆無だから魔法の授業は出ないし。ホセは学術の授業にしか出ないし。女子2人は、適当にサボったりサボらなかったりだし。ノックルに至っては、どの授業も出ない。
「まあ、しょうがないな。授業を始めようか。シュラ君、使える魔法を使ってみようか」
目の前の魔法の先生も、もはや諦めているようだ。
「はい。ウォール」
とりあえず、散々リュンにやられた魔法を唱えてみた。右手の中に水の玉が浮かぶ。
「右手か。シュラ君の利き腕は右だね。利き腕でしか、魔法は使えないから気を付けてね。しかし、その年で安定した魔法が使えるとは。さすがはこの国の王子様。他のDクラス生とは違うね」
やっぱり、教師陣には俺が王子様だっていうのはばれてんのか。ただ、ここでキレてもしょうがない。
「ねえ、先生。何で、あいつらはDクラスに来ることになったの? 最初は、違うクラスだったんですよね?」
折角1対1だし。あいつらがいたら聞けないことを聞いてもいいじゃないか。これは、決して私語ではない。必要な会話だ。
「授業とは関係ないけど。まあ、時間もあるしいいか。俺も詳しく知ってるわけではないが、確かソディー君とキャメル君は元々Bクラスで、暴力沙汰を起こして、揃ってDクラスに落とされたとか」
「暴力沙汰?」
あの2人が? キャメルはともかく、ソディーはそんな感じに見えなかった。
「あれ? 小さいの1人?」
「キャメル?」
部屋に、キャメルが入ってきた。
珍しいな。ソディーといないなんて。
「なーんだ。じゃあ、いいや」
授業受けに来たわけじゃないのか。もしかして、ソディーを探しているのか?
だが、丁度いい。話題の1人が自分から来てくれたんだ。
「おい。ちょっと待てよ」
「なに? 私、急いでいるんだけど」
冷たい緑の瞳を、俺に向けてくる。
背筋が凍るのを感じた。ソディーといる時の目とは、全然違う。
「あんたは真面目に授業でも受けていれば? 私たちとは、違うんだから」
このままだと行ってしまう。この教師はあてにならないし。
「ま、待てよ。俺と、青空でも見に行かないか」
く、屈辱以外のなにものでもない。
「フッ。キャハハハハハハッ」
キャメルの笑い声は止まる気配を見せない。
俺だって、こんな言葉言いたくなかったよ! でも、これしか思い浮かばなかったんだ。なんていったって、女性経験ゼロだからな!
「見た目に反して面白いね。いいよ。少しだけ、あんたに付き合ってあげるわ」
成功か? でも、何で心の中は喪失感が占めているんだろう。