第55話 「ユアンはやっぱり話しやすい」
寮室は通常3人で1部屋らしいが、ロトさんの計らいで、ユアンと2人で1部屋を使わせてもらっている。
やっぱり、領主ってのは力持ってんのかねえ。父上が頼んだ可能性もあるけど。別に、3人で1部屋でも良かったけど。ユアンと2人っきりっていうのは、楽だし。
「なあ、ユアン。そういえば、お前剣力のみでAクラスになったって言ってたよな」
「ああ。そうだけど」
ユアンは、自分の机に向かいながら答える。
別に全ての能力値を上げなくても上のクラスには行けるってことか。
でも、それなら法力皆無のビケルとかもDクラスじゃなくていいはずだし。剣力なら、ノックルも高いって言ってたし。
「あ、何、お前。Dクラスのこと言ってんの?」
さすが。話しが早くて助かる。
「Dクラスにいるやつらは、元々Bクラス以上にいたやつらばかりなんだ。でも、問題やら何らかの事情でDクラスに落とされた。そして、Dクラスから上がれなくなったんだ」
「問題? 事情?」
確かに、突飛出た能力を持ったやつらばかりだし。あ、でも、ソディーの能力は全て低いって言ってたな。
「それが何なのか、俺には知らん。噂で聞いただけだし。シュラ。他人にかまうのもいいけどよ、自分の目的も忘れんなよ。強くなるために来たんだろ」
「う、そうだけど」
忘れてはいないけどさ。まだ、学校始まったばっかりだし。
「やっぱり、お前は王子様だよなあ」
ユアンは、笑いながら俺の方を向く。
こいつ、わざとだよな。
「どういうことだよ」
「自分だけでなく、同じ集団にいる仲間を大切にするっていうのは、国王に大切な資質だろ?」
「そんな資質、いらなかったんだけどな」
王子様に生まれただけでも、嫌なのに。あの転生させてくれたやつも、どうせなら魔法が何でも使えるとかさ。
てか、特が使えないからってのもDクラスの要因じゃんかよ。
「ま、そう言うなって。お前が王子様だからこそ、俺は本気になったんだ。ほら、明日も授業だろ。そろそろ、寝るぞ」
それって、ユアンが得してるだけじゃんかよ。
ユアンは、俺がベッドに入るのを待たずに部屋の電気を切った。